土用の丑の日(Friends番外)


「イルカ先生、具合はどうですか!?しっかりしてください…!」
帰宅したカカシがバターンと物凄い勢いで玄関の扉を開け、弾丸の様に飛び込んできた。
物凄く心配そうな顔をしている。
「あ、カカシ先生、お帰りなさい…」
その騒々しさに、うとうととしていたイルカは薄目を開けて、布団の中から声をかけた。
起き上がろうとするイルカを、
「ああっ、無理しない〜で…!」
カカシが慌てて制する。
「イルカ先生は病気なんだから…!」
涙ぐむカカシを前に、

いや、病気じゃなくて、これはあんたのやり過ぎの所為だから…

イルカは一人心の中で突っ込みを入れた。
そう、イルカが床に臥せっているのは、カカシとの限度を超えた肉体コミュニケーションの所為だった。カカシは昼夜問わず、暇さえあればイルカに伸し掛かって来る。暇がなくても伸し掛かって来る。やり過ぎだとイルカは何度か抗議したのだが、
「え〜、だって新婚ですよ?仕方が無いじゃないですか、」
恥ずかしそうに頬を染めて口を尖らせるカカシに、

そうか、そうだよな…俺達新婚だもんな…

今やらなくて何時やる、となんだか妙に納得して、「それじゃ仕方ありませんね…」などと悠長に押し倒されるがままになっていたら、何時の間にか体重が15kgも減り、食欲もがたりと落ちていた。ふらふらの体に流石に危機感を感じて、

今日こそは意志を強固にカカシ先生を拒否しよう…!

自分に言い聞かせてみたりしたが、
「イルカ先生、好き…好きです…どうしよう、好き過ぎて堪んない…」
余裕の無い表情で唇を吸われ、腰骨を撫でられると、もう駄目だった。それだけで下半身が反応して、どうしようもなく欲しくなる。
それでも理性を総動員して、
「今日は駄目です…!」
とか何とか言おうものなら、目に見えてカカシがきゅうんと項垂れる。
その姿に、

このう、可愛いじゃないか…!

イルカも胸がきゅうんとしてしまって、結局済崩しだった。

俺も悪いんだよなあ…

肋骨の浮き出た胸を押さえてイルカは苦笑した。
そんなこんなで遂に三日前、仕事場で倒れてしまったのだ。体力の限界だった。
そのまま結局三日間休む羽目になって、イルカは猛反省をした。誰かに迷惑をかけるのは本意ではない。

これからは適度なセックスを心がけよう…。

イルカは心に誓った。幸い、仕事場で倒れたイルカを病気と誤解して、カカシはイルカの体を慮って手を出してこない。丁度いい、この間に体を休め、体力を取り戻そうとイルカは考えていた。

カカシ先生には悪いけど…

三日もしていない事は初めてで、すごく我慢しているんだろうなと無駄に理解できて、カカシが不憫でならない。

ごめんなさいカカシ先生…

心の中で呟くイルカの枕元で、べそべそ泣いていたカカシが涙を拭って、
「そうだ…俺、イルカ先生に精をつけてもらおうと思ってね…頑張ったんです…!」
何をとイルカが問う前に、腰に提げていた魚篭をどんとイルカの前に置いた。
「鰻…捕まえてきました!天然ものの方が美味しいし…今日は土用の丑の日なんです!これを食べれば、イルカ先生もすぐに元気になりますよ…!」
「カカシ先生…」
魚篭の中でうねる立派な鰻を見て、イルカは胸をじ〜んとさせた。
今日は七班の任務があった筈だ。それなのにその任務の後で、自分の為に鰻を獲りに行っていたのかと思うと申し訳ない気持ちと同時に、何処か面映い気持ちになった。
「あ、ありがとうございます…」
頬を赤く染め鼻先を掻くイルカに、
「え、いや、そんな…っ、お礼なんていいんですよ…!い、今すぐ料理しますからね…!」
カカシも顔を真っ赤にしながら魚篭を慌てて掴んだ。
しかし余程慌てたのか、魚篭をつるりと手から滑らせ引っ繰り返してしまった。その拍子に飛び出た鰻がイルカのパジャマの胸元からぬるっと入り込む。
「ああ…っ!?」
突然のぬめぬめとした感触に、イルカはビクビクと体を震わせた。
「イ、イルカ先生…っ!ご、ごめんなさ…」
カカシがあわあわとしながら、鰻を掴みだそうとイルカのパジャマの中に手を突っ込む。
しかし鰻は必死のカカシを嘲笑うかのように、手の中からつるつると逃げては、イルカの腹の上でくねくねと怪しく身をくねらせた。
「ああ…っや…っ…あぁ…っ!」
くすぐったい様な気持ち悪いような。なんともいえない感触にイルカは総毛立った。
「…っく…、イルカ先生、そんな色っぽい声出さないで、」
カカシが焦った声を上げる。
「色っぽいって、なんですか…あッ、やっ、何…!?」
イルカは鰻がくねくねと下半身に移動していくのを感じて、悲鳴のような声を上げた。
見るとゴムの緩んだパジャマ下に鰻が潜り込んでいく所だった。

ああっ、早くゴムを付け替えるんだった…!ウェストが締め付けられなくて楽だからって…放置しておくんじゃなかった…!

イルカは己の不精を激しく後悔しながらも、鰻を移動させまいとその体を掴もうとした。
しかし、それが逆に鰻をズボンの中に滑り込ませる形になった。
イルカの手に押される形で、鰻はズボンの中に入り込んだ。
「やぁ…っ!ああっ、は…、あぁ…っぅ…っ」
内股をぬめる感触がどうにもこうにも耐えられない。どうにかしようと身を捩ると、鰻は何故かどんどん不味い場所へと進む。
「ああ…ッ!」
遂にトランクスの端から鰻が大事な場所に到達すると、イルカは鼻に掛かったような声を上げてしまった。ぬるぬると固くて太いものが腿の間を往復し、根元を刺激するように蠢く。気持ち悪いのに気持ちいい。

へ、変態か俺は…!?

倒錯的な快感になんだか泣いてしまいそうだ。
鼻を愚図つかせるイルカの傍らで、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
「イ、イルカ先生…!だ、だだだ大丈夫ですか!?い、今助けます…!」」
夢中でズボンに手をかけるカカシの息がはあはあと荒い。
「カ、カカシ先生…っ、」

なんだか嫌な予感がする…

そう思うのに、イルカは股間で蠢く鰻にイッパイイッパイで、上手く思考が纏まらない。
カカシはスポンとイルカのズボンを下着ごと脱がしてしまうと、
「…っ、」
いつもは半開きの目をくわと大きく見開き、息を詰めた。
露わになったイルカの股間は緩く立ち上がり、それに鰻がきゅうきゅうと巻き付いていた。
ぶはあーーー!!!!とカカシの鼻から血飛沫が上がると同時に、股間がぐんと盛り上がる。
それは暴走モードのスイッチが入った知らせだった。
「カ、カカシ先生…!!!!ちょ、ちょっと待っ…」
蒼白になるイルカの前で、カカシが自分の下もていっと脱捨てた。
「イルカ先生…もう我慢できません…っ、俺の…俺の鰻も可愛がってくださいーーーーー!!!!」
絶叫と共に猛ったイチモツをイルカのモノに擦りつけられて、

何が鰻だーーーーーーーーーーーー!!!???

イルカも叫んでやりたいのに、口から出るのは、
「あッあぁッ…や…あぁぁぁっ…!」
艶かしい嬌声ばかりだ。何しろ擦り合わされる二人の股間の間で、鰻がくねくねと蠢いているのだ。刺激が強すぎる。もう自分の股間でぬめっているものが、鰻なのか先走りに濡れたあれなのか、訳が分からなかった。

へ、変態過ぎるだろ、これ…!

半べそのイルカの上で、カカシが興奮したように叫んだ。
「イルカ先生、鰻は精がつくって本当だったんですね…!俺、幾らでもできそうです…疲れた時は鰻!ですね…!!!」

精がつくってこういう意味か…!?それに精をつけなくちゃいけないのは俺だろ?
絶倫のカカシ先生にこれ以上精をつけてどうする…?
っていうか…俺達まだ鰻食べてないじゃねえかーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

その後、本当に下の口で様々な鰻を味わう事になるとは知らずに、イルカは心の中で大絶叫を上げた。こうして土用の丑の日の夜は鰻まみれで過ぎていったのだった。
鰻は翌日カカシが白焼きにして出してくれた。
鰻は茶色の蒲焼しか知らなかったイルカは、

うわ…っ、俺達が昨日白濁した液で汚したからこんな色になって…!?

始めは動揺していたが、食べてみるとさっぱりしてそれなのに濃厚で、案外美味しかった。
ついつい箸も進んで、久々にまともに食事をした。
「イルカ先生が沢山ご飯食べてくれて嬉しい…やっぱり疲れた時は鰻ですね!」
俺また獲って来ます、と嬉しそうにはしゃぎながら、カカシがお代わりのご飯をイルカによそう。

いや、どうだろう…鰻が料理になるまでの間に、もっと疲れるような気がする…
精がつくというより、精液が奪われるような…

そう思うのにイルカは痛む腰を擦りながらぽつりと言った。
「…今度は捌いてから家に持ち込んでくださいね、」
イルカなりの精一杯の譲歩だ。
はあい、と背中には張り付いてくるカカシが、
「…はやく元気になってね…」
すりすりと鼻先を摺り寄せる。
イルカは笑いながら、カカシの鼻先をギュッと摘んで、その薄い唇にそっと口付けた。




終わり