(15)
カカシがイルカの顔中にキスの雨を降らしながら、上着の下に手を滑りこませて諸肌を撫でるように愛撫すると、イルカがくすぐったそうに身を竦めた。そんなイルカの様子にカカシも小さく笑みを零して、わざと脇腹から腋までゆうるりと撫で上げるようにしながら、イルカの耳に熱い吐息を吹きかけた。イルカはあまりのこそばゆさに笑い声を上げてジタバタとしながら、それでも悪戯にくすぐり続けるカカシに堪らず抗議の声を上げた。
「ははは、や、止めてください、カカシさん...ククク...そ、そういえば俺、飯食ってなかったな。カカシさんは、お腹減ってないですか、ハハ。」
この期に及んでつれない事を言うイルカに、カカシは少し拗ねたような顔をした。
「どの口で言うかな、そんなこと。」
カカシはそう言うと、噛みつくようにイルカに口付けた。逃げるようなイルカの舌を捕らえて、自分の舌を絡ませるようにしながら、強く啜った。イルカがンン、とくぐもった声を上げる。カカシはその声に追い立てられるかのように、執拗にイルカの口腔を舐った。その間も手の動きは休めずに、辿り着いた胸の突起を捏ね繰り回す。カカシの下のイルカが、ん、んん、と切なげに眉根を寄せながら艶かしく身体を揺らした。カカシは堪らなくなって、胸を愛撫していた手をイルカの下半身へと移動させ、ズボン越しにその形をなぞるように、ゆっくりと上下させる。イルカはビクリと体を震わせて、その動きを止めようと慌ててカカシの手首を掴んだ。だがカカシはそれを物ともせずに、今度はズボンの中に手を忍ばせて直接イルカ自身を握った。既に首をもたげ始めていたそれをやわやわと手で包み込むようにして扱いてやると、イルカの身体はおもしろいほどビクビクと跳ねた。
カカシはそんなイルカの様子に満足しながら、ようやく唇を離した。
自由になったイルカの口から、ハアハアと荒い息が漏れた。「ちょ、ちょっと待って...ください...カ、カカシさん...」目を潤ませ上気した顔で、懇願するようにカカシを見上げるイルカは、ハッキリ言ってかなりカカシの腰にきた。
「待てないよ。もうこれ以上待てない。」
カカシはそう言って、イルカの手を自分のものへと誘導した。途端にイルカの顔が羞恥に赤く染まる。イルカの触れたカカシの欲望は、既に固く張り詰めて、窮屈な布地を押し上げていた。
「ね?もうこんなになってる。はやくイルカの中に入りたいって、もう零してる...」
カカシはうっとりとイルカの耳元で囁きながら、自分の前を寛げて、取り出したその先端をイルカの手のひらに擦りつけた。にちゃ、と厭らしい音がした。イルカはもう何も言えなくなってしまったようで、ただ顔を赤くして目を瞑った。それを了承と受け取って、カカシは急いでイルカのズボンを脱がすと、その下半身に舌を這わせた。イルカのものを口に含むと、イルカはまた慌てて「ちょっと待ってください!」と上半身を起こした。カカシは全くイルカの言葉に耳を貸さなかった。先端をちゅるちゅると啜っては舌を鈴口に潜りこませるようにして嬲る。
「...んっ....あっ....」
イルカの口から甘い喘ぎが漏れ始めると、カカシは全体を舐め上げるように舌を這わせては、口に含んでズボズボと出し入れしながら、口腔にイルカ自身を擦りつけるようにした。口での刺激は強過ぎるのか、イルカが達するのはすぐだった。
「ああっ....!」
一際大きな嬌声をあげて、イルカはカカシの口の中に白い液を吐き出した。カカシは吐精した後のイルカのとろんとした顔を食い入るように見つめながら、イルカの精液を自分の手の上に吐き出して、それを自分の手に塗り広げた。そしてぐったりと弛緩するイルカの足を胸につくまで折り曲げると、露になった双丘の窪みにその濡れた指をずぶずぶと埋めていった。
「や...やぁっ...やめ、て...くださいっ、そんなとこ...!」
イルカは今度こそ本当に驚いたようで、今までにない力で必死に抵抗を試みた。カカシは「シー...」と、もう片方の手でイルカの口に人差し指を立てて見せながら、あやすようにこめかみにキスを落とした。その間にも埋められる指は増えていく。
「ふ...う...んっ、んっ....」イルカは目尻に涙を溜めながら、カカシの身体を押し戻そうと弱々しく手を突っ撥ねた。
カカシは何度も何度も「シー」と囁きながら、イルカのこめかみに優しく口付けを施した。やがてイルカの抵抗が止んだのを確認すると、指を引きぬいて、己の熱く脈打つものをイルカの後孔にあてがった。
イルカがヒクリと震えて不安げな眼差しでカカシを見つめた。カカシは優しく笑って軽くイルカに口付た。
「好き、イルカ...」カカシはうわ言のように呟いて、イルカの中へと腰を進めた。
「ああっ...やっ....」反射的にずり上がるイルカの身体を逃がさないように押さえ込んで、カカシは一気に奥まで穿った。
「はぁ....っ!」イルカの身体が衝撃に大きくしなる。
イルカとひとつになったと思うと、カカシは空恐ろしいほどの喜びで胸が一杯になった。
「イルカ、イルカ....好き....」カカシは夢中になってイルカを揺さぶった。慣れないイルカの身体を思いやろうとするのに、もっとと求める気持ちに歯止めが利かない。イルカの中はあたたかくて気持ちが良かった。
「好き、好き...好き...」他にどう言ったらいいかわからなくて、カカシは何度も好きだと呟いた。
イルカは揺さぶられながら震える手をカカシの首に回して、カカシの顔を引き寄せた。
「俺もです...」
イルカはカカシの耳元で囁いた。「俺も、好きです...」
その瞬間、カカシの胸が苦しいほど熱くなった。苦しいのに、その熱は何と心地良く自分をあたためてくれるのだろうか。
心も身体も。暖かくて。気持ち良くて。
こんな風に、感じることが出きるなんて。
「イルカ...!」
カカシはイルカの中に自分を刻み込むように、より一層激しく動くと、その奥に熱い迸りを叩きつけた。
傍らで寝息を立てるイルカの頬を、カカシはゆっくりと撫で上げた。
「俺ねえ、暗部を辞めようと思います。」
カカシは寝ているイルカに話しかけるように、独りごちた。
「時間はかかるだろうけど。もうあんたなしにはいられないし。あんたの世界で生きて行くことにしたから。」
だから。
俺から離れないで?
カカシはそう呟きながら、自分が無様に泣いていることに気がついて苦笑した。思わず手のひらで自分の目を覆い隠す。
自分が別の世界へ境界を越えていけるなんて、思ってもみなかった。
ただ、膝を抱えて夢見ているだけだった。
臆病で。勇気がなくて。
真っ暗な世界に、満足しているような振りをして。
境界を越えた今でも、自分にとって未知のこの世界は薄暗い闇に包まれていて、足元も覚束無い。
だが、イルカがいる。イルカがいてくれる。イルカが暗い足元を照らしてくれる。
この世界で俺を、待っていてくれる。
カカシは眠るイルカの頬を何度も何度も撫で上げた。
自分が手に入れた奇跡を確かめるように、何度も。何度も。
俺は何も怖れなくていいのだ。
イルカが傍にいる限り。
止まらずに零れ落ちるもので曇る視界の端に、窓から見える月のない暗い夜空が映る。
例え今夜のように。
真っ暗な闇が俺を包んだとしても。
月の無い夜も。
太陽の隠れた朝も。
怖れずに進もう。
その闇を飛越えるように。
俺を照らす、この優しい灯火を道標に。
その灯りが照らす先を信じて。
カカシはイルカの頬に口付けながら、密かに誓いを立てた。
終り