2009年 春合宿 山行記

筆者 Y・H (1年生)

 年が明けてから初めての山行となる春合宿。ワンゲル部員の、今回の春合宿に対してのモチベーションは、あまり高いとは言えなかった。
 今年初めての山行ということは、三ヶ月以上も山に登っていないわけで、それなのに2泊3日である。憂鬱な気分にもなってしまうが、負けてはいけない。バッチリと覚悟を決めて、丹沢へ臨む!

4月1日 〈1日目〉

 午前6時20分に新宿駅に集合し、予定よりも1つ早い電車に乗り、順調にキャンプ場へと到着した。
 そしていよいよ檜洞丸へと登りはじめる。サブザック行動とはいえ、歩行時間は初日から6時間を超える。体力面での不安を抱えながらのぼっていると、休憩中、2人の外国人の登山客と出会った。少し離れた所から見ていると、私達に話しかけていたようだった。もちろん英語で。しかしそこはM先輩が対応してくれて、その場を切り抜けることができた。最近は山へ登るときでさえ英語の能力は必要なのだろうか。自分の英語の成績を思い返してみて、ちょっぴりやるせなくなった。

 山頂に近づいて来ると、雪が降り始め、かなり寒くなってくる。下界での雪ならともかく、山での雪は迷惑以外の何物でもない。私の手はお菓子の袋を開けられないほどかじかんでいた。さらに悪いことに、檜洞丸の山頂から下る途中で、1時間くらい迷ってしまった。雪が雨にかわったころ、ようやくもとの道へと戻ることができ、17時半過ぎに無事キャンプ場にたどりついた。迷った時のことを考えると、戻れてよかったと心から思う。

 夕食の準備中、油と洗剤を忘れたことに気づいた。最近私は忘れ物が多いので、気を引き締めなければならない。油を使わずに作ったカレーだが、まずくはなかったと思う。
 雨が降っていることもあり、就寝前にキャンプ場を経営している人の親切で、屋根のあるスペースへテントを移動した。おかげでザックをテントの外に出しても濡れる心配はなく、少しは広くなったテントで眠ることができた。



4月2日 〈2日目〉

 午前4時30分起床。山行中にしては少し遅めの起床時間だが、まだ疲れは残っていた。すぐに朝食のラーメン作りに取り掛かる。ものすごくひどい出来だったが、苦戦の末、なんとか全員完食に至った。食料係として重要な反省事項だ。嘔吐衝動を必死でおさえつつ撤収をすませ、次なる目的地へと出発する。

 今日からメインザック行動なのだが、昨日よりも緩い傾斜の登りが多く、思っていたよりも疲れなかった。順調に進み、2本目で畦ヶ丸の山頂に到達した。ここで昼食のホットドッグを食べることにしたのだが、今度はケチャップを忘れたことに気づいた。……本当に私は忘れ物が多い。これから学院の2年生になるのだから、しっかりしなければ。

 城ヶ尾峠から下っているとき、ふと他の登山客と遭遇することがほとんどないことに気づいた。平日だからだろうか。夏合宿では何十人もの人たちと、山を登りながら挨拶を交わしたのを覚えている。ぜぇぜぇと息をきらせた状態で「どうも」とか「こんにちは」とか声を出すことは少し大変で、体力が限界に近いときは特にそうである。挨拶を交わす、という行為はとてもいいものだが、私はあまり人と出会わない方が、なんとなく山に来たという実感を得られるし、疲れないので好きである。

 考えていたよりも早く道志の森キャンプ場へ到着した。キャンプ場にはきれいな小川が流れており、食事の時間までそこで時間をつぶしていた。
 夕食の焼きそばは大きな失敗をすることなく、食事係である私が作り方を知らなかったにしては、うまくできたと思う。

 そして、就寝時、寝床の狭さにびっくりしてしまった。1つのジャンボエスパースに7人の部員と7つのザックを詰め込んでいるのだから当然かもしれないが。M先輩が寝床取りに必死になっていたのを思い出し、自分もがんばっておくべきだったと悔しい思いをしながら、なんとか寝付くことができた。



4月3日 〈3日目〉

 午前3時半起床。朝食は恒例のスパゲッティだ。昨日のラーメンとは違い、極端にまずくなることはないので、作る方も食べる方も楽である。やはり朝はスパゲッティときつねうどんで固定すべきかもしれない。変に冒険をして、昨日のような悲劇を繰り返すことは避けたい。

 撤収を始めるのが少し遅れてしまったが、時間通りに出発できた。菰釣山へとつづく道は、急な登りと下りが交互にあり、さらに早く帰りたい気持ちもあってか、急ピッチで進んでいったので、かなりこたえた。A先生の「ペースが速すぎる」との注意がなければ、私はギブアップしていただろう。

 しかし、この日は天気に恵まれていて、菰釣山の山頂からはきれいな富士山を見ることができた。視界を遮るものはほとんどなく、絶景といっても差し支えないだろう。今回の春合宿で一番の収穫だと思う。

 菰釣山からしばらく歩き、下界の町が見下ろせる場所で昼食。サンドウィッチ用のパンにジャムをつけるだけのシンプルなものだ。私はジャムをつけすぎてしまい、みんなからの反感を買ってしまう。反省事項がどんどん増えていく。同じ1年生のKとTはどうなのだろうか。あまりヘマをしたり怒られる姿を見ていない気がするのだが……。

 その後も順調なペースでくだり、ようやく平野のバス停へ到着する。次のバスが来るまで30分弱というちょうどいい時間帯に着くことができた。その間に解散式をすませ、近くのコンビニでコーラや肉まんを買い、食べる。このときが高校生活で一番幸せを実感できる瞬間である。この表現が大袈裟でないことは、ワンゲル部に入れば必ずわかるだろう。

 次の山行からは新1年生が入ってくるが、今回のように失敗の連続では絶対にまずい。心機一転して気合を入れ直そうと決心した。


《「稜線」第31号(2009年度)所載》


檜洞丸山頂にて 畦ヶ丸山頂にて

菰釣山山頂から富士 菰釣山山頂から御正体山

菰釣山山頂にて 富士と山中湖


▲2008年度の山行一覧に戻る▲

▲以前の山行・目次に戻る▲

■ワンゲル・トップページに戻る■