中国出身のU


中国出身のUは自分の身体の事を言われて切れた。
肩甲骨が発達仕切っていないことを、
「骨がない。」
と言われ,それを自分に対する侮辱ととった。
中学生の彼にとっては無理もないことだが、相手の
日本人にそんな気はみじんもなかった。単に同世代
の若者としてなにも考えずに感想を言ったに過ぎな
かった。水泳の時間中のことだった。
「先生」
と呼ばれて振り返るとUはMにつかみかかっていた。
飛んで言って
「待てっ」
と声をかける。間に割って入った。
止めた私をUは怒りをあらわににらみつけるのだった。
おいおい、と思いながら、私は、自分の神経回路の
回転数が上がらないように、呼吸を整えた。
「U、どうしたのかね?」
「こいつが、おれの悪口を言った。骨がないといった。」
「本当か?M?」
「悪口をいった覚えはありません。ただ、そう見え
たのでつい、口に出ただけです。」
水泳の時間中の、運動時によく見られるたかぶり、
アドレナリンの働きのように私にはみえた。
「おいおい、U、こいつ悪口を言った訳じゃないぞ、
ただおまえに話しかけただけだぞ。」
なおもUは私を怒りをもってにらみつける。
「ただ、なにも考えずに口に出しただけだぞ」
不満そうにUはなをも私をにらみつける。
「じゃ、本当に悪いやつってどんなやつだね。」
「だまって近づいて来て,ものをとるやつ。」
なんだわかってるじゃないか。
「じゃ,Mがおまえのものを盗ったのかね。
盗っちゃいないだろ、そんなにプンプンしてちゃ
友人になれないぞ。もし、相手と友達になるとして、
相手の趣味とか考えとか全くわからないなら、
水泳の時間だ、からだのこと言うしかないじゃ
ないか。もっと心を広くもて」
まあ、といっても中一じゃわからんだろなあ、
と思いながら、
「わかったんなら、水泳の方にもどれ。」
といいつけると、素直に戻って行った。
Uといえば、中国東北部出身なんだろうか?
遠い昔、海を渡ってきた、プライドの高い
人々のことを一瞬、私は思っていた。