2011年 冬季山行 山行記

筆者 Y・K (2年生)

 冬山というと、厳しく死と隣り合わせというイメージが付き物かもしれない。確かにもうこの時期になると穂高や富士山などは雪に閉ざされ一部の熟練者のみが極める世界になり、我々学生の行くようなところではなくなる。そのためワンゲルでは、冬は危険の伴うことの少ないいわゆる「低山」に登ることになる。そして数ある「低山」の中で白羽の矢を立てられたのが、大月市の北に仲良く並ぶ百蔵山と扇山である。

 今回はOBのYさんが同行して下さることになり、その上おすすめのコースまで提供して下さった。そのコースが景色良し、温泉有りのこの2つの山である。何でも昔のワンゲルには温泉巡りの特典が付いていたらしく、今回はその復刻版ということで猿橋駅へ赴くこととなった。

12月23日(金) 晴れ

 昨日冬至を迎えたばかりで5時を過ぎても暗闇に包まれた街を、私は一人駅へ向かった。北風は強いが身に凍みる寒さではない。今日の集合場所は新宿駅だが、私がようやく太陽を目にしたのは地元の路線から中央線に乗り換えて新宿へ向かっていた時である。みな定刻通り集合しており、新入部員のWが一番早く着いていたということが頼もしかった。

 高尾へと向かう特快の車窓から、丹沢、奥多摩はもちろん富士の高嶺がくっきりと見え、山頂からの景色に期待が膨らんだ。高尾からさらに乗り継いで西に進み、猿橋にて下車。すでに8時半である。

 一行はこれから登る両山を仰ぎながら桂川を渡り、中央高速をくぐり、登山道へと歩き始めた。駅から直接登れる山というのも案外多くないものだが、その僅かな距離ですらタクシーを使っている人がいたのには驚いた。一時間で本格的な登山道に到着、さらに一本で百蔵山山頂を踏んだ。富嶽十二景のはずなのだが、電車からは見えていた富士は雲に隠れてしまったようだった。何とも残念だが、丹沢や道志の山々が見渡せる気持ちの良い山頂であった。

 休憩の後、百蔵山を後にした一行は扇山を目指すわけだが、標高差100m程しかない扇山に行くには、一度200m下りて300m上がらなくてはならない。そして、この下りのほとんどが、百蔵山直下で済まされてしまうのだからたまらない。この百蔵山直下の急坂は、かなりのものだった。しかし緊張の下りが終わると、あとは単純に尾根を往くのみである。

 今日の道は大部分が尾根上であるからCLとしても楽であり、一本で大久保山へ続く急坂の手前まで出ることができた。そして休憩を挟み登り始める。確かに急ではあったがやはり300mの登りというと坦々と登っていれば終わってしまうものであり、荷物の軽いこともあり喘ぐことなく大久保山に到着。扇山は近い。そのため、休憩および昼食は扇山までお預けに。といっても10分もかからなかったが。

 扇山の山頂は百蔵山と同様広かったが、木々に覆われず開けていて、芝生の広がっている明るく楽しい山頂であった。そのため景色は百蔵山で見えていたものに加え、東の相模湖や八王子方面、また北の権現山等と好展望である。

 時間的にも場所的にも昼食にはもってこいだったので、コッヘルを取り出し水を沸かす。1つ蒸し時間10分の肉まん達12個をどう手なずけるか不安であったが、火力最大+パワーチャージャーで煮えたぎったお湯の上に肉まんを並べれば、蒸し時間なぞ懸念材料にはならなかった。これで3回目のコッヘルまんとなったが、3度目にしてようやく要領を掴めてきたようである。火力あるのみ。

 風吹く山頂で食べる熱々の肉まんと沸かした水で淹れたマキアートに体力を回復し、下山に入る。扇山からの下りは「君恋温泉はこちら」という巨大な看板に従っていけば何も考えることなく君恋温泉に出ることができる。君恋温泉は箱庭サイズの浴槽だが、サービスで田楽とじゃがいもの煮つけが出てくる大変感じの良い温泉である。温泉を出てふと南西をみると、微かに富士のスカイラインが夕焼けに浮かんでいた。

 今回は先生ではなくOBと一緒に登山をさせていただきましたが、経験豊富なアドバイスは大変参考になり、この場を借りてお礼をさせていただきます。この度は本当にお世話になりました。ありがとうございます。


《「稜線」第34号(2012年度)所載》

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