1997年 夏 合 宿 の 感 想

筆者 T・N (1年生)

 1年生の僕にとって、文字通り今回の夏合宿ははじめてのことだったので、期待と不安が入り混じったことであった。終わった今となっては、思い出すだけでもつらく、厳しかったことである。髪の毛や体がずっと洗えなくて我慢したり、合宿2日目ぐらいから足のかかと辺りにマメができて、歩くたびに痛かったこと等々、いろいろあった。

 しかし、それとは逆に、自分の成長をじかに感じることもできた。前と較べて、パッキングをうまくできるようになっていたし、今まで必ずといっていいはど下りの時に足が痙攣していたのに、今回は一度もならなくてうれしかったこと等もあった。それに、忘れられなかったことは、北岳山荘から北岳、間ノ岳がくっきりと見渡せたことや、日の出の時の富士山のきれいな風景等もある。それまでずっと曇りの悪天候で、北岳の山頂からも何も見渡せなかったからこそ、あの風景は僕にとってうれしく、特別なものであった。

 今回の夏合宿を通じて得られたことはいっぱいあったと思うが、一番大きなことは自信であると僕は思う。日本で2番目に高い山を登ったぞという自信を、今後の山行に役立たせればこの上ないものであると思う。


筆者 S・N (1年生)

 僕は今年ワンゲル部に入って、ほとんど初めてと言っていいぐらいの本格的な登山というものを経験した。それから3ヶ月経ち、山行も3回ほど行き、ようやく慣れてきた感じもしてきたところで臨んだ今回の夏合宿であった。しかし登山にはそれなりに数々のつらさが伴っている。夜はなかなか眠れないし、山の上ではテレビも新聞もなく、地上の文明とは隔離されたような世界であり、2日もいると早く下山したく思えてきた。また、4日日のような7時間もの歩行をしているとさすがに疲れてきて、「もううんざり」という気分にもなった。

 けれども一方で、そんな思いを吹き飛ばすような、3192mの北岳山頂へ登り着いたときのあの気分は最高だった。山頂で疲れとともに味わえる、「山の頂点に登り詰めた」という到達感は、あのきつい登りを経て初めて味わえるものなのだろう。ただ一つ残念だったのは、ガスがでてきてしまい周囲360度真っ白で眺望がなかったことだった。しかし、その日の夕方にガスが晴れて周囲の山々を見渡すことができたが、そのときに初めて見る一面に広がる雲の上からのすばらしい眺めにとても感動した。翌日もとても天候に恵まれ、間ノ岳・西農鳥岳から見る南アルプス3000m級の山々や富士山などはすばらしい眺めであった。F先生の言葉ではあるが、「いまでも目に焼き付いている」ようである。忘れられない記念すべき景色だったと思う。

 今回の夏合宿では、特にバテてしまうことも、足が動かなくなることもなくすんだ。いままでの自分より力が付いたように実感した。今後もいくつもの山に登ると思うけれど、この先への自信へもつながったと思うし、なにより「ワンゲルに入って良かったかな」と感じた。

 最後に一言、よく友人に「何で山なんかに登るんだよ?」と聞かれることが多い。いままでは自分でも疑問だったが(かといっていまは分かり切っているわけではないけれど)、今回の夏合宿でも感じたような、頂上に登り着いた瞬間の達成感や感動が味わえることが登山の魅力の一つなのだと確信した。


《「稜線」第19号(1997年度)所載》

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