Friends5
その日イルカが作った夕飯は、サンマの塩焼きと筑前煮、ほうれん草のお浸しと豆腐の味噌汁だった。切り方は乱雑な上味付けは麺つゆ頼みな代物を、カカシはおいしい、おいしいと無邪気な笑顔を浮かべて食べた。イルカはカカシのそんな姿に面映い気持ちになって、何処か胸が一杯で、いつもより食が進まなかった。
そんなイルカにカカシは心配そうな顔をした。
「イルカ先生、いつもより全然食べていないじゃないですか。何処か具合が悪いんですか?」
カカシの問いにどう答えていいのか分からず、イルカは困ったように首を横に振った。するとカカシはそれをどう取ったのか、「あっ、わかりました!今晩の事が心配なんですね!?」と言い出した。
今晩って...?
イルカが首を捻っていると、カカシはバーンとテーブルを叩いて言った。
「パンツ泥棒ですよ、イルカ先生!パンツ泥棒の事が心配なんでしょう?だいじょ〜ぶですよ、今晩は俺がずっとついてますから!」
「えぇっ!?」急展開にイルカは焦った。
「で、でも、今晩は見張らなくても...だ、だって昨日の今日ですよ?流石に変質者も警戒して現われないんじゃないでしょうか...?」
しかしイルカの主張に耳も貸さず、カカシはまた鼻息荒くイルカに詰寄った。
「何言ってるんです?変質者に常識があると思いますか?無いから変質者なんでしょう?絶対に今晩もやって来ますよ!」
イルカはカカシの言葉になるほど、と妙に納得してしまった。
そうだよな、常識がないから変質者なんだ...そう考えると、確かに今晩も性懲りも無くやって来そうだなあ...
イルカはウンウンと頷いた後、カカシに向かって深深と頭を下げた。
「それじゃあ、お言葉に甘えます。カカシ先生、今晩よろしくお願いします。」
イルカがニッコリ笑ってそう言うと、食事途中だったカカシの手から、ポロリと箸が滑り落ちた。「カカシ先生、お箸が...」と言いながらイルカがカカシを見遣ると、カカシは自分の顔を両手で覆っていた。それでも隠しきれなかった部分や耳や首筋が、驚くほど赤く染まっているのが分かった。幾ら照れ屋と言っても程があるだろうという赤面具合に、イルカはカカシの血圧の心配をしてしまったほどだ。
カカシ先生ってなんか可愛いなあ...
イルカがフフッと小さく笑うと、カカシがイルカの手をガバッと握って言った。
「今晩は俺に任せて下さい、イルカ先生!安心してっ、横になっていてくれればいいですからっっっ!」
カカシの息はハアハアと荒く、その眼差しは熱く濡れていた。
そのあまりの迫力に、「うわ、カカシ先生気合はいってるなあ〜!」とイルカは感心していた。些細な事件にでも全力であたる姿勢が立派だよなあ、などと思いながら、イルカはもう一度言った。
「はいっ、今晩はカカシ先生に全てお任せしますから!何か俺にできる事があったら言ってください!」
その言葉に、イ、イルカ先生...とカカシが感無量な表情をする。そして次の瞬間、にっこりととても綺麗に微笑んだ。
「そうですか〜!じゃあ折角ですし、イルカ先生にも協力してもらおうかなあ...」
何故かその微笑にゾクリとくるものを感じながらも、イルカはこっくりと頷いていた。