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食べるだけ食べてしまえば他にする事も無く。
でも、何となく帰り難くて、イルカに勧められるままに居座ってしまう。
寝ているのにも飽きたカカシはイルカが持ち出して来た座椅子に寄り掛かる様にして寛ぎながら宿題の丸付けをするイルカを眺めていた。
「カカシ先生、どうしました？」
退屈ならテレビでも着けましょうか
「い・いえ。」
ぼんやりとイルカの横顔を眺めていたカカシは、その言葉に慌てて首を振る。
何か話題を・・・と焦って少し疑問に思っていた事を訊ねてみた。
「その、コレ、イルカ先生のなんですか？」
着替えさせられた浴衣を引っ張りながら言う。
物の価値が良く判らないカカシでさえ上物だと感じる、着心地の良い浴衣。
不思議に感じたのは今イルカが纏っている物の色違いでありながら…余りイルカに似合う物とは言い難かったからだ。
だが間違い無く新品である。
「いいえ。俺のではありません。」
あっさり、返される。
「じゃ、来客用？」
「違いますよ。」
首を傾げるカカシに、苦笑してイルカが仕事の手を休める。
「それは・・・在る人に着て貰いたくて作りました。」
似合いそうな色の反を選んで。出来たら揃いで着たかったから対で。
「え・・・」
優しく笑み綻びながらの科白に、カカシはすぐに反応出来なかった。
「イルカ先生、その人って・・・」
恐る恐る尋ねるカカシに小さく笑ってイルカが続ける。
「片思い、なんですけどね。」
随分昔に知り合って。俺はその時からずっと好きなんです。
「相手は俺と出会った事すら覚えていないみたいなんですけど。」
くすりと、少し哀しげにイルカが笑う。
「でも、イルカ先生・・・凄くモテるって。」
カカシの言葉に一瞬驚いた様な顔になったイルカが次には苦笑する。
「あぁ、『夫にするのに向いた男』ベスト1だそうですね。」
「へ？」
変な事を聞いた気がしてカカシの目が丸くなる。
「知らなかったんですか？くの一の方々のお遊びですよ。」
アンケートを採って里の忍の人気表を作るんです。カカシ先生も確か３位に入ってましたよ
「はいぃ？！」
とんでもない情報に絶句する。そんなの聞いた事無い。
「だからお遊びです。」
本当に想う相手ならそんな風に語らないでしょう。騒いで盛り上がる為の人身御供ですよ。
笑うこの人は本気でそう思っているらしい。
違うと思うけど、なぁ
自分はそうかも知れないが、少なくともこの人に関しては本気の方が多いと思う。
こんなに心地良い人、だから。
心地良い…
「あの、イルカ先生。それで、その相手って・・・」
何だか判らないモノが、胸の中から沸き起こるのを感じて、カカシは慌てて話題を変えた。…自分自身の気を反らす為に。
却って悪くなっていまったけれど。
話を蒸し返すカカシに、僅かにイルカの目が眇められる。が、すぐに柔らかな表情に戻った。
「…本当に片思いなんですよ。向こうは俺の気持ちを知りませんから。」
「それなのに好きなんですか？」
「はい。」
そう、目を細めて自分を見るイルカが…浴衣を通してその相手を見詰めている様で。
急に堪らなく気持ちが悪くなって来たカカシであった。
此処にこのまま居ると余計気分が悪くなりそうで。カカシはふらりと立ち上がると
「・・・帰ります。」
「え、あの・・・」
イルカが何か言う前に、其の場から掻き消えた。
「あら、カカシ何してんの。」
明日は休養日、と馴染みの店で痛飲した紅は道端に落ちている同僚を見付けた。
珍しく浴衣なんぞ着てぼぅっとしている。
「何呆けてるのよ、写輪眼のカカシともあろう人間が。」
「・・・イルカ先生、好きな人居るんだって。」
「は？」
脈絡の無い会話に、一瞬眉を顰めた紅だったが。次には思い至って話を促す。
「あの先生に？聴いた事無いわよ。」
「・・・片想いだって。相手は自分の事知らないって。」
何処か遠い処に視線を向けたまま淡々と言うカカシは、自分が今何を語っているのか判っているのだろうか・・・
「でも、好きなんだって・・・」
虚ろな瞳に、急にぷわりと水滴が湧き上がる。それは零れて、ぽろぽろと頬を伝った。
「何か変・・・なんだ。苦しくて、気持ち悪くて・・・」
毒でも盛られたのかな
ぽろぽろ泣く上忍に紅はそっと手を伸ばし・・・
胸倉掴むと上忍くの一の背筋を遺憾無く発揮して高々と差し上げた。
ガシガシ・・・思いっ切り揺さ振る。
「何、恍けた事言ってるのよカカシ！今日び、アカデミー生だってそんなトロい事やって無いわよっっ」
ブンブンブンブン 脳味噌が攪拌されそうな勢いである。
「好い加減に自覚しなさいっ！アンタ、イルカが好きなのっ惚れてるのっっ」
耳元で大声で叫ぶと、次にはポイッと放り出される。
「判った？」
腰に手を当ててフンと鼻息も荒く言われれば、流石に正気に返ったらしいカカシが驚いた表情になる。
「俺が、イルカ先生に？」
「そうよ。」
全く。典型的な片想いの行動取ってる癖に自覚が欠片も無いんだから。しかも自覚さえしないうちに
「失恋ですって！」
それも相手も片想いの、気持ちすら伝えて無い相手に。
「あんた何、不戦敗してんのよっ」
仮にも上忍でしょ 戦いもせずに敗れてどうするのよ
「・・・でも、イルカ先生ずっとその人の事好きだったんだって。」
この浴衣もその人の為に誂えたって言ってたし。
カカシの言葉に、少し表情を変えた紅だったが。再び腕を伸ばすと座り込んでいたカカシを引き起こし、蹴り出す。
「先手必勝！気持ちも判ってくれない相手より本気で自分を想ってくれる相手の方が良いに決まってるでしょっっ」
早く告白して来なさい！
背中に一発、蹴りを入れられ
「はいっっ」
カカシが転がる様に走り出した。
「ホント、馬鹿・・・」
『想い人』の為に特注した物を、普通他人に使わせたりはしない。
それにあの浴衣は矢鱈と『カカシに似合って』居た。
盛大な溜息をついた紅は、すっかり酔いの冷めてしまった身体を今一度繁華街の方へと向けた。
アスマでも捕まえて、今の話を肴に飲んだくれてやる・・・と心に決めて。
無論カカシのツケ、でだ。
「おっお話がありますっっ」
先刻飛び出して来たばかりの家の玄関口で、しゃちほこ張った上忍が…叫んだ。
終
恋愛なれないうぶなカカシに意外にもてもてのいい男イルカという私のリクエストを、ちゃっきさんが美味しく料理してくれました〜（＞▽＜）どうです、このイルカの男っぷりのよさは！！（恍惚〜）そしてどうです！？カカシのこの見事なお馬鹿っぷりは（くす）！！う〜ん、理想的カカイルの姿ですね！（え？）実は続編があるんですよ〜ｖｖこれもまた折を見てちゃきっさん宅からごっそり根こそぎ・・・持ってきます（笑）ちゃきっさん、いかしてる★作品をありがと〜！！強イルカ仲間万歳！
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