後編
ロッカー室に入るが否や、カカシが後ろ手でガチャリと施錠した。
その音は平穏な日常生活との隔絶をイルカに嫌という程意識させた。
ああ〜!!どうなるんだ、俺!?
歯の根が合わないほどぶるぶると震えるイルカに、カカシが優しい微笑を投げた。
「大丈夫ですよ、イルカ先生。そんなに緊張しないで。」ね?と言いながら、イルカの背を壁に押し付ける。
「ああああ、あのっ....!」
「イルカ先生、目を瞑ってください。」
うあ、もう始めるのか!?とイルカは慄いた。
目を瞑る、ということはキスをするんだな。そうだよな、まず始めはキスからだよな。
イルカはカカシに言われるがままに目を瞑った。
その途端、ズボッという音と共に下半身が突然スース―した。
えっ!?
イルカが慌てて目を開けると、丁度カカシが露になったイルカを口に含むところだった。
ちゅるり。
いやらしい音が聞こえた次の瞬間、背筋を震わせるような快感が下肢から突き上がり、それと同時に腰の辺りがズンと重くなる。
「ふぁ...っ!」
思わず上げてしまった声に驚いて、イルカは慌てて自分の口を押さえた。
カカシはイルカの様子に構うことなく、指と舌で丹念に愛撫し続ける。
「ちょちょちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、カカシ先生、ま、まって....ん...ふぅ...」
イルカはカカシの頭を押しのけようとするのだが、手に力が入らず、なんだかカカシのふさふさとした銀髪をかき混ぜるような仕草になってしまう。腰を引こうとしてもカカシの手がガッチリイルカを押さえ込んでいて動かせない。それどころか、抗う素振りを見せるとより深く咥えこまれてイルカは息を詰めた。
こ、こんな、こんなの、ちょっとどころの話じゃ無え!やりすぎだろ!
イルカはハアハアと息を荒くしながらも、心の中で絶叫した。こんなことをされたのは初めてだ。自分がしたことも無い。自分の性器を他人が舐めているのだと思うと気が遠くなるほど恥ずかしい。恥ずかしいのに、気持ち良い。気持ち良いから声が出てしまう。恥ずかしい。でも気持ち良い。ああっ、俺はどうしちまったんだ!イルカは混乱して何がなんだかわからなくなってしまった。
切ない声で身を捩るイルカに、カカシの舌は益々調子付いた。
「あっ...ちょ...っ、も、でる...っ!!」
込み上げる射精感にイルカは焦った。このままだと、カカシの口の中に出してしまう。そんな失礼なことできない。イルカは放してくれと必死になって叫んだが、カカシの舌の動きは激しさを増すばかりだった。
「ああぁぁぁっ....!」ビクビクと体を震わせて、イルカは遂にカカシの中に吐き出してしまった。カカシはそれを躊躇うことなく嚥下すると、崩れ落ちそうになるイルカの体を支え直した。
イルカの頭の中はカカシの中に出してしまったショックで真っ白だった。男にいかされてしまった....しかも気持ち良かった。自分のアイデンティティーがガラガラと音を立てて崩れていくのをイルカは感じた。自分で自分が信じられない。俺はホモだったのか。カカシ先生との間に愛は無いのに気持ち良いなんて、俺は淫乱か。
愛が無くても感じるものは感じるのだが、イルカは古風な上経験に乏しかったので、こんなに気持ち良いということは、ひょっとして俺はカカシ先生のことが好きだったのか、と考え込んでしまう始末だ。
そんなイルカの葛藤を知ってか知らずか、カカシはにんまりと笑って事も無げに言い放った。
「それじゃあ、いよいよ試してみましょうか?」
へっ?試す?だって、今もう試したはず。
イルカが一瞬ぽかんとした隙に、カカシの指がイルカの尻の狭間に遠慮無く埋められた。
「ぎゃあああああーーーーーっ!!」
イルカはあまりの事態に今度は大声を上げた。「ぎゃあって、あんた。....色気無いですねえ〜」カカシは大して気に留めた様子も無く、そう言いながら指をどんどん増やす。いつのまにか潤滑油で濡らされていたらしい指は、案外易くイルカの中を出入りした。
「カッ、カカシ先生!も、もういいです、もうわかりましたから...っ!」
イルカの必死の叫びにカカシはん〜?と首をかしげた。
「えっ、だってまだセックスできるかどうか、試してないですよ。セックスっていったら、突っ込むことでしょう?」
まさか。イルカの額を嫌な汗がダラリと垂れる。
「じゃ、じゃあ、さっきのは...」
「ああ、あれはですね!イルカ先生があんまり緊張してるみたいだったから、緊張をほぐしてあげようと思って。」
サービスですよ、サービス!
そんなサービス、要るかーーーーっ!!
イルカは叫びたかったのだが、カカシの指が縦横無尽にイルカの中を弄り、しかもそれが時々なんだかおかしくなるくらい感じてしまう箇所にあたるのだ。その度におかしな声をあげないように我慢するので精一杯で、まともな言葉なんてとても吐き出すことができない。我慢してもいいところにあたる度、体がビクビクと反応してしまう。するとカカシは意地悪く執拗にそこを弄る。本当におかしくなりそうだ。しかも考えたくないが、また自分のものが熱を持って固くなり始めている、気がする。
朦朧としていると、カカシがイルカの右足を肩にかけてグッとイルカに密着してきた。
「じゃあ、試しますよ?嫌だったら言ってくださいね?」
カカシは親切顔でそう言うが否や、ガバ、とイルカの口にかぶりついた。そしてそのままイルカにあてがった自分のものを、グイッと一気に押しこんだ。
いてえ!や、やめてくれっ!!
そう思うのに、カカシはイルカの口を塞いだまま揺さぶるので、嫌もいいも全て言葉は口の中に吸い込まれ、もがーもがーとしか音にならない。
そうこうしているうちに、結局最後までされてしまった。
終わった後呆然としているイルカに晴々とした顔をしたカカシが、にこやかに言った。
「嫌と言わないうちに、最後までしちゃいましたね〜。それはよかったってことですよね?」
.....はい?
「俺のこと嫌じゃなくて、寧ろ好きって言いましたよね?その上セックスもよかった。これで何の問題もありませんね!今日から俺達晴れて恋人ですね。ね?」
大切にします、とカカシが嬉しそうにぎゅう〜っとイルカを抱きしめた。
確かにカカシ先生のことは嫌いじゃない。
セックスも....気持ち良かった。
でも、これでいいのか!?
そう思うのに、カカシの心底嬉しそうな無邪気な笑顔を見ていると、嫌だと言えない。
嫌だと言えないからには、結局恋人になってしまうのだろう。不本意ながらも。
しかも、なんとなくはめられた気がしているのに。
流されているなあ、俺。
イルカは目に浮かぶ涙をそっとぬぐった。
終
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