2015年9月29日 |
下流の洗礼 |
(俺) |
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先日の週末は今シーズン最後の渓流釣りを締め括るべく、泊まり掛けの装備でS河内へ向かったものの、悪天候により入渓を断念する 羽目になってしまった。
実は7月と8月にも泊まり掛け釣行の予定が台風により未遂となっていて、釣行回数を増やす目論みは幻となる流れだ。
・・が、9月も最後の週末が明けると天気は回復するという事で、平日ながらなんとか強引に釣り納めへ行く事とした。
しかしいつものエリアは平日に行くには遠過ぎて現実味が無い為、今回は超久々にいつものエリアより遥か下流域の支流で遡上モノに TRYしてみる事となった。
前日に上州屋で日券を購入して、翌日朝に仕事帰りのまま大井川を遡行するという形で車を走らせる。
通勤の為に山間部から流れ出す無数の一般車両達とすれ違いながら、暫し車を走らせて到達したのは俺的に初となるK河内。
本流出会いのK河内最下流に車を停めると、辺りは民家や畑に囲まれたなんとも里川チックな渓相だ。
時間は既にAM7時を過ぎてしまったが仕方がない。快晴の最下流部から入渓した。
想像していたよりも水量があって、本流とも繋がっているので案外期待出来るのかも・・?
心配なのは下流域だけに入渓者の多さによる荒れ具合・スレ具合。それに外道の猛襲といったところか。
入渓地点は何かの工事で河原まで重機が入っていて荒れ気味だったが、少し遡行するとすぐに山に囲まれて渓流らしさを取り戻した。
今回も餌釣りの為、先ずは川虫の確保が最初の任務だ。
ところがいつもの調子で水中の石をひっくり返してもひっくり返しても、全然捕れなくて参った。
一見すると渓流らしい渓相だが、いつもの見慣れた渓相と比較すると何というか・・何かが違うのだと思う。
結局数匹の川虫を得るのに1時間程掛かってしまい、想像以上に遡行も進行したうえで釣り始める事となった。
既に暑くなり始める頃合いのはずだが、幸い日差しはなかなか届かない。
川幅もそこそこあって頭上の樹木も高い位置にあるので、6mの竿でもあまり周囲を気にせず釣れそうだ。
渓相が整ってきてるので適当な淵から忍び寄ってみると、10〜20Cm程の魚が10匹位の群れを成して泳いでいた。
この川で初めて見た魚影に緊張したが、それはすぐに不安に変わった。
渓流魚があれほど密集した群れで泳いでいるのは見た事が無い。
とはいうものの、後方から観察していてもアマゴかハヤ等の外道なのか、イマイチ区別がつかない。
貴重な川虫を外道でロスしたくはないが、とりあえず釣ってみるか。
しかしその魚群に合わせて仕掛けを投入しても、意外な事に餌を喰わない。
鮎か?うーん何だろう。
そして暫し粘っているうちに、仕掛けがその群れから外れたところで目印が動いてHIT。
予想外のところから掛かってきた獲物は、軽く引っこ抜かれた10Cm程のウグイであった。
ぐあっ!やはり釣れてしまったか。
覚悟はしていたが実際に釣れてしまうとダメージが大きい。小さな口で無理してくれるから餌も大破してしまい、再利用は不可だ。
これは各ポイント毎に一級のスポットから攻めていかないと餌が持たないかもしれない。
淵と瀬が交互に続くなかなかの渓相だが、時折外道を掛けながらもめげずに釣り上っていく。
そして釣り始めて30分程経った頃、大淵の深みを攻めていた竿先にハッキリとしたアタリを捕えた。
期待を込めてアワせると、軽く引っこ抜かれたのはパーマークが眩しいアマゴだ。
おお、本命が釣れた!
・・が、喜ぶよりも切なくなる程に小さ過ぎる稚魚だ。
速攻で撮影してリリースすると無事に流れに戻っていった。
とりあえず渓流魚が居る事は確認出来た。あとはサイズを出したいところだな。
しかしその後は外道が立て続けにHITして、餌の残量にもダメージを貰ってしまった。
このまま釣り上っていって本当にいいのだろうか・・。
そんな不安が強まってきた頃、広い淵の対岸寄りを攻めていた俺の目の前に、上流から何かが流れてきた。
一瞬大きな葉っぱかと思ったが、次の瞬間それは二つに分かれて揺れ動いた。
仕掛けの目印など忘れ、体は硬直しながらそちらに目を奪われる。
足元から3m程の距離の浅瀬を流れてきたのは鮮やかなピンク色を帯びたアマゴの番い(ペア)だった。
ちょうど尺くらいのサイズだが、どちらも遡上期の鮭の如く傷だらけの魚体だ。
予想外の出会いにどうする事も出来ず、ただただ目で追っていると♂と目が合った気がした。
そして流れてきた勢いのまま、二匹は上流を向いた状態でゆっくりと泳ぎながら下の淵へと流れていってしまった。
・・・・。
今までどこか半信半疑だった“遡上モノ”。今のは間違いなくソレだったんじゃないだろうか。
何故上から下りてきたのか。もう産卵を終えたのか。餌を喰う余力はあったのか。
下流を眺めて呆然としながら、沸々といろいろな疑問が沸き上がってきたが、あの番いを追って川を下ろうとは思わなかった。
そこからは集中力を保てないまま釣り上ったが、外道さえもアタる事無く大きなプールで行き詰った。
右岸を駆け上がれば泳がずに巻く事は出来るだろうが、時間的にも精神的にもそろそろ潮時だ。
最後のプールを腰まで浸かって行ける範囲で探ってから竿を仕舞う事とした。
結局今シーズン最後の渓流釣りは慣れない下流域での釣行で貧果になってしまったが、良い経験にはなったと思う。
こんな下流域でも稚魚から成魚まで居る事は確認出来たのだ。
あの番いとの出会いはものの数秒の間の出来事だったので、時間が経つ程にあれは幻だったのかとさえ思う内容だが、確かに見たのだ。
また何時か会う為に、今後はこの時期の下流域も選択肢に入れておこうと思う。