(19)

それからカカシの拘束は前にも増して強くなった。片時も俺を側から放さず、いつも手を伸ばせば届くような範囲にいる様に強要された。以前は参謀クラスの機密会議等の際には俺はカカシの天幕に残されていたが、そんな場違いな席にもカカシは俺を連れて行くようになった。誰もカカシの振る舞いに呆れた表情を浮かべこそすれ、口に出して異議を唱える者はいなかった。カカシの愚行の付けは全て俺に集約され、皆の俺に対する侮蔑は増すばかりで俺はあらゆる戦場において孤立していた。
カカシは俺に鞭や拷問のような暴力を振るわなくなっていた。何時の間にかカカシの欲望を吐き出すためだけの行為が、俺の快楽を引き出すための行為に変わっていた。
それはカカシの新しい趣向なのか。今度は力ではなく、執拗な愛撫が齎す悦楽で俺を蹂躙しようとしているようだった。それは俺には恐ろしい事だった。言い訳ができなくなる。力で捻じ伏せられているだけで、俺は本当はこんな行為は本意ではないのだと、言い訳できなくなる。
達しそうになるペニスの根元をきつく指で塞き止められて、体中を執拗に舐め回された。恥ずかしい狭間にカカシが顔を埋め、ぴちゃぴちゃと襞を丁寧に舐めあげると、嫌だという意思に反して後孔がもっと奥への刺激を望むようにひくひくと開閉を繰り返すのが分かった。つぷりと突き通される指先に待ち侘びたように腰が丸く揺れる。俺は堪らなかった。自分が酷く嫌らしい存在になってしまった気がした。先端からは堪えきれない淫蜜がだらだらと零れ落ち、俺の口からは甘い喘ぎのようなものが漏れていた。ちゅぷちゅぷと淫らな水音を立て抜き差しされる指先が、焦らすような弱い刺激で前立腺の裏を擦る。重く痺れるような熱だけが腰に溜まっていく。俺はおかしくなってしまいそうだった。

ね・・・・気持ちいい・・・・?

カカシが熱っぽく囁きながら、耳孔を音を立てて舐る。俺は電流が走ったかのような刺激にビクビクと体を震わせた。耳を弄られるのがいいなんて自分でも知らなかったことだった。カカシはそこに舌先を突き入れて丹念に愛撫する。俺はあまりの快楽にすすり泣いていた。

丁寧で執拗で。そしてどれもがもどかしい。
もっと強い刺激が欲しかった。溜まった熱を全て解放するような強い刺激が。

そんな俺を見透かしたかのように、

俺のが欲しいの・・・・?あんたのここに、俺のを入れて欲しい・・・・?

カカシが意地悪く指先で中の感じるところをグリグリと擦りながら、淫猥な答えを強請る。
俺は涙を零しながら歯をきつく食いしばった。答えたくなかった。

カカシは体だけじゃ飽き足らず、俺の魂の全てを蹂躙し屈服させようというのか。

ずっと鞭打たれたままの方がましだった。恐怖と暴力で支配してくれた方がずっと。言うものかと、俺はあらん限りの精神力を駆使して我慢する。

俺は淫売じゃない。突っ込まれてよがってなんかいない。

思いながら涙がどんどん零れる。カカシはそれを快楽の涙と勘違いして、嬉しそうな顔をして俺の涙を舌先で舐め上げる。俺の中の指先が更に一層もどかしく肉壁を刺激する。俺は溜息のような喘ぎを漏らした。固い決意を嘲笑うかのように肉体が陥落し始めていた。自分の全てをも巻き込んで、奪っていくように。

入れて欲しいって言わなくちゃ、いつまでもこのままだよ?

カカシは指を引き抜くと、閉じきらないそこに浅く自分の先端をめり込ませる。熱く脈打つ、その猛った存在を少しだけズズッと押入れ、またすぐ引き抜く。襞の部分をぬるぬるとした先端で愛撫されると、俺は下腹の辺りから何か熱いものが込み上げてくるのを感じた。それが脳をも痺れさせ、色々考えていた俺の頭の中は真っ白になる。それでも俺は必死に耐えていた。耐え抜くつもりだった。

嫌だ・・・俺はこんな・・・・っ

浅く抜き差しされて俺の体がブルリと震えた。言って、とカカシが更に強請る。

欲しいんでしょう、俺が。あんたの体は欲しいって言ってるよ。ね、言って。言ってみせて。

ふと合わされたカカシの視線に何か良く分からない熱が胸を襲った。
何処か切なく心細いような瞳。何故そんな顔をするのかと思った。何処かおかしい。この前から何かが違ってしまった。
体に溜まっていく刺激とはまた別の熱が俺を震わせていた。堪えられない熱にどうにかなってしまいそうだった。

こんなの絶対に嫌な筈なのに。

・・・・欲しい、です・・・・

思わず零れ落ちた言葉に、俺は全てを明け渡してしまった絶望と―――それとは別のよく分からない感情を抱いていた。

 

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