宴の後その2

アンダーを捲ったその下には、イルカの臍を中心になんとマジックで描かれた微妙な顔があった。
イルカは唖然とするカカシを前に、腰を回すように運動させて少々ぷるんとした腹の贅肉をうねらせる。
すると腹に描かれた微妙な顔が更に微妙な感じに歪んだ。
イルカはその歪んだ顔に自分で噴出しつつも、
「カカシ先生に身体でお詫びしましゅっ…ごめんなさあいっっっ!」
無駄に中忍の腹筋を使って、腹の上に描かれた口をパクパクさせお辞儀する。まるで腹に描かれた顔が謝っているようだ。

身体でお詫びって…は、腹芸で謝るって事だったのか…!

カカシはあまりに時代を感じさせる芸風に、一瞬度肝を抜かれた。一気に艶やかな雰囲気が霧消する。
腹芸。それはかつて一世を風靡した宴会芸だが、今時それはないだろう。前時代的な萩本○一だって、もっと新しい芸風の筈だ。
いや、そんな事よりも。
「イ、イルカ先生、あんたまさか今日の納涼会で腹芸を披露したんじゃないでしょうね…!?」
カカシは顔を真っ青にしながら、恐る恐るイルカに尋ねた。
大勢の前で、まさか自分の奥さんが半裸になって淫らに腰をくねらしていたなんて。
想像しただけでカカシはくらくらと眩暈がしてきた。嫉妬と絶望で目の前が暗くなる。

違う…違うよね…!?イルカ先生はそんな事していないよね…!!!???

カカシの深刻さに気付かずに、イルカは腰をくねらせ腹芸で答えた。
「もちろん、腹芸をしましたよぉ〜!しょりゃあもう、大うけれしたよ!な?相棒!」
イルカが上機嫌で自分の腹をピシャリと叩くと、腹の顔が頷いているかのようにぷるぷると揺れる。
相棒と呼ばれた贅肉にまで嫉妬して、カカシは一瞬カッとした。

イルカ先生の相棒は俺だ…っ俺が伴侶だ…っ!くそう、燃焼系でお前を抹殺してやるからな…!

何だかよく分からない事に闘志を燃やしていると、イルカがのほほんと続けた。
「みんにゃ俺の腹顔の頬の部分を抓ったり、」
「ええ…っ!?」
「みんにゃ俺の腹顔の口に、つくねや刺身を突っ込んだり、」
「えええ…っ!!??」
「腹の口にしゃいごは一升瓶まで咥え込ましゃれて…しゃけが零れてびしょびしょになっちゃいました〜!」
「〜〜〜〜!!!!!!」
想像以上の惨事に、遂にカカシはがくりと身体を折ってその場に伏した。

鋭敏な柔肌を抓られたり、口に何かを突っ込んだり…咥え込まされたり…それで最後はびしょびしょに…

別にそれはイルカの腹に描かれた顔が受けた受難だと分かってはいるのだが、受難を受けたのが腹でも我慢ならなかった。

この至福の肉感を俺以外に知ってしまった奴らがいるなんて…!
ああっ、気が狂ってしまいそうだ…!!!酷いですよイルカ先生…!!!

カカシが洪水の様に涙を流す傍らで、鼻歌交じりにふんふんとイルカが腹芸踊りを踊る。
淫らに揺れる腰。腹の上に描かれた微妙な顔が誘うように口を開けている…
よく見ると可愛い。さすがイルカ先生のお腹。さすがイルカ先生の腹芸。
皆がつくねを突っ込みたくなるのも頷ける…俺も何か突っ込みたい…びしょびしょに濡れさせたい…
嫉妬と絶望と、愛しさと憤怒で、カカシは何がなんだか分からなくなった。
「ああ…っ!イルカ先生…っ!」
カカシはがばっとイルカの腰に抱きつくと、イルカの腹に描かれた口に夢中でちゅうっと口付けていた。

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