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昨日の差入れの礼を、と思うのだが美味い店なんて良く判らない。
だから紅に訊いてみる事にした。
「え、イルカちゃんの料理食べたの？」
俺が事情を話すと紅が露骨に吃驚した。
「どうした？イルカ先生の御飯食べたら変なの？」
料理上手で評判なんでしょ？ナルトとサスケはしょっちゅう食べてるみたいだし
あの人の良さそうな先生なら皆に食べさせているんじゃないの
そう言うと紅が呆れた顔になる。
「子供は別よ。…料理の腕が知られてるからこそ、滅多に食べさせてくれないのよ。」
何でも、前に『食堂のおばちゃん』やった時から皆が料理を頼む様になったらしい。
だが、その余りの多さに収拾が付かなくなった為今は滅多に作らないんだそうだ。
ナルトやサスケ、他にも教え子達は割と食べているらしいが
「7班絡みとは言え、なんか納得出来ないわ〜。」
不満そうな紅に
「アンタ何、嬉しそうな顔してるのよ。お店、教えないわよっ。」
と睨み付けられた。
「え、俺嬉しそう？」
「…物凄く嬉しそうよ。ほら、洒落てて料理の美味しいお店教えてあげるからさっさとデートに誘ってらっしゃいっ」
「でっデートって何だよ紅っっ」
俺が喚くのに、紅は愉しそうな高笑いをしながら行ってしまう。
変な事を言われて驚いた所為か、妙に顔が熱い。赤くなっているかも知れない。
…イルカ先生に変に思われなければ良いけれど。
しかし、残念ながら俺はこの日、イルカ先生を誘えなかった。
この後すぐ、上忍の任務が入ってしまったからだ。
「う…」
致命的では無いが、ただ動くのには少し邪魔な傷。
里にはどうにか辿り着いたものの、人の居る場所まで行けそうにない。だがチャクラの方も限界で連絡鳥も飛ばせそうになかった。
里内で行き倒れたら結構間抜けだよなぁ
せめて息のあるうちに誰か拾ってくれないかな…
そう、考えたら頭に黒髪に一文字傷の在る顔が浮かんだ。
あの人に拾って貰いたい
なんだかそう、思った。そうしたら少し気力が出て前にナルトに教えられたイルカ先生の家の方へと進もうとする。と、
「カカシ先生・・・？」
「あ、イルカせんせ・・・」
倒れそうになった俺をあの人が支えてくれる。
俺は運が良いようだ。あの人が、ちゃんと拾ってくれた…
「え…、あれ。」
目覚めたら見知らぬ場所だった。
見覚えの無い天井は、どう見ても民家のそれで。
「気が付かれましたか」
隣から聞こえた声に…声？！
反射で起き上がると同時にクナイを抜…クナイが無い！？
ので手で首を狙う。
「カカシ先生、そんなに動くと傷に障ります。」
抱き込んだ相手の穏やかな声に、漸く気付く。
「あれ…イルカ、先生？」
「はい。」
抵抗もせず捕えられている人に、漸く意識を失う前の事を思い出した俺は慌ててその身体を離した。
「すみませんっ」
焦って謝る。助けて貰ったのに首、締めちゃったよ、俺！？
「いいえ、こちらこそすみません。手当てする時に勝手に武装解除してしまって。」
驚かれたでしょう
頭を下げられて恐縮する。見ると、脇腹の傷には包帯が巻かれもう殆ど痛みも無い。
「イルカ先生が手当てして下さったんですか？」
「はい。毒も無いようでしたし傷事体も浅かったので」
あぁ、連絡は入れて置きましたからごゆっくりなさって下さい
そう言って柔らかく微笑む人は、確か医療班の手伝いもしているんだった。
「何か召し上がりますか？」
「あ、はいっ」
慌てて頷くとふわりと笑って部屋を出て行く。
その背をぼんやりと見送りながら自分の失態に首を捻る。
幾ら消耗していて、おまけに深手を負っていても装備を外されて気付かない程気を抜いた事は今までなかったのだ。
医療班の人間にだって意識の無い時は触らせないと、悪名高かった俺は何処に行ったのだろう。
悩んでいる間に良い匂いがしてきて、雑炊を持ったイルカ先生が戻って来た。
「どうぞ。…熱いですから気を付けて。」
蓮華で掬って冷ましながら食べる。やっぱり美味しい。
堪能しながらふと、視線を上げるとイルカ先生と目が合った。
優しく微笑まれて、急に身体が熱くなる。
と、兎に角冷める前に食べてしまおう こんなに温まる良い雑炊なんだし
慌てて目を伏せると食べる事に専念した。
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