■企業環境

 文明のシンボルとして、人間の力と希望を造形に託し、建造物へのダイナミックな表現の試みは、人類の偉大な遺産として今日我々は、その遺跡の中に数多く見ることができる。そして、これらの公共彫刻の歴史は古く、それぞれの時代を背景にして様々な変遷を遂げてきている。

 有史以来、第二次世界大戦に至る間に世界の各地に設置されてきた公共彫刻の多くが、神話にかかわる一種の信仰の対象や建築の装飾であったり、あるいは銅像にみられる様ないわば権威の象徴、ないしは社会的、政治的に意図された存在であったりしたものと比べれば、今日の彫刻は明らかにその性格を異にしている。今日の彫刻に求められている大きな特質は、高い芸術性と共に何よりも「豊かな市民性」にあるが、芸術作品が持つ創造性と市民生活が持っている日常性とは本来相容れない概念である。この二つの概念を公共的な空間の中で具体的に両立させ、融合させながら「街づくり」や市民の「コミュニティづくり」に寄与し、一方では彫刻家に望ましい制作の場を提供する今日の公共彫刻の設置には、それ故に専門的な様々な配慮が必要となる。

 彫刻のある「街づくり」という言葉が、単に彫刻を街の空き地に置いて行けばよいということであれば、その多くは大きな過ちの基となり、いずれは「芸術公害」といわれる様な存在にもなりかねない。このように、一般に「彫刻」といってもその意図や環境によって性格を異にするが為に高い水準の技術と文化的、芸術的要素が重要視されるのである。一人でも多くの人々に人間らしい潤いや歓びを提供する事が、日本造形に与えられた使命感であることを痛感する。

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