2007年 秋季第1回山行 山行記

筆者 Y・M (2年生)

 今回は割と初歩的な山である、奥多摩の蕎麦粒山を訪れた。学院祭の次の週に実施されたため、ばたばたしている時期に行われた山行だった。また3年生が引退し新体制で行われる最初の山行だった。今後のためにもスタートダッシュは成功させたかった。



10月13日
〈1日目〉

 学校での授業を終えて、皆時間通りに到着し電車で奥多摩へ向かった。奥多摩の川井駅にはスムーズに行くことができた。電車に乗っている途中、(もう一年半近くワンダーフォーゲル部にいるが、)大きなザックに注がれている他人の視線がどうしても気になってしかたがなかった。奥多摩の山は昨年度いくつも訪れたため、周りの景色は余り楽しめなかった。その後はバスに乗り換え奥茶屋キャンプ場へと向かった。が、受付には閉じたシャッターと張り紙が。休業……だった。幸いにも手前にもうひとつキャンプ場があり、そこに泊まることになった。そこも経営者が翌日用事があるらしく、休業するつもりであるところを無理を言って泊めてもらった。感謝、感謝。

 テントの設営も円滑に行い、夕食である豚汁の準備に取り掛かった。現食料係のMは元食料係で去年の秋1山行で失敗してしまった私とは違い、ダシを自主的に準備しており非常に用意周到であった。実際、学院祭で出された缶を開けて温めただけの豚汁より段違いに美味しかったと思う。大学生の御一行か何かの大騒ぎを聞きながらの就寝。今回の寝床は奪い取るのではなく分け合うものであった。私はいつもテントではなかなか寝付けないが、今回はあっさりと眠れた。この山行での個人的な収穫。それにしても授業中の睡魔は不可抗力であるのに、テントの中では襲われない。授業には催眠作用があるに違いない。



10月14日
〈2日目〉

 目覚めると目の前に自宅の天井……ではなくテントの天井。この時特に「あ〜山行に来たんだ、気合を入れなければ」と実感する。たらこスパゲティを軽く平らげ、撤収に取り掛かった。一年生もしっかり動いていて、一年生山行を経験して更に成長したことが分かった。

 1本目は暗い中ほとんど林道を歩いた。適度な寒さとコンクリを歩いた時の適度な痛みが、寝ぼけていた頭をすっきりさせた。今回私は風邪を引いていて前々日まで参加するか悩んでいたため、少し不安だった。林道から山道に入る際に通行止めの文字が目に入った。キャンプ場の方が話してくれた台風による被害の話を聞いていたのもあって、登山道が荒れていることは容易に想像できた。実際に無惨にも折られている橋が次々と見えて来て、私達の行く手に立ちはだかった。今回CLであるSは上手く回り道を見つけ後ろの皆を導いてくれた。正直自分がCLになった時、そうできる自信はない。しかし山では臨機応変に行動しなければならないことはたくさんある。これから社会に出ていくうえでも臨機応変に行動しなければならないことはたくさんある。これから自分が身につける必要のある能力だ。

 2本目は後半、踊平のすぐ手前は傾斜がかなりきつくしんどかった。3本目は割と平坦な道と傾斜のきつい道が交互に続いていたが、パーティはスピードを一定に保ち歩けていた。次の休憩では皆余り喋らず、他に人がいなかったため静寂が流れた。皆の顔を見回してみるが疲れている様子はなく、それぞれ思考を巡らせているような感じだった。会話に花が咲く休憩もいいが、静寂の中で思考を巡らす休憩も趣深いと思う。木々が微かに揺れる音は聞いていて心地が良かった。普段喧騒の中で過ごしている私達は、木々の揺れる音に耳を澄ますことはあまりない。これも山の楽しみの一つである。

 次の1本はこれまでにない超急登……は見えず、およそ5分であっけなく山頂についてしまった。展望は皆無だったが、昼食はサンドウィッチ(ツナ、ハム、チーズ)、紅茶、果物といつになく豪華であった。食事中は“ごま”が食べ物や食器に付き纏って鬱陶しかった(ちなみに“ごま”とは決して黒いゴマ程の大きさの“虫”ではありません)。

 次の1本、仙元峠を通過し一杯水避難小屋までの道は緩やかな下りでスンナリと行く事ができた。続く横スズ尾根も緩やかな道でとても歩きやすかった。緩やかな道だと無意識の内に気が抜け、頭で考え事をしていて、集中できなくなる癖が私にはあることに気づき、直す必要があると感じる。その後は気づいたら日原の集落が見え、気づいたら、登山道から抜けていた。

 バスに乗り、気持ちよく揺られていつの間にか寝ていた。目を覚ました時には、見慣れた奥多摩駅の前にいた。
 
 新体制になってから初めての山行であったが、なかなか良い出来だったと思う。ただ、小さなミス(ここに書かれていないことも含め)もあったため、更なる向上に努めなければならない。何せ次回は中間テスト期間真っ最中に実施される、個人的に特に思い入れの強い宿敵、雲取山を予定しているからだ。


《「稜線」第30号(2008年度)所載》


仙元峠にて



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