宴の後その3

「あっはっはっ!くすぐったい…」
臍にカカシの舌を差し込まれ、ぺろぺろ舐められたイルカが笑いながら身を捩る。
腹に描かれた顔も奇妙に捩じれる。
なんだかイルカの腹にできた大きな人面瘡(高階りょうこ作/「笑う人面瘡」参照)を愛撫しているような錯覚に、カカシは背筋をゾクゾクさせた。

イルカ先生の身体にあるものだったら…ほくろでも傷跡でも人面瘡でも…なんでも可愛い…!!!!
イルカ先生だったら、何でも構わない…!

イルカへの愛の深さを再確認しながらも、だがその一方で「相棒」認定された腹の顔が憎くて堪らない。
愛しさと憎しみと。相反する気持ちにカカシは身悶えた。その気持ちのままに、ぴちゃぴちゃと腹を愛しげに舐めつつも、ついつい空いた手でにっくき脂肪をぎゅうぎゅう抓り、揉み出し痩身を加えてしまう。
「あだだだ…っ、ちょっ、カカシせんせ…い、痛っ…あ、あぁ…っ」
愛撫の傍らで容赦なく脂肪を揉みしだかれ、イルカが苦悶の呻きとも快楽の喘ぎともつかぬ声を上げた。
「イルカ先生…っ」
可愛い。でも憎い。もう、何がなんだか分からなかった。
カカシは頭を霞ませながら、己の固く張り詰めた息子を取り出した。
既に精液を垂らしている先端を、ぐっとイルカの臍に押し付ける。カカシは腰を叩きつけるようにしてその窪みを己のもので突き捲くった。
「ああ…っ!な、なにするんですかぁ…!」
酔っ払いだったイルカの目が急にマジになる。
「つくねや、一升瓶しゃなくて、俺、の、咥えてよっ…」
「咥えて、って、そこ、口じゃ…あぁ…っ!」
カカシに揉みしだかれた所為でよりまろやかになったイルカの腹肉が、イルカが暴れる度に、カカシの息子を包み込むように刺激する。
「く…っ、」
カカシはあまりの気持ちのよさに、イルカの腹の上に精液を撒き散らした。
びしょびしょの人面瘡…じゃなくて腹顔。カカシの熱い汁にマジックが滲んで更に微妙さを増している。
先ほどは憎しみすら覚えたそれに、今カカシは憐憫のようなものを感じていた。

お前はこんなに俺を気持ちよくしてくれたのに…俺と来たら、燃焼系で抹消しようなんて…

反省してこの腹肉を大切にしてやろう、とカカシが荒い息を吐きながら、
「今からお前は俺の相棒にもなったよ…v」とご機嫌で腹顔の頬をぷにぷに突つく。
腹顔への嫉妬はとりあえず解決したが、イルカが宴会芸として半裸を晒した事に対する怒りと悲しみは未解決のままだ。

これはきつくお灸を据えねば…!

どういうお灸を考えたのか、カカシが険しくもケダモノしい顔つきでイルカのズボンに手をかけた瞬間、
今度は「う…っ、」と突然イルカが泣き始めた。
「ど、どうしたの?イルカ先生…!?」
慌てるカカシの身体の下でイルカはぼろぼろと涙を零した。
「カ、カカシせんせいの相棒はおれでしょう…?俺だけですよね…?こ、こんな腹の顔じゃないですよね…っ?」
カカシは思わず唖然とした。
流石酔っ払い、自分の発言は棚上げで、カカシの言葉を咎めてくる。理論が破綻している。なんて勝手な。
でも。

すごく嬉しい…だって自分とおんなじ事考えたって事は、俺が思うのと同じくらいイルカ先生も俺を好きって事でしょ…?

カカシは感激のあまりぎゅうっとイルカを抱き締めた。
「勿論です、俺の片割れ、人生の相棒はイルカ先生だけです…!」
むちゅっと唇を押し付けると、誘うようにイルカが薄く唇を開ける。カカシは舌を滑り込ませると思う存分舌を絡み合わせ、イルカの口腔を堪能した。
「んぅ…カカシ、せんせい…」
「イルカ先生…好き、イルカ…大好き…ほんとに俺にはイルカだけ…」
などと睦言を楽しみながら、我慢の悪い息子がせっつくままに、カカシが鼻息荒くイルカのズボンをズリ下げようとした瞬間、
「でもそれだとやっぱり俺の腹の顔も可哀相だなあ…」
イルカが神妙な顔つきで奇天烈な事を言い出し、むくりと身体を起こした。
「はあ…?イルカ先生、何言って…」
行為を中断されて、情けない顔をするカカシにイルカはにっこりと微笑んだ。
「俺の腹顔に、相棒を作ってやってもいいですか…?」
微笑むイルカの手には黒い油性マジックが握られていた。


その晩イルカの手によって、カカシは腹にマジックで顔を描かれた。
イルカに絵心は皆無で、イルカの腹に顔を描いたのは別の同僚だった事を知った時には、ピカソも吃驚のそれはそれはシュールな顔がカカシの腹の上に出来上がっていた。カカシが動く度にイルカは腹を抱え口から涎が垂れるほど笑い転げ、情事どころではなくなってしまった。
「カカシせんせい、腹芸の才能ありますよー」
イルカに結構真剣な顔でそう言われたが、勿論嬉しくもなんとも無い。
それでも、
「お腹も仲良しですねえ、」とイルカが自分の腹にすりすり腹をくっつけてくると、微妙に幸せな感じがした。

俺って本当にイルカ年生が好きだなあ…
イルカ先生も、ほんっとうに俺の事が好きなんだなぁ…

カカシはその幸福に酔い痴れた。
その後も自主的に腹芸を披露したりしてみたが、素面のイルカは冷ややかだった。
「今時腹芸なんて、萩本○一だってもっと新しい事をしますよ…」
自分の事は棚上げでそんな事を言う。
だけどそんな事を言いながら、イルカは諦めたように溜息をつき、自分の腹にもきゅっきゅとマジックで顔を描く。
嬉々として腹顔を腹にくっつけてくるカカシの姿に、やはり微妙に幸せを感じているらしい。
ビバ似たもの夫婦。


宴の後・終わり 

「君たちキウイパパイヤマンゴーだね!」その1に続く