エピローグ


夢の中の男はカカシだった。

俄かには信じられない話だったが、お互いが話し合えば話し合うほど、それが真実だと判った。
カカシとイルカは共通の夢を見ていたのだ。
どうしてそんな不思議なことが起こったのか、今でも真相は謎のままだ。
イルカがそのことについて言及すると、カカシはいつも決まって「愛ですよ、イルカ先生。愛の奇蹟です。」と、全て分かったような口調で答えるのだった。不思議といえば思いが通じ合ってからというもの、二人は共通の夢を見なくなった。カカシは始めのうちこそ残念がっていたが、イルカの家に入り浸ることをイルカが容認するようになると、不平を言わなくなった。

「だって、こうして毎日イルカ先生といちゃいちゃ過ごせるなら、夢と一緒じゃないですか〜!」
いや、夢なんかよりずっといいし。ねえ、イルカ先生?

そう言いながらカカシの手が淫らな動きをして、イルカの肌の上を滑る。

「ちょっと止めてください!俺、明日早いんですからっ!」イルカが慌ててカカシの手を止めようとする。

だが時既に遅く、イルカの手は紐のようなもので縛り上げられていた。

「あ、あんた、何縛ってんだ!?へ、変態っ!!解きやがれ!」無駄にチャクラが練りこまれた紐は簡単に解けそうに無かった。

「う〜ん、夢ではもっといやらしいことしてたじゃない。それに現実にスルともっと気持ちいいですよ♪」

カカシは嬉しそうに抵抗できないイルカの肌を弄った。

問題はそこだった。夢は所詮夢なので、何度貫かれようと後日その身が軋むようなことは無かった。それが今は毎日の濃ゆい情交に、イルカの身体はガタガタだった。しかもカカシの言う通り、現実に施される愛撫は夢の何倍もいいのだ。結果、イルカは身も世も無く喘ぎまくることになり、それが更にカカシを煽って夢中にさせるという悪循環。その上最近は夢の中で散々された恥ずかしい行為の数々まで強要される始末だ。
「あんたがこういう人だって、忘れてましたよ!」イルカはそれでもプイと顔を背けて、ささやかな抵抗の意を示した。
今まで疑問に思いながらも、日々流されて訊けずにいたことを今訊いてやる!!

「あんたは変態だ!!人非人だ!大体まだ恋人でもない時に、酔いつぶれて意識の無い俺に悪戯してただろーーーー!!」
そう。あの夢の中の男と間違ってイルカがカカシに告白した時。あの時気がついたらもう。だからイルカは夢の中だと勘違いしてしまったのだ。

「え〜、イルカ先生が好きですよ、って俺の腰に手を回したからいいのかな〜と思って。」人聞き悪いなあ。カカシがニヤニヤと笑う。

違うだろ、その前の段階での話だろ!イルカは突っ込もうとするのだが、もうつまらない話はお終い、とばかりにカカシがイルカのものを握った。

「ヒゥッ...!」突然の刺激にイルカが声を詰める。

「それでも、こんな変態を好きなんだよね?イルカ先生。」

傲慢な物言いにイルカはいつも切れそうになるのだが、何故か抗えない。そんな横柄な態度でいながら、カカシの瞳は以前と同じだからだ。切なく自信無げに揺れる瞳がイルカに強請ってくる。本当に俺のこと好き?好きでいてくれてる?

弱いなあ、とイルカは思う。傲慢に振舞っているかのようでいて、いちいちイルカの気持ちを確認してくる。だから過度のセックスも拒めない。カカシがそうすることで、イルカが腕の中にいることを確認したいからだとわかっているから。

馬鹿だよな、カカシ先生は。わかっていて甘やかす俺も。

イルカは苦笑した。

「俺を好きなんでしょう、イルカ先生。」返事を焦れるカカシにイルカは体を押しつけた。

あんたも俺のことが好きなんでしょう。
こんな風に歯止めが利かなくなるほど。
こんなにきつく縛り、始終その腕に捕らえていなくては不安なほど。

そんな必要は無いのだと、これからカカシに分からせていくつもりだ。
それまでは呆れるほど囁いてやろう。
あんたが求めるように。
その耳元で。


「好きですよ、この変態野郎がね!」



夢の続きを、あなたと。




                             終
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