「飼い犬より不自由」


「何で、そんな事言うんですか――――!!」


「黙ってりゃあ、あなたねっ!!知らないにも程がありますっ!!決して妬いてるんじゃありませんよっ!!
絶対、ぜったいぃ妬いてなんかいませんがね!あっちこっちで何してるか聞いてるんです!!」

「だから、あれはちゃんと断ってますってば!!・・・イルカ先生も見たデショ?
・・・・何疑ってんの!?そんなら俺も怒るよ!?」

「勝手に怒ればいいじゃないですか、さあどうぞ、どうぞ十分に怒って下さい。
大体ねえ、断ってるって言ってますけど
数!かぁずが多すぎるんですよ。あなた女性をどんな目で見てるんですか!!」

「何ソレ!?イルカせんせーだって言ってくる奴少ないだけで俺と五分五分だと思いますけどねぇ
アンタこそ隙が多いんですよ。にこにこ笑顔振り舞ちゃってさ。そりゃ勘違いする奴もいるっての!!
俺はねえ、どーせ相手だってたいして好きでもないのに言ってきてんのが大部分なんだから!!
だから目に見えて多いだけですよっ!アンタが好きな奴に比べたらまだマシですっ!!俺の心労も考えて下さいよ!!」

「それが、知らないにも程があるって言ってんですよっ!!
俺はあなたに、こっこっっ告白するまでの彼女らとかも見てますけど
そんなに軽い気持ちで言ってるとは思えません。にこにこって言ってますけど、
あなただって十分勘違いさせる事してんの気付いてないんですかっ!?あなたこそ隙だらけじゃないすか?」



うう〜と拮抗状態が続く。
折れないイルカに、珍しくスイッチが入ったカカシ。

基本的にカカシは怒らない。

イルカにどんなにきつい事を言われようが、八つ当たりされようが最後はごめんなさいと言うのはカカシだ。
それが、こんなに声も荒げて反抗するのは、
数少ないどうしても曲げれない所だった時と、イルカに関する時。


カカシがそれなりにモテるのは知り合う前から知っていた。
まあ、本人もイルカに噂を隠してはいなかったし、浮名を問うたら本人も認めてその通りで
イルカに会うまでは刺されても、「やっぱりね」と言われる事ばかりしていた。
当のイルカでさえ最初は、そんな男の気まぐれだろうと言う気持ちは払拭出来ずにいたが
自分に限っては何故かカカシは必死で、どんな噂が耳に入ろうと、どんな女性と付き合って来てどんな事をして来たのか、
そんな事より目の前のカカシを信じてやろうと言う気持ちが強かった。
それくらい、カカシはイルカに必死で何だか可愛かったから。

カカシに対して、そんな余裕をぶっこいていたからなのだろうか。

俺だけは特別なんて思わないけど、それに近い事を毎日イルカに繰り返す上忍に慣れて来てしまったのか
うっかり、元々そんな浮名を通らせていた男であった事を忘れていた。

―――――大体、俺は男だし。

カカシは「イルカ」が良いと言ってくれたのに。
毎日、毎日繰り返し。
男同士なんてと元々そんな気が無いイルカに、宥める様に、縋る様に。
それくらい必死で繰り返してくれて今に至るのに。
そんな事はカカシも承知なのは知っている、なのに卑屈な考えまで浮かぶ。







今年の冬は長かったからかな。

春は結構遅く来て、来たと思ったら初夏の様な暑さで桜も咲いたと思ったらあっと言う間に散ってしまった。
カカシがお花見に行こうとせがんで、散り際に夜中連れ出されて子一時間ばかり月明かりの中で花見酒をやった。
楽しい、楽しいと子供の様に繰り返し繰り返し口にしたのは、やはりカカシだった。
次の日には綺麗に風で花弁は地面を覆い隠し、
昨日イルカ先生と見たのが今年最後の花だったねと言ったのもカカシ。
繰り返し繰り返し、イルカとの思い出を必死に大切であると伝えて来ていた。

楽しい、楽しいね。
好き、大好きイルカ先生。
一緒に見れて良かったね。

繰り返し、繰り返し。


付き合った時から、そう言う光景は良く目にした。
最初は、自分も噂を払拭出来る程カカシの本気を信じていなかったから、まああるよな、くらいしか思わなかった。
でも、どんどんカカシを信じれば信じる程その光景は居た堪れなくて逃げ出したくて
その上、頻繁に出くわす回数が増えていた。
ただ単に、前よりカカシを目で追っている自分がいただけなのだが。

遠めからが一番多いが、かなり近い所で見た事もある。
――――カカシと女性。
こう言う時ほど忍と言う商売を恨んだ。
遠めからだろうが、近かろうが、口の動きで言ってる事が分かる。

大体、いつもパターンは同じ。
女性が必死の形相で思いを口に出し、カカシが「ごめ〜んね。俺好きな人いるから」で終わる。

いつも、いつも見てはいけないと思いつつ、その最後の一言から目が逸らせない。
その最後の一言を聞いて、全身から力が抜けて
――――やっと息が出来た。

――――言ってくれないかもしれない。

どんなにカカシがうぬぼれても良い様な事を繰り返しても、目を、逸らせなかった。
不安が、全身を包む。

それが、この春になってから尋常じゃないくらいイルカの目に入る事が多くなった
二月は恒例のアノ行事があるから結構覚悟していたから、冷静に受け止められた。
袋一杯のチョコをカカシが持って来ても、それを 何だか悪いですね〜と言って二人で食べる余裕もあった。
でも月をいくつか越しても、その衰えが見えないから、イルカの心労はピークに達していたのだ。

――――いや、前々からあんな調子だったよな、カカシ先生も結婚適齢期だし・・・

そう、思ってなんとかして来た。
でも。
今日、目の前で繰り広げられなければ、こんな口論だってしなくて良かったかもしれない。
こんな、みっともない事をカカシに言う事も。






今日の窓口は暇で、しごくまったりとしていた。
イルカの帰還予定者の帳簿も順調に埋まって行って、席を立って綱手様にお茶なんか出す余裕もあった。
綱手と 暇だね〜、今日は赤字だね〜 なんて話しに まっ、たまには良いじゃないですか なんて会話をしながら。
急に混まなければ十分に二人でやって行ける状態だった。
イルカが受付をして、綱手が金額交渉をしランクを決める。
来訪者も少ないから、窓口はイルカと綱手だけで、後はしくりを直してる人が数人。
イルカ以外の受付の者は書類整理で部屋を出たりしていた時だった。



「おっ、来た来たって・・・・な〜んだカカシかい」
廊下の磨りガラスの影に綱手は反応して、軽い音を立てて開けられたドアから覗いた顔に脱力した。
そんな声も届いていないのかいそいそと、カカシはイルカに近づいて来た。

「イルカ先生、ただいま!ハイこれっ!」

「・・・・無視かい・・・」
イルカは綱手に苦笑いを浮かべながらカカシが持って来た書類に目を通す。
「はい、大丈夫です。おかえりなさい、カカシ先生」
いつもの笑顔で言うと、カカシは口布の上からでも分かるくらいにんまり口を緩ませて目を細くする。
「をい・・・いちゃいちゃしてないで、カカシ・・・いっその事お前でもいいや、何か依頼無いかい?暇でしょうがない」
「え〜・・・?イルカ先生とぉ・・・・・!!」
「・・・悪かったよ。悪かったアレは・・・悪ふざけし過ぎた・・・」
カカシの声を遮って、ハァ〜と息を付くと綱手はこめかみを抑える。
つい先日、カカシは綱手にまんまと騙されて、カカシを庇ってイルカはそのせいで影の権力者と言われた。
実際アレから綱手はイルカとシズネの言う事は、なんやかんや言いながらこなしていた。
更にそのせいで、イルカ権力者説はじんわりと中忍以下にも広まりつつあってイルカの悩みの種の一つでもある。

たわいも無い会話をして、カカシがじゃあと言ってイルカと綱手に背を向けた時だった。

二人組で来訪して、片方に書類の不備が見つけられたのでイルカがそれを丁寧に指摘し
二人で書類を整えていた、女性の内一人がすっとカカシに近寄って来た。
別にそれを止める権利等イルカには無くて。
イルカの目と鼻くらいの先で。
それは、繰り広げられた。


「・・・下さい・・・」
「・・・・ごめ〜んね、俺好きな人いるから」
「・・・・っでもっ・・・!」

カカシの言葉に何か言おうとしたが、しばらく俯いて小さく頷いた。
女性はすんっと鼻を鳴らして会釈すると
カカシに背を向け、連れの所に戻ると片方が慰めながら部屋を後にする。

「カカシ〜・・・な〜んでお前みたいのがいいかね?」
「知ーりませんよー、聞いた事ないし」

確かに、カカシがもてるのは知っていた。
こんな場面は良く見た。
でも、こんな目の前で見る事は今まで無かった。



――――俺がいるのに



自分がいる空間で、その光景が繰り広げられたのがイルカは酷く、酷く嫌だった。

「俺はイルカ先生がいいもんっ」

その言葉を素直に聞く事が――――出来ない。








「そう、そんなに言うなら信じさせるだけですよっ!!」

「別に疑ってる訳じゃないって言ってるでしょう?」

もう、口に出した不満は止める事が出来なくてカカシの言葉の全てに反抗してしまう。
ただ、嫌だっただけだ。
カカシは悪くない。
頭のどこかで謝れと言っているけど、止められない。
今謝れば丸く収まる。

「今回ばかりはイルカ先生が謝ったって丸くなんて収めないからねっ」

イルカの思考を見透かされた様にカカシが口を出してハッとして顔を上げる。
「アンタが納得するまで信じさせてやります。こんな事言い出して、そんな顔して・・・
どうせアンタの事だから自分に何かしらある時は謝ればいいなんて思ってるんでしょうけど、
今回は俺も謝らないけど、アンタが謝ったからって俺も収めません。アンタが納得するまで」

さわりと自分の顔に手をやる。

――――どんな

「どんな顔してるって言うんですかっ!!」

憤怒も顕わにしてこれ以上カカシと話しが出来なくて、イルカは大声で怒鳴ると
踵を返してドスドスと床を踏み鳴らしながら寝室に入る。

「今日は来ないで下さいっ!!」

カカシの顔を見ないで襖を思い切り閉める。
閉めた後の寝室は薄暗くて、途端力が抜けた。
へたりとベットに横たわる。

「どんな・・・顔・・・って」

――――こんな情けない顔してるのなんて、知ってた。

イルカは襖の向こうにいるカカシを夢想しながら後悔と嫉妬がないまぜのまま
全てを眠りに託して目を閉じた。




カタン。

怒りのまま落ちた眠りは浅くて、少しの物音に目を覚ます。
うっすらと目を開けたら、まだ部屋は暗くて夜は明けてないようだった。
そんな夜に不釣合いな、鳥の鳴き声がしてイルカは飛び起きた。

――――カカシ先生。召集が、かかったんだ

むくりと勢い良く起き上がったものの、はたと動きを止める。
どんな、顔して会えばいいんだ・・・
めったに怒らないカカシをあんなに怒らせて、その上言い逃げして。
閉めた時のカカシの表情は見ていないけど、声は酷く寂しそうだった。

気付いたのに送り出さないのも憚られ、イルカはそっと玄関に向かった。
案の定暗闇にはベストを着込んで今出て行こうとするカカシの後ろ姿がある。
丁度、脚絆を見に付けている所だった。
こんなに、こんなにカカシに声をかけるのが怖いと思った事は無い。

「―――・・・カカシ先生・・・・召集です・・・か?」

その、問いにはカカシは無言で身支度を整えている。
もう、怒ってなければいいなんて都合の良い事を考えてしまう。
そんな訳無いのに。
イルカが起きた時から気付いていた筈だから、声をかけるイルカに気付かない筈は無い。
でも、カカシは背中を向けたままで無言だった。

―――――泣く
泣くな、みっともない。

カカシが無言だった事に酷くショックを受けて涙腺が熱くなるのを、何とか堪える。
自分の、自分のせいで、自分の我侭でカカシに八つ当たりして、こんなに怒らせて
泣いたからと言って許されるとは思ってないけど、なんてあざとい。
それも、今召集がかかってる時に、足手纏いも甚だしい。

ぐっと堪えていたら鼻が熱くなって来た。
カカシは脚絆を見に付け終わると、すっと立ち上がってドアノブに手をかけた
言葉は―――無い。
それに更に耐え切れなくて、目線を落とす。

「わん」

は?

思わず、落とした目線をカカシに戻すと
カカシは何かにハッとした様に振り返り、すっと腕を伸ばすとイルカの眉間にトンっと指を当てた。

「くうう〜ん(これで分かる様になったデショ?)」

音は確かに犬の鳴き声だけど、カカシが何を言ってるのか理解出来る。

「か、カカシ先生・・・何・・・」
「わんわん!(自分に術をかけました)」
「いや、そうなんでしょうけど・・・なんでまた・・・そんな」
「わんわんわん!(イルカ先生がヤキモチ妬いて、俺を少し疑ったから)」
「妬いてなんかっ!・・・いや・・・まあ・・・そうかもしれません・・・」

認めてしまえば、しごく楽になってイルカはしばらく出来なかった息を吐いた。

やはりカカシに無視されたのはショックだったから。
込み上げる涙と共に自分の気持ちにも素直になる。
それに、わんわん鳴いているカカシに先程までの激昂をぶつける気も沸かない。

「わんっわんわん・・・くーん・・・(そんなに不安にさせるつもりは無かったんです・・・
今日のはちょっと俺が場所をずらせば良かったんだし)」

「そんなっ・・・」

――――そんな事無いと言おうと思って止めた。確かにイルカは自分の目の前で繰り広げられた光景が
溜まらなく嫌だったのだから。
今更取り繕ってどうなる。

「・・・確かに、嫌でした・・・今日だけじゃなくてずっと・・・いつかカカシ先生が好きな人いるって言ってくれなくなるかもって・・・」

ぐうっと唸ってイルカは手の甲を噛んで込み上げる熱い塊を無理矢理飲み込む。
思い切り噛まないと、言葉と一緒に、涙が―――出てしまいそうで。

「だって・・・俺・・・男だし・・・カカシ先生もてるし・・・じっ自信ないし・・・っっ」
カカシはくーんと切ない音を出して、こちらをとても優しい顔で見つめている。

「どっ、どんどん嫌で嫌で・・・でも、嫌なんて言ったら・・・もしかして、ほっ、本当に俺の事好きでもなんでも無かったら・・・
そしたら、そんな・・・こと言ったら気持ち悪いって思われそうで・・・・」
イルカはとうとう両手で口を押さえて堪え始めた。

「くーんくーん・・・・(やっぱり俺の努力不足ですね〜信じさせてあげれなかった。ごめ〜んね)」
すごく困った笑顔でカカシはイルカをそっと撫でてやる。

――――やっぱり謝るのはカカシ

それに更にイルカの涙腺は緩んで、視界がぼやけてくる。
「す・・・すいませ・・・・」
最後の音はカカシが思い切り抱き付いて来たから、カカシのベストの中に消えた。

「わんっ!わんっ!(イルカ先生、本当の事言ってくれたからもう怒ってないよ)」

イルカはおずおずとカカシの背中に手を回す。
当たり前だけど、腕の中にいるのはカカシなのに酷く安心する。
もう、泣いているのかもしれないが、涙も声も全てカカシのベストに吸い込まれて。
それでも、みっともないと、カカシは召集が掛かっているんだからとイルカは堪えて言葉を紡ぐ。

「でも・・・なんで犬の声にしたんですか?」
「く―――ん・・・く――ん・・・
(言葉が足りなかったからイルカ先生を不安にさせたなら、いっそイルカ先生にしか分からなくていいやと思って)」

言葉が足りなかった訳では無い。カカシは毎日毎日繰り返し繰り返しイルカに教えていたのだ。
自分が―――カカシを信じてやれなかっただけ。

「それでも・・・不安だって言ったら・・・?」

「わんっわんっ(信じさせるって言ったデショ?)」

イルカはカカシのベストの中で小さく微笑んだ。







「な〜にをやってるだ。お前らは・・・・」
昨日に戻った様な顔ぶれで、今はいい大人が二人でお咎めを受けている。
幸いなのは、昨日と同じでとても暇で周囲の人間があまりいない事。

わんわん状態でカカシは任務に就き
(任務中は喋らないし、元々カカシはあまり率先して喋る人間では無いので不信がられなかったらしい)
そのまんまの状態で任務報告に来てイルカの前で

「わんわん(ただ〜いま〜イルカ先生!)」

と、言ったのだ。もちろん綱手もいる前で。

「くだらない術かけてんじゃないよ〜ほぃっ」
昨日イルカにカカシがした様に、綱手はカカシの額当てをトンと押した。

「あっ!!結構気に入ってたのに!!何するんですか〜」
「お前この後、個人の任務入ってんだよ・・・。依頼主の前でわんわん言ってどうするんだ・・・」
「喋らなきゃ分からないでしょ〜?」
「個人任務で面通しもあるヤツなんだよっ」
「それも、すごいシャイな人で通すとか、筆談とか・・・・」
「すみません、すみませんっ!!綱手様っ!!コラっっカカシ先生っ!!」

イルカが割って入って、カカシも落ち着き素直に綱手から任務を言い渡され出て行った。
「イルカ〜・・・お前も何であんな奴がいいんだ・・・?」
ごもっともな意見である。
「はぁ〜・・・まっまあ!お茶でも入れますよ」

突っ込まれれば昨日泣いた自分が思い出されて、「あんな奴」に無視されたくらいで哀しくて泣いた自分。
恥ずかしくてそそくさと席を立ち、窓口用の給水ポットのある所まで足を運ぶ。
後ろで綱手が、私は濃い目で〜 と声をかけた。

ふと、窓の外を見ると見知った銀色の頭がひょこひょこ歩いている。

それをイルカは窓から眺めていたら、視界の端から駆け出す影があった。
昨日の繰り返しの様に銀色の頭に女性が声をかけた。
その二人しかいない空間、心地よくなびく風、揺られる木々達
昨日より遥かに雰囲気のある情景。
遠くからでも何を言ってるかは分かるが、開けっ放しの窓はリアルな音まで運んで来てくれる。

「カカシ上忍・・・あの、付き合って下さい・・・」

頬を赤らめて、か細い声を出して女性は告白した。

イルカにも本気だと分かるくらい彼女の顔は真っ赤で必死だった。
声も途切れ途切れで震えている。
いつもなら、ごめ〜んねとすぐ返すカカシは何も言わない。
こちらからでは、その表情も確認出来ない。
―――何で―――?
そのカカシの作った一瞬の間に、イルカが不安を覚えようとした時だった。


「わんっわんっ(ごめ〜んね、俺好きな人いるから)」


ぶっ!!


女性は真っ赤な顔を、途端歪ませてカカシを神妙な顔で見つめる。
噴出したのはイルカ。
思わず窓際に乗り出して、カカシの方を見ると
真っ赤な女性をほっといて、カカシはこちらに振り返った。



「わおっ!わお―――――んっ!!(イルカ先生しか好きじゃないもん、俺はイルカ先生だけでいいのっ!!)」



いきなり奇声を上げられ、可哀相なのは息も絶え絶えで告白した女性だ
目を真ん丸くしてカカシを見つめたまま、固まってしまった。

「何だぁ〜?・・・術は解除したぞ」
その奇声に、綱手までもが窓際までやって来た。
カカシはまだ遠吠えしている。

「・・・なあ、いいのかアイツで・・・」

「そうですねぇ・・・あの人こそ、俺でいいみたいだからいいんじゃないですか?」
「ハァ〜そうか・・・、そんじゃイルカお茶頼む」
綱手はさっさと自分の机に戻ったが、イルカだけはヒラヒラとカカシに手を振って答えた。






「俺なんかに飼われたら、飼い犬より不自由だってのにねぇ・・・・」





ぼそりとはにかみながら呟いた言葉はカカシに届いた様で、
傍に大きく目を見開いた女性を置き去りにしたまま、一際大きく銀色の犬は遠吠えした。



終わり


「飼い犬より不自由」のともちさんから相互リンク記念にいただきました〜v
おお!?なんだかラブラブな二人で頬が緩みますぞ!
ともちさんはカカシスキーなお方なのですが、サイト短編を拝読すると、まるでイルカスキーのよう(笑)で、カカシが意外にしょっぱい思いをするものが多いんです(笑)が、これはラブラブですね!
でもしょっぱいカカシは私の大好物であります(笑)
そんなともちさんの素敵小説満載のサイトはこちらからからどうぞ!→
ともちさん、ほんとうにありがとうございました!

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