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「じ、自分で擦ってください…!」

だって聖書の教えにもあるだろ、カエサルのものはカエサルに…。
だからカカシ先生のモノはカカシ先生に。うん、俺は間違っていない…!

自分の中で歪曲された聖書の解釈に微塵の疑いを抱かずに、イルカは堂々と言い切った。恥ずかしいという思いは自分の間近に迫る危機に麻痺していた。兎に角この場を無事切り抜ける。その思いしかなかった。

カカシ先生の縋るような濡れた瞳に、うっかり「なんとかしなくちゃ…!」なんて思っちゃったけど…
自分で処理すればいいんだよな!大抵の男はそうする筈だ…!

イルカは導き出した答えに満足の笑みを浮かべながら、
「これ…必要だったらどうぞ、」
素早く居間まで行って、取ってきたティッシュの箱をカカシの側に置く。ちょっとした親切というやつだ。風呂場にいるのだから必要ないかとも思ったのだが、意外に自分の精液が体にかかると、吐精後虚しくも惨めになるものだ。変に冷静になるというのだろうか。

それにこのティッシュはカシミヤ入りだし…これならカカシ先生の腫れた先端にも優しい筈だ…!

普通のティッシュと何処が違うのだろうと、好奇心で買ったカシミヤ入りのティッシュが漸くその真価を発揮する時が来たのだ。

ふー、これで一安心だ…

やれやれとイルカが安堵の溜息と共に額の汗を拭うと、
「イ、イルカせんせ…っ、あ、あの…っ」
カカシはブルブルと震えながら、何処か困惑したような表情をしてイルカを見詰める。その額には吐精できない苦しさに、じっとりと脂汗が浮いていた。

どうしたんだろう、カカシ先生…?はやく出しちゃえば楽になるのに…

不思議に思った次の瞬間、イルカは自分の失策に気付いてこれ以上もないほど顔を赤くした。

ば、馬鹿か…!?お、俺がここにいたらカカシ先生が擦れる筈ないじゃないか…!
カカシ先生だって、「今から一発抜きますから出て行ってください、」とは幾らなんでもいえないよな…
ティッシュを渡したら速やかに退出するべきだったのに…俺はなんて気が利かないんだ…!

「す、すみません、カカシ先生…俺鈍くて…っ」
イルカが慌てて立ち上がると、
「ま、待って、待ってください、イルカ先生、」
カカシが目元に涙を一杯に溜めて、息も絶え絶えといった様子でイルカの腰にがしっと縋りついてくる。その動作にすら「あうぅ…っ!」と一人感じてカカシは体をピクピクさせた。どうしてこんな無茶を、とイルカもまた一人オロオロしながら、仕方なく浮かした腰をまた下ろした。
「お、俺…正直苦し過ぎて…う、うまく擦れそうにないんです…ひいっ…く…お、俺の手の上からでいいですから…っイルカ先生、う、動かすのを手伝ってくれませんか…ううっ…」

えええええーーーーーーっっっ!!!!????

何となく予想していた最悪の申し出に、イルカは心の中で大絶叫を上げていた。
涙と鼻水で濡れるカカシの顔と、別のモノで塗れそぼるナニを交互に見比べる。どちらも赤くて苦しそうという点でイルカの同情を誘った。しかも股間の上を彷徨っているカカシの手が、アルコール中毒患者のごとくブルブルと震えているのを見て、

た、確かにあの手つきじゃ上手く力の加減も出来そうにないなあ…

何だか物凄く納得してしまった次第だ。
袖すりあうも他生の縁、アレを擦り合うも他生の縁。俺とカカシ先生は宿縁めいているなあ、ははは、とイルカは渇いた笑みを浮かべた。
イルカは既に介添えをする覚悟を決めていた。過去に直接触れてしまった事もある。今回は間接的なのだからまだマシなんじゃないか。そう思わせてくれ、頼む…!イルカは胸中ひっそり誰に訴えているとも知れぬ叫びを上げながら、
「わ、分かりました…微力ながらお手伝いさせていただきます…」
居住まいを正して仰々しく頭を下げた。カカシの背後に回り震えるカカシの手を取ると、一本一本指を重ねていきりたつ熱棒を握らせる。
瞬間手の中のカカシがビクッと震え、重ねたイルカの手にまでその振動が伝わった。
「う…っ、」
熱い息を吐きながら、カカシが後方のイルカにしな垂れかかる。こぽりと先端からいやらしい汁が溢れた。

あわ…あわわ…あわわわわわ……!

想像していたより凄まじく淫靡な状況にイルカは激しく動揺した。このまま擦り続ける自信が早くも萎えかけていた。

いやらし過ぎる…こ、こんなの絶対におかしいって…!!!!

自分の選択の間違いに今更気付いたところで、もう収拾がつかない。

と、とにかくもう…出すんだ!出してもらうしかないんだ…!が、頑張れ俺…!!!!

イルカは懸命に手を上下させた。目を逸らしたくとも、カカシの手が不安定ですぐに自分の手の下からすり抜けてしまいそうで気が気でない。その為ぐちゅぐちゅと肉棒を扱きながらあらぬ場所をじいっと凝視してしまう。
「あ…っ、イルカせんせい…イルカせんせい…っ」
眉を寄せ快楽の色をその表情に滲ませながら、カカシが熱っぽくイルカの名前を呼ぶ。
まるでイルカを思い浮かべながら、カカシが自慰をしているようだった。

それを覗いている自分。

なんていう状況だ、とイルカは喩えようも無いほど顔を赤くした。
「ん…っいるかせんせ…っ…!」
切羽詰った声を上げてカカシがブルリと体を震わせると、先端から勢いよく精液が噴出した。

あ…しまった…!

手を離すのが一瞬遅れたイルカは、カカシの手諸ともその洗礼を受けてしまった。
濡れる手が熱い。何故か腰も。
「イルカ先生…」
カカシはハアハアと熱い息を吐きながら、嬉しそうに顔をほころばせた。汚れた手に茫然とするイルカの股間に、カカシがそっと手を這わせる。何をと抗議の声を上げる前に、イルカはその事実に気付いて激しい衝撃を受けていた。

お、おおおお、俺…い、い、今ので…た…たたたたた…!

狼狽するイルカにカカシはニッコリと屈託の無い笑みを浮かべて言った。
「イルカ先生も…勃っちゃったんだ…?」
今度は俺がしてあげます、とチーとチャックを下げながら。

続く