Friends4


そういえば最近抜いていなかったな...

イルカは緩く首を擡げる己の物に、そっと自分の手を添えた。親指と人差し指とで輪を作って己の物にくぐらせると、丸く張り出した先端の下のくびれた部分を中心に、最初から激しく上下に扱いた。自慰に対する躊躇いは無かった。男とは厄介なもので、一度勃ってしまったら吐き出さない限り、中々元に戻すのが難しい。だからここはもう抜くしかないのだ。

「...んっ....は...ふっ....」

イルカは漏れそうになる喘ぎを唇を噛んで我慢しながら、擦る手により力を込めた。先端から滲み出る精液が怒張した熱棒を汚し、上下するイルカの手の中でズチュズチュと淫らな音をたてた。

も...出る...!

「あっあぁっ、....あ....っ....!」

吐精の予感にイルカが一際大きい嬌声を上げた時、ガタッと天井の羽目板が派手な音を立てた。その音にハッとして、イルカは急速に正気付いた。勿論手の動きは止まっている。

だ、誰かいる....!?

イルカはハアハアと熱い息を漏らしながら、音のした天井を見遣った。すると、なんと羽目板の一部がずらされて、隙間のようなものが出来ているではないか。そこに目のようなものを見た気がして、イルカはあまりの驚きに背筋を震わせた。

ど、泥棒...!?いや、俺んちに盗むような物は無いし...
ま、待てよ?もしやパンツ泥棒...!?

そう思った瞬間、イルカの頭の中には先ほどのカカシの言葉がぐるぐると回っていた。

あなたの下着を狙ってる不埒な奴は、この里に巨万といます!
イルカ先生はもっと注意すべきですよ。あなたは無防備過ぎます!

カカシ先生の言う通り、本当に変態っているんだなあ...

イルカはそこはかとなく世の中の哀愁のようなものを感じながら、わざと「んん...」と甘く鼻を鳴らしてみせた。すると、羽目板の奥でゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。まだそこにいたか、とイルカは内心ほくそ笑みながら、コッソリと片手をベッドの下に潜らせて、非常時のために忍ばせた小刀を手に握った。この変態野郎め!パンツの恨み、思い知らせてやる。

「そこだあーーーーっ!」

虚を突いてイルカが放った数本の小刀が、タ、タ、タ、タン!と小気味良い音をたてて天井の羽目板に次々と突き刺さった。次の瞬間「うっ、」と短い呻き声が上がったのを聞いて、やった!とイルカはガバリとベッドから飛び起きた。捕まえてやる!と、大急ぎでずれた羽目板に手をかけると、力任せに天井から引き剥がした。
が、しかし、敵も素早いもので、そこにはもう不審な人影はなかった。

くそ、確かに手応えはあったのに逃がしたか...変質者、侮りがたし...

イルカは興奮と憤怒でとても眠る事が出来ず、まんじりともせず一夜を明かした。翌朝一番、イルカはカカシの家の扉を叩いていた。昨夜不審人物を見なかったかどうか、訊いてみたかったのだ。カカシは寝惚け眼を擦りながら姿を現した。その姿に、朝早くから起こして悪かったかな、とイルカは突然申し訳無い気分になった。とその時、カカシの右頬に大きなガーゼが貼り付けられている事に気付いた。

あれ...?昨夜ご飯を一緒に食べた時はこんなのしてなかったよな....

イルカは不思議に思って、「カカシ先生、ここどうしたんですか?」と右頬を指差して見せた。カカシは少し恥ずかしそうな顔をして、「ああ、昨日お風呂に入った時鬚剃ってたら、手元が狂っちゃって...」と答えた。「ひげ...ですか?」イルカはカカシの返事に思わずカカシの顔をジロジロと見つめてしまった。カカシの顔は肌目が細かく、鬚の毛穴のようなものが見当たらない。

そう見えるだけで、意外に毛深いのかなあ...?

イルカは首を捻りながらも昨夜の出来事をカカシに説明した。カカシは大人しくそれを聞いた後、「ほら、俺の言った通りでしょう?イルカ先生は隙がありすぎるんですよ。」と、したり顔だった。そんなカカシのお説教に、今日はしおらしく首を垂れてしまうイルカだった。急に消沈したイルカを思い遣るように、カカシが優しい声で言った。

「そうだ、今度俺がイルカ先生の部屋で寝ずの番をしてあげますよ。だからもうそんなに心配しなくても大丈夫ですよ?」俺ってば強いですから!何と言っても上忍で写輪眼ですしね!

カカシの申し出に、「ええっ!?」とイルカは思わず悲鳴のような叫びを上げていた。

「そ、そこまでしてくれなくても...俺だって男ですし、平気ですよ。そ、それよりも、俺、やっぱり警察にいきます!」

幾らなんでもパンツ泥棒の変質者如きに里の上忍の手を煩わせるなんて、あってはならないことだった。難易度の高い依頼は数多く、上忍への需要に対し供給が追いついていないのが実情だ。
しかし、カカシは全く引く様子は無かった。

「いいえ、警察なんて当てになりません!俺が!イルカ先生を守ります!!」

グッと親指を突出してポーズを決めるカカシに、イルカは最早何も言う事が出来なかった。

確かにカカシ先生の申し出はありがたいけど...寝ずの番なんかして、次の日の任務に支障があったら...

イルカは真面目にカカシの事を心配していた。そして見当違いにも、そこまで俺の事を気にかけてくれて本当にいい人だな、と一人心温まっていた。少し変だけど、と小さく付足しながら。

その日イルカは珍しく仕事が早く終って、残業をせずに済んだ。夕飯の買い物客で賑わう商店街を歩きながら、そうだ、たまには俺がカカシ先生にご馳走してあげようかな、とイルカは思いついた。最近はいつもカカシの夕飯のご相伴に与っている。しかも食べる量は自分の方が断然多いのだ。それに今度は変質者を捕まえてくれると言うし。

「気持ちだよな、気持ち。」

イルカはそう独り言ちながら、馴染みの八百屋や魚屋に立ち寄った。

カカシ先生は何が好きなのかな。

イルカがそんな事を思いながら真剣に手にした茄子を見つめていると、「何してるんですか?そんなに熱い眼差しで茄子を見つめて...」と揶揄するような声がした。イルカが振り返ると、そこにはニッコリと三日月に目を眇めて笑う、カカシの姿があった。

「カカシ先生、丁度良かった!今日はいつものお礼に、俺が夕飯をご馳走しますんで、何がいいです、か....」

イルカは言いかけて、カカシが既に何か袋を下げている事に気付いて、がっかりしたような顔をした。

「ああ、もう買い物しちゃったんですか...?」

するとカカシは慌てたように首を横に振って、「いえ、これはあの、サンマ、サンマを2匹買っただけなんです!他のおかずはまだ考えてなくて...あの、サンマは提供しますから...俺、俺、イルカ先生のご飯が食べたいです!!」と必死の形相で捲し立てた。
まるで泣きそうな様子のカカシに、イルカは「はあ、勿論それは構わないですけど...」と言いながら思わず笑ってしまっていた。上忍なのに、写輪眼なのに、やっぱり子供みたいな人だとイルカは可笑しくなってしまったのだ。

「あっ、なんで笑うんですか?酷いですー。」と口を尖らせるカカシに、
「いや、期待してるみたいなんで言っときますけど、俺のメシは美味くはないですよ?」とイルカは苦笑しながら答えた。
そんなイルカの言葉にカカシは意外な事を言った。

「いいえ、イルカ先生の料理は美味しいです。俺のなんかよりずっと。以前ね、イルカ先生、俺にお弁当分けてくれたでしょう?」

イルカは思わずきょとんとした。そんな事、全く覚えていなかった。
そんなイルカの様子にカカシは少し笑って、イルカ先生は忘れちゃったかもしれないけど、と続けた。

「お昼にナルトと俺が出来合いのパンを買って中庭で食べてた時、イルカ先生が丁度お弁当を持ってやって来て...最初はナルトにね、そんな物ばかり食べて栄養が足りないだろうが、大きくなれねえぞ、ってどんどん自分の弁当のおかずを分けてて....そしたら今度は俺に向かって、カカシ先生もそんなんじゃ足りないでしょ、だから細っこいんですよ、とか言いながらおかずをヒョイヒョイ分けてくれて....結局イルカ先生、自分の分が殆どなくなっちゃったんですよ。...その時の味が忘れられなくて。」

カカシの言葉にイルカは顔を赤らめた。俺はそんな事をしていたのか、なんて図々しいんだととても恥ずかしくなった。
そんなイルカを他所にカカシは屈託無い笑みを浮かべた。

「俺ねー、ずっと戦場だったから、食べ物もまともなもの食べたこと無くて...いつもね、血に染まった赤いご飯とか食べてたんですよ〜それ、まともなほうで。そんな飯でも皆奪い合いでした。生き延びるには食べなくちゃいけないから。だから俺にとって食事って、ただ腹を満たすためだけの物で、美味しいとか感じたことなかったんですけど...」

あのイルカ先生の焦げた卵焼きは、とってもおいしいって感じたんです。

イルカは言葉を失った。何と答えていいのか分からなかった。アホだなあ、この人と思った。そんなに食べたかったら、言えばよかったのに。あんなので良かったら、何時でも作ってあげるのに。
イルカは何ともいえない気持ちになりながら、「でも俺はカカシ先生の作るメシの方が好きですよ。」と言った。

「だから、これからは二人で半分ずつ、作って食べましょう。」

イルカの精一杯の言葉に、カカシは瞬間驚いたような顔をして、次には嬉しそうに物凄い勢いで首を縦に振った。