Friends番外「宴の後」その1

ガチャガチャガチャ。
玄関の鍵を開ける音がした瞬間、カカシは扉へとすっ飛んでいった。
音の主が開けるよりも早く、ドアボーイよろしく内側から扉を押し開けると、
「うわっ、とっと…カ、カカシせんせい、帰ってたんれすかあ。あぶないじゃないれすか〜急に開けないでくらさいよ〜」
開けられた隙間から、赤っ鼻のイルカが倒れるようにして玄関へと流れ込んだ。
鼻が赤いのは、出来上がっている証拠だ。
そう、イルカは今晩職場の納涼飲み会だったのだ。
カカシにすれば、そんな酔っ払い助平オヤジ大集合の飲み会に、愛しい奥さん(イルカ)を出席させるのも嫌だったのだが、持ち回りでイルカが幹事なのだと説明されて、しぶしぶ了承した。自分もまた、その日任務が入っていた所為もある。

イルカ先生は淋しがり屋で甘えん坊で、俺がいないと駄目駄目だから…っv
俺の留守中、納涼会が丁度いい気晴らしになるかもな…!

魔がさしたと言うのだろうか、何故かその時カカシはそう思ってしまったのだ。
それでもカカシはイルカの為に死力を尽くして任務をこなし、予定の日数を縮めて帰って来たのに。イルカと来たら…。
カカシは足元に座り込む酔ってぐでぐでのイルカを恨みがましい目で見詰めた。

俺は…俺はあんたに会えなくてこんなに淋しかったのに…っ、急いで帰って来たのに…っ!

「危ないのはあんたの方ですよッ、こんなに酔っ払って…!一体今何時だと思ってるんですか!?」
イルカはカカシの剣幕にも何処吹く風で、
「何時って…なんじだったかなあ…?」
肥満児、オレンジ、デヴィッド・マッケンジー、と下手な駄洒落を続けながら、腕時計に目を遣る。
だが、その腕にある筈の腕時計が無い。
二人でディズニーランドに行った時に記念に買った、ミッキーとミニーのペアウォッチが…!
「ひいいい…!イルカ先生っ、あんたミッキーの腕時計は何処へ遣ったんです!?俺達の愛の証の一つが…っ」
取り乱すカカシの腕を取って、イルカはカカシの腕にしっかりと嵌められたミニーの時計を覗き込んだ。
「あ〜…もう三時れすか〜…早く寝なくちゃなあ、ハハハ…!」
「ハハハ、じゃないでしょう!?あんたって人は…っ」
邪気なく笑うイルカにカカシはムッとしながらも、股間をむらっとさせた。
酔ったイルカは赤い顔をしてとても可愛い。吐く息は酒臭いけど、それもマニア心を擽る。
悲しいのにおかしな気分になる。
涙と共に鼻血まで流してしまうカカシだ。
カカシはすんと鼻を鳴らしながら、鼻先をイルカの肩口に擦り付けた。ついでに身体を密着させて、固くなった股間をイルカの太腿にぐりぐりと擦りつける。
「俺の気持ちも知らないで…イルカ先生、俺に遅くなってごめんなさいの一言も無いの…?」
イルカ先生の馬鹿馬鹿と胸板を叩くカカシに、イルカは急に真面目な顔をしてすっくと立ち上がった。
ころりとイルカの膝から転がり落ちたカカシが抗議の声を上げる。
「な、なんですか、イルカ先生…急に酷いです!!!」
「すみません、カカシせんせい…おれ…」
そこまで言うと、イルカは突然ばさりと勢いよくベストを脱捨てた。
「え、何…ど、どうしちゃったの?イルカ先生…」
イルカの突然の振る舞いに、カカシは胸をドキドキ、股間をにょきにょきさせた。
大体いつもカカシが脱がせてばかりで、イルカから自主的に脱ぐなんて事は滅多にない。
そんなの薬を盛った時くらいだ。酔っているからだろうか?というか、何故突然脱ぎだしたのか…
その常に無い男らしい脱ぎっぷりにカカシが鼻血のシャワーを降らせていると、
「俺、身体でお詫びしみゃす…!」
更に駄目押しとばかりにイルカの口から考えられない言葉が飛び出した。

ええっ!?まじ…!?

あまりの驚きにカカシの息子も「本当!?」と確認するようにズボンの上部からニョッと顔を出す。
今まさにアンダーの上を脱ごうとするイルカの姿に、カカシの息子の顔が歓喜の熱い涙でぬるぬると濡れた。

酔っ払い万歳…!

カカシの快哉の叫びは、しかしイルカがアンダーを豪快に捲り上げた瞬間悲鳴に変わった。


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