2006年度 個人山行・川苔山 山行記

筆者 K・K (1年生)

2007年1月14日

 今年最初の山行は、1年生3人組で行く奥多摩川苔山だ。英語と数学の冬休み明けテストでなかなかの手ごたえがあった私はとても機嫌がよかった。メールで「登りの途中にある百尋ノ滝は一見の価値あり」とY先輩が教えてくれた。楽しみである。

 奥多摩まで12月の御前山のときと同じ電車に揺られ、8時半のバスに乗り込む。今回はちゃんと乗車するときにバスカードが機械を通った。前回は通らなかったのだ。バス内は異常な混みようだった。みんな川苔だったらいやだなあと思っていると、途中のなんとかというバス停で今まで乗っていた80パーセントの人が降りたのでびっくりして、安心した。あれは、鍾乳洞探検のツアーだったのかと思う。安心していたら、次のバス停が川乗橋だった。「川苔橋」ではないのである。

 下車し、登山口に入る。そこで歩く体勢を整えようと思ったのだが、一緒に降りたおじさんたちがそのまま進んで行くのでとりあえず進むことにした。林道歩きである。しばらくして、そろそろちゃんとした方がいいと思ったので、格好を整える。そこでSが水を入れ忘れてきたことに気づいて、とりあえず登山口に水があるのではないかと考え走って行った。その間Mに「沢登りってやってみたいなあ」と言うと、Mは「怖そうだからそんなにやりたくないなあ」と言った。なぜ沢登りの話になったかというと、そこに川があったからである。気持ちのよい川の流れの音と雰囲気に癒された。そこにSが帰ってきた。ポリタンを持つ様子で水を汲めなかったことがわかった。まあ山頂近くにも水場があるらしいし、二つ満タンの水があればなんとかなるだろうと思い、出発した。

 ジャンケンで私が最初のCLになった。結構キツイ林道である。しりとりで単調な林道の退屈さを軽減する。Mは私を「り」で攻めてきた。私は毎回「り」で答えなければならない。理科総合、りす、倫理、りんご、利尻島……。意外と「り」で始まる単語は簡単に思いついた。途中つららがきれいな場所があったので写真を撮る。そのあとは、めんどくさくなりしりとりは中止になった。それにしても結構キツイのである。橋を渡ると、川苔山頂に続く道が現れた。

 やっとここから山道である。川の音が涼しげでとても気持ちよかった。百尋ノ滝まではずっと川沿いの道である。マイナスイオンである。怖くはないけどちょっとわくわくするような木の橋を何本も渡った。この道はめちゃめちゃ楽しくて気持ちよかった。川っていいなあと思った。そして、10時。あまり高さは稼がなかったが、1本目終了である。
 休憩中は地図を確認する。山登りの基本である。しかしちょっとよく現在地がわからなかった。爽快な空気の中、行動食を口にする。行動食は山登りの楽しみの一つだ。今回はゼリー飲料、ブロックの栄養食品、コンデンスミルクに加えて煮干を持ってきた。前回の御前山では1本目が楽だったので行動食を十分に摂らなかったのが原因で2本目に死にそうになったので、今回は意識して多めに摂るようにした。

 2本目である。前回の御前山のときに思ったのだが、CLというか先頭で歩いていると道を探すのに集中するためなのか全然疲れないのだ。それ以外は結構辛い。で、2本目は三番手である。この気持ちのよい道だったら疲れないなと思いながら歩く。気持ちよく進んでいく。ずっとこの調子だと錯覚していると、突然普通の登り坂が現れた。川沿いの道ともお別れである。そして、三番手だったのでやはり普通の登り坂はちょっと疲れる。どんどん高度を稼いでいく。しばらく登ると、結構大きい滝が見えた。それほど迫力ないなあと思っていると、SとMが道じゃない方に進んでいくのでどうしたのかと思ったら、滝つぼまで行けるようだった。階段を下りてうまく川を横切る。そのときであった。誤ってくつが水の中に入ってしまったのだ。瞬間的な意識として、「あ、入っちったー」と思いながら足を上げると、一瞬にして靴が水を弾いたのだ! さすが山の靴である。写真を何枚か撮りルートに戻る。ちなみにこのとき撮った写真は全て暗くボケてしまっていた。坂道を歩く。やっぱり川から離れると息切れ度が違う。結構はあはあ言いながらついていった。すると急に道が雪で覆われていた。ちょっと滑りそうだったので軽アイゼンをつけることにした。ついでに、あと5分ほどで50分経つところだったので休憩にした。

 軽アイゼン装着に手間取る。結局両足につけるのに7、8分かかってしまった。あわてて行動食と水を摂取する。あと1本で行けるかなと話をした。あっという間に出発である。妙にSの軽アイゼンだけサクッサクッと音がする。そこからは雪道だった。視覚的にとても気分がよい。途中変なとげとげの木みたいなのが倒れている変な場所を通過してしまったが、それ以外はだんだんバテながらも順調に進んだ。そして、結構バテているところになかなか急な坂が現れた。「これ登るのかあ〜」と思いながらMについていく。予想以上にきつかった。大変疲れた。結構長かった。坂が終わった。「あれが頂上だ〜!」と思いながら登っていたのだが、そこは頂上ではなかった。ちょっと向こうに山のようなものが見えた。あれが頂上である。「ひえ〜。」しかもいったん下り始めた。また登らなくてはならないではないか。「ひえ〜。」Mについていけない。そして、最後の坂が現れた。これを登りきれば川苔山山頂に到達である。腹が減っているのと、疲れているのでなかなか動かない体を必死で持ち上げ突き進んでいく。そして! ついに、到着!

 とりあえず空いているベンチを探し、座る。私は頂上から見える景色を撮り、Mに写真を撮ってもらった。よく見ると山頂の標識は「川乗山」だった。そういえば、途中の標識も「川乗山」だった。しかし地図は「川苔山」である。私は「川乗山」の方がイメージ的に好きだなあと思った。

 お湯を沸かし始める。Sは水がないので、私とMの水をコッヘルに流し込む。ちなみに、私の水はアルカリイオン水である。フタをして、点火する。私の昼食はカップヌードルのビッグサイズの確かシーフードであった。お湯が沸騰するのを待つ。寒かったので服を着込んだ。意外とすぐ沸いた。私たちの右斜め前に、リンゴの皮を剥いている人がいた。とてもうらやましかった。絶対今度の山行ではリンゴを持って来ようと思った。寒い中熱いカップラーメンを食べるのは、よかった。

 みんな食べ終わり、片付ける。Mがコッヘルの袋をなくしたと言って騒いでいたが、「下りてから買うしかないな」とあきらめた頃に彼のザックの天蓋から出てきた。そして、隣にいた外国人の格好いいお兄さんに記念写真を撮ってもらった。身支度を整える。下山開始である。

 一巡したのでまた私が先頭だ。しばらく雪が滑りそうな道が続いて怖かった。その坂道を過ぎると、地図によると水場があるようなので探してみる。小屋のようなものが二つほどあったが、そのどちらともただの壊れた小屋で水はなかった。そのあたりでMが小便をした。再び出発である。少し進むと水場の標識があった。「水行く?」と聞くと「行こう」ということになったので行ってみる。急な坂だった。そして、水が流れていた。これを汲めということかなと思い汲んでみると、こなごなのゴミが浮かんでいた。Sがもっと上流に行きたがったのでついていってみる。結構進んでも水場らしい水場はなかった。結局あきらめて戻ることにした。私は一応ここで汲んでいった。そこでスパッツをつけた。

 また再出発である。ここから50分歩こうとMに言われ、受諾した。急な坂道を戻り、歩き始めた。途中急な坂があり、早くこの急坂を登っちゃいたいと思った私はがむしゃらに進んだ。するとMからダメ出しが出た。そういえば今は三人で歩いているのだった。私は、反省した。アップダウンを繰り返し、結構怖いごつごつした道を歩き続ける。途中ひとりのおじさんを抜かした。そして、大ダワと思われる場所に到達した。道がいくつかに分かれているから大ダワであった。そこからの道は非常に平らで超歩きやすかった。軟毛の直毛のような細く長い木々の横を通り過ぎ、ちょうど50分経ったので休憩にした。あのこなごなの水を飲む。雪がもう無いので軽アイゼンを外した。Sの軽アイゼンは靴の横の方にずれてしまっていた。行動食を摂り、出発。

 歩きやすい道をどんどん進む。途中からまた山道っぽくなった。そして、大根ノ山ノ神に到着した。3人で「ダイコンの山の神だって! 笑笑」と言って笑っていたのだが、本当は「オオネの山の神」であった。そこらへんで私はもう気が緩んでしまっていた。大根ノ山ノ神から鳩ノ巣駅までの道では集中力があまりなかった。次からは最後までちゃんと集中しようと思う。そして、無事鳩ノ巣に到着した!

 電車が来るまでしばらくトイレの前のベンチで休憩した。リンゴジュースを飲んだ。
 電車に乗り込み、iPODのイヤホンを耳に入れる。私は山から下りてきて疲れているときに電車の中で音楽を聴くのが好きだ。体にしみ渡るようだからだ。終点青梅に到着し、立川行きに乗り換える。SとMが熟睡していたので叩き起こした。
 後はそれぞれ家に帰るだけである。今回の山行は楽しかったなあと思った。


《「稜線」第29号(2007年度)所載》

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