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一体今から何が始まるんだろうなあ・・・勉強したって何をだろう・・・?

夕飯を片付け終え、湯船に浸かりながらイルカは考えを巡らせた。

ひょっとして、女性の口説き方とかだろうか・・・?そういえばまだ教えてないもんな・・・
でもそれを通り越してデートの手順だったりして・・・

カカシ先生が気にしそうな事だ、とイルカは手で掬ったお湯を自分の顔にパシャリとかけた。だが、そんな事よりももっと直さなければならない事は沢山ある。今日はカカシが肘をついたまま食事をしようとしたので、「ちゃんと食べなさい、」と肘を叩いた。すると今度は素麺を大皿から蕎麦猪口へ寄せ箸で食べようとする。「寄せ箸は行儀が悪いですよ。ちゃんとお箸を使って。」と手のひらをぺちりとすれば、カカシが眉尻を下げて恨みがましく箸の先を口に咥えた。「舐り箸も駄目です、」と強引にカカシの口から箸を引き出せば、カカシがううーと呻き声を上げて目に涙を溜めた。
「こんなに気を遣って食べていたら、食事が美味しくないです・・・!」
敢然と抗議するカカシに、
「これは当たり前の事なんです!」
イルカもまた負けずに応酬した。カカシは不満たらたらだった。
「戦場では皆しゃがんだまま、手掴みで食べてましたよ!皆お箸なんて使ってませんでした・・・!」
「ここは戦場じゃありません!俺のルールに従えないなら食べないでください・・・!もう、下げますよ!」
イルカが素麺の大皿を下げようとすると、カカシが慌ててそれを押し止めた。イルカの勝ちだった。

一事が万事、この調子だからなあ・・・

女性の口説き方とか、デートの仕方より、人としての常識と行儀を躾けなければならない。お里が知れてしまう。これは人間性の問題だった。

意外にそういうことが重要だよな・・・人と付き合うには・・・

ウンウンと頷きながら、イルカは紅の事を思い浮かべていた。憧れていた紅。気性の荒いところが堪らなく魅力だ。あれ以上好みの女性が、果たして自分の前にこれから現れるだろうか。

でも・・・カカシ先生が好きなら仕方がない・・・どうしてかな・・・この恋をどうしても成就させてやりたいと思うんだよな・・・

紅に未練がある所為か少し心が痛んだが、仕方がない、ともう一度自分に言い聞かせた。

案外お似合いかもしれないな・・・カカシ先生は気が弱くて頼りないところがあるから・・・紅先生の様にしっかりとした姉さん女房で丁度いいのかも・・・

紅の肩に頭を乗せ、恥らうように寄り添うカカシの姿を思い描いて、イルカはふっと頬を緩めた。紅はイルカが知りえるところで一番の頼り甲斐のある女性だ。きっとカカシは守ってもらえるだろうし、幸せになるだろう。

問題はどうやって上手く行かせるかだよなあ・・・む、難しいよなあ・・・

イルカは湯船からザバッと上がった。まずはリサーチが必要だとイルカは思う。紅の好みの傾向を知る必要があるだろう・・・。頭を働かせながら風呂の戸を開けようと、イルカが手をかけた瞬間、自動的に戸がガラガラガラーと横に開いた。

え?

戸の開いた目の前にはカカシが立っていた。しかも全裸で。

えええええーーーーーーーー!?

男同士そんなに驚く事でもないかもしれないが、しかしイルカは度肝を抜かれていた。心の中で絶叫を放ちながらも、パクパクする口から音はない。

な、なんだ?長風呂過ぎて待ちくたびれたのか・・・?

イルカは焦りながらも、
「カ、カカシ先生、待ちきれなかったんですか・・・?すみません、俺今丁度出るところですから、お風呂どうぞ・・・」
そそくさとカカシの傍らを通り抜けようとした。しかし咄嗟にカカシに肩をつかまれ、そのまままた浴室へと押し戻された。
「な、なななな、何をするんです・・・!?」
嫌な予感にイルカの声は無様にひっくり返っていた。
だがそれ以上にカカシの声も緊張の為か、ひっくり返っていた。
「い、いいいい、イルカ先生・・・っい、今から・・・っ、お、おお、俺のっ、勉強の成果を・・・みみみ見てください・・・っ!」
ガバリと土下座したカカシの額が勢いよくごいんと浴室のタイルに当たる。
「だ、だだだ、大丈夫ですか・・・!?」
あまりに派手な音にイルカはあわあわとした。全てが急激過ぎる展開で、まともな思考が追いつかなかった。
「だ、大丈夫です・・・!」
ガバリとまた勢いよく頭を上げたカカシの額が、大丈夫じゃない事を知らせるように、ぱっくりと傷口を開けている。
「ぜ、全然大丈夫じゃないじゃないですか・・・!て、手当てしなくちゃ・・・!」
更にイルカがあわあわとしていると、カカシが額から血をだらだらと流しながら、真剣な顔をして近付いてきた。
そして。次の瞬間。
ぱくり、と。咥えられていた。その調った薄い唇に、イルカの大切なモノを。

○▼☆■@#・・・・っ・・・・・・・っっっ!!!!!!!!!

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ったーーーーーーーー!!!!!!カカカカ、カカシ先生・・・・・・・っっっ!!!!!」
イルカの股間に跪いたカカシが顔を埋めている。信じられない光景にイルカは大恐慌を来たしていた。
口淫を施されるは初めてではなかった。寧ろ慣れているくらいだ。しかし。

う、上手い・・・っう・・・っうぅっ・・・ってゆーか・・・何で上手いんだ!?この人・・・

まるで今までとは違う初めて施されるような感覚に、イルカは背筋を震わせた。

続く

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