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「君子は人の美を成(な)す。」

孔子のことばである。君子は、人の欠点を取り立てるようなことはしないで、その長所を取り上げて、それを伸ばしてやろうと心がけるものだという教えである。この孔子の名言に関する大切なことを述べたい。

1.どの子供にもある長所の発見

学級における個々の子供を見ると、ものわかりの早い子、遅い子、仕事をてきぱきと早く処理する子のんびりかまえて、ゆっくり時間をかけて作業する子、性格がおとなしく素直な子、感情の起伏が大きく指導のむずかしい子など、さまざまである。

このことを、一人の子供について考えてみても、その子供のもつ多様な能力の中には、優れた能力もあれば」、劣っている能力もある。
いわゆる
「できる子供」と言われているような子供の中には、自分を「すぐれた子供」あるというように考え、優越的な感情に支配されて、自分の中にある悪い点に気づかないでいる場合が多い。
また、いわゆる
「できない子供」と思われている子供の中には、自分を「できない子」と思い込み、いつのまにか劣等意識に支配されて、自分の中にある良い点・長所について気づかないでいる場合も多い。

したがって、指導する場合は、そのような、子供の気づいていない良い点や悪い点を明らかにして、個々の子供が、自分の良い点や悪い点を自覚できるようにしてやるように心がけなければならない。
その結果、個々の子供が、それぞれ主体的に、自分の中に見つけた良い点を大切にして、それを伸ばすように努力したり、自分の中に見つけた悪い点を直そうと努めるようになることは、個々の子供が自己教育力を向上させようとしていると言える。


世阿弥元清の言葉として知られている、
「上手にも悪しきところあり、下手にもよきところ必ずあるなり、それを人知らず、主も知らず・・・」の深い意味を、改めて考えさせられる。しかし現実は、大人の世界も、子供の世界も、お互いの長所を取り上げ話題にすることが一般に少ない。むしろ、特に子供の世界ではその短所を取り上げて、それをきびしく追究するといった傾向が多い。そのようなときの学級社会の雰囲気は、つめたく、とげとげしいものが感じられて、お互いの考えを認め合い、切磋琢磨して学習する姿にはほど遠いものである
                       

2.愛情をもって見守り続けないと、その子を、真に知ることができない。
このことを具体的に進めるためにはたとえば、その子供が、あることに成功して喜んでいるときの姿を見たり、また、テストに失敗して、うちひしがれている姿などを、その子供と一体になりながら、愛情をもって、見守り、励ましながらみることである。

3.一人の人間のもつ多様な能力
知的な能力は、人間のもつ能力の中で大切なものであるが、それは人間の持つ能力のすべてではない。人はみな、その生活をより豊かに、より人間的なものにするために、また、一人ひとりもつさまざまな能力をより高めるために、努力を続けているものといえる。

能力の中には、健康で安全な生活を営むために必要な能力、技能といわれるよぅな能力、創造的な表現の能力、集団生活における思いやりの態度など、社会生活をしていくうえで必要な社会的能力などがあるが、これらはそのすべてが、人間の生活にとって必要であり大切な能力である。

特に人間尊重の精神を中核とする民主主義の実現を考えるとき
「社会的能力」を高めることが重要である。
民主主義社会における能力の考え方は
すべての人を知的能力者たらしめることではなく、それぞれの人のもつ特性、能力を背景とした卓越した人たらしめることである」このことを決して忘れてはならない。