2011年 夏合宿 山行記

筆者 J・S (3年生)

 7月山行が終わってから一週間と経たずに、夏合宿当日を迎えた。前日から天気はあまり良くなく、始まる前から雨が降らないか不安になった。最高学年になってしまった以上、なんとしてもこの夏合宿を成功させなくてはならない。そう自分に言い聞かせ、集合場所の新宿に向かった。

7月29日 〈1日目〉

 前回は電車の遅延の影響で集合時間になっても全員集まらなかったが、今回はちゃんと全員時間に間に合った。そして特急券を買い、ホームで電車を待つ。いつの間にか夏合宿では特急を使うことになっていたようだ。この前行った野辺山よりも甲府の方が近いというのに。そして特急が8時に出発した。

 1時間半ほどで甲府に着き、そこから順調にバスを乗り継いで北沢峠に到着した。やはり天気はあまりよくない。今にも雨が降り出しそうだった。北沢峠から10分ほど歩いて北沢駒仙小屋に到着し、テントを張った。

 雨がぱらつく中、テントで時間を潰し、16時半に夕食のすき焼きの準備を始める。肉・舞茸・水菜・春雨をコッヘルに投入し、すき焼きのたれを入れて火にかける。この先しばらくこんなご馳走を食べられないと思うと、出来上がりに期待が膨らむ。

 そして17時過ぎ、夏合宿最初の夕食。米もおいしく炊けていて、すき焼きも若干味が濃かったものの、最高だった。きのこが苦手なYとAが少し気の毒だったが。

 翌日3時に起きるため、19時に就寝。就寝時間を過ぎてからも時折雨が降っていた。



7月30日 〈2日目〉


 朝の3時、外はどしゃ降りだった。とりあえず朝食の焼きそばを作る。出来上がりはなかなかよかったものの、焦げ付いてしまい、コッヘルの底が見えなくなってしまった。前半は駒仙小屋にテントを置いて、サブザックで行動するため、コッヘルに水を溜めておいて洗うのは後回しにする。

 出発の時刻を4時半としていたが、雨は一向にやむ気配が無いため、5時まで待機することになった。そして5時、チーフリーダーのAとM先生が話し合った結果、停滞することにした。

 停滞が決まり、特にやることも無かったため、もう一度寝ることにした。

 11時頃、先生に起こされ、昼食をとった。その後も雨は降ったり止んだりを繰り返した。そして4時半に夕食。当初はお麩のハーブブイヨン煮込みの予定だったが、ハーブブイヨンが手に入らなかったためお茶漬けになった。

 食後のミーティングで、次の日は3000メートル越えの仙丈ケ岳を登ることにした。明日こそは晴れてほしいと願いながら、19時に眠りについた。



7月31日 〈3日目〉


 朝起きると、雨は降っていなかった。しかし、前日から気分が悪いと言っていたYの体調は更に悪化していた。朝食のうどんもいつもの半分ほどしか食べていなかった。そこで柳沼を一人始発のバスで帰らせ、残りのメンバーで仙丈ケ岳を目指した。

 ほとんど雨は降っておらず、たまに小雨が降る程度であった。登りもサブザックということもあって順調に進んだ。そして馬ノ背ヒュッテを過ぎてしばらくした所で休憩をとると、一瞬雲が晴れて目的地の仙丈ケ岳が見えた。反対方向を見ると、見事な雲海が見えた。今回の夏合宿の最初の絶景に皆少し元気がでた。しかし気がつくと、肝心の仙丈ケ岳が雲に覆われていた。

 再び登りだして20分ほどで仙丈小屋に着き、昼食のサンドウィッチを食べ、晴れるのを待った。しばらく経っても辺り一面ガスがかかっていて、諦めて山頂を目指した。すると、突然の豪雨に襲われた。上は雨具を着ていたものの、皆雨具のズボンは履いていなかった。油断していたと反省する。すぐにズボンはびしょ濡れになり、今更雨具をとりだしても無駄だと思い、そのまま歩き続けた。

 山頂に着くと更に雨は勢いを増した。休憩、というよりは皆呆然と立ち尽くしていた。雨は止む様子もなく、写真を撮るのも無理だったため、すぐに歩き出した。少し下ると雨は小降りになった。

 小仙丈ケ岳では写真が撮れるだろうと期待したが、山頂に着くと再びどしゃ降り。結局山頂で写真を撮ることは出来なかった。

 その後は雨の中を駆け下り、北沢峠に到着したら、ちょうどA先生がバスに乗って到着した。これまでの経緯を説明しながら駒仙小屋まで行き、M先生は帰っていった。

 A先生と相談した結果、Yが置いていった団体装備と悪天候を考慮してコースを大幅に変更する。――翌日は栗沢山を経てアサヨ峰に行き、同じ道でキャンプ場に戻る。その次の日は晴れることを期待して甲斐駒ケ岳を目指す。

 夕食は炊き込みご飯で、炊飯係の実力が試されるメニューだった。I が炊いたご飯は前日に続きおいしく炊けていた。一年炊飯歴が長いはずのAは、ご飯を焦がしてしまった。責任をとって自分で食べていたが、その晩腹に激痛を感じたそうだ。

 そしてまた19時に就寝。メンバーが4人になってしまい、テントの中がかなり広く感じた。


筆者 D・A (3年生)
8月1日 〈4日目〉

 夏合宿が始まってから4日目となった。起床は3時。朝はスパゲッティだったが、今回は全てたらこ味だったので、7月山行の時のようなペペロンチーニによる問題は起きなかった。部員には。A先生にとっては今日が夏合宿最初の活動なので、景気づけのためにスパゲッティの量を豪華にしておいた。喜んでくれていたら幸いだ。

 撤収の必要がないため、食事等の準備を終えると、日のまだ昇らないうちに栗沢山を目指して出発した。今の代になってから初めてのヘッデン行動でかなり戸惑ったものの、本格的に迷う前に日が昇ってくれたので何とかなった。

 栗沢山ではガスによって周りはほとんど見えなかったが、時たまガスが晴れる際に見える景色はすばらしかった。しばらく休憩したのち、アサヨ峰に向かった。道中ライチョウに遭遇したり、岩場に苦戦したりと若干時間をくったが無事到着。アサヨ峰での景色は今回の夏合宿で一番きれいだった。

 行きと同じルートで無事下り終え、ベースキャンプへ。夕食はレトルトの牛丼。安定したクオリティを誇る米を炊くIとは正反対に、今回は米を焦がしてばかりだったが、この時ばかりは成功。おいしく頂きました。うまい牛丼を食い、明日最終日を夢見て就寝。これがワンゲル部員としての最後の夜だと思うと感慨深い気がしないでもなかった。



8月2日 〈5日目〉

 最終日。ここで当初2日目に登る予定だった甲斐駒ヶ岳に登る。

 前日と同じく3時起床、準備ができ次第出発のヘッデン行動だったが、何度も道をロスト。終いには日の出まではA先生が先頭を歩くことになった。仙水峠に到着すると目の前に雲海が広がった。仙水峠から見える雲海と日の光は絶景で、いくつかのパーティーがその景色を見ながら休憩していたため、仙水峠は混雑していた。

 写真を撮ると、今日の最初の関門である駒津峰へ向かった。ここを乗り越えても駒津峰から甲斐駒ヶ岳までの道のりはさらにきついだろうと考え、ペースを落として登って行った。結果、道中かなりの団体様と抜きつ抜かれつを繰り返しつつ、おおよそコースタイム通りで到着。駒津峰もやはり団体様で賑わっており、休憩し写真を撮ると、甲斐駒ヶ岳を目指した。

 若干険しい岩場、砂ばかりで登りづらい道に苦戦しながらも山頂に到着。だが全方向ガスで景色は皆無。雨が降っていないだけましと考え、ガスが晴れるのを待つも一向に晴れる気配がないため諦めて下山。下りは双児山経由でベースキャンプへ。撤収中に雨が降り、撤収後すぐにバス停へ急いだ。

 今の3年生も最初は7人いたが、最終的にこの夏合宿に来られたのは3人。入部した当初はまさか自分が主将になるとは思っていなかったが、皆のおかげ、特にSのおかげで今まで何とかやってこられた。感謝するばかりだ。1年生が1人もいない今、ワンゲル部の存続は2年生2人の肩にゆだねられている。すまん。2人にはこれからも頑張ってほしい。


《「稜線」第33号(2011年度)所載》


薮沢を登る 仙丈小屋にて・昼食準備

栗沢山・アサヨ峰間の岩場 アサヨ峰山頂

仙水峠で朝日を見る 仙水峠から駒津峰に登る

駒津峰への登りの途中から北岳を望む 駒津峰

駒津峰から甲斐駒ヶ岳に登る 甲斐駒ヶ岳山頂



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