2014年9月19日〜20日 |
秋の気配 |
(俺) |
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今シーズンは海での活動を優先していたので、渓流釣りは解禁当初のボウズ釣行から放置したままだった。
しかし9月もいよいよ半ばに差し掛かり、渓流魚の顔を見ないまま終わるわけにはいかないという事で、ようやく今年2回目の渓 流釣りに行く事となった。
目的地の第一候補はN川だが、入渓条件によってはS河内にも行けるよう、一泊コースの装備で現地を目指す。
19日、仕事明けのまま一気に大井川沿いを車で上って目的のエリアまで到達してみると、N川は厳しそうだ。
仕方が無い、久々のN川は諦めていつものS河内へと進路を進める。
・・とはいうものの、そのS河内でさえも1年ぶり。車止めまでの脆弱なルートはどこまで行けるのだろうか。
そしてAM8:40頃、どうにか入渓地点の車止めに到達。
既に陽は高く、他の釣り人達の車が3台も駐車していた。
さすがに9月はシーズンオフ直前という事で駆け込み需要だろうか。
急いで支度を整え、最早何番煎じかわからないような川に向かって出発した。
久々の急こう配の山歩きは早々に新たなる別ルートが発生していて、俺は早い段階で河原歩きをスタートさせる事となった。
開けた河原に出ると、少々雲が目立つものの晴れている。
とりあえず今日の釣りは諦めるつもりで、テンバ予定地を目指そう。そこだけは他の釣り人と被らない事を祈るばかりだ。
1時間以上遡行して徐々に渓相が整ってきた頃、第一釣り人を発見。釣りに集中していて俺が近付いていっても気付かないようだ。
装備からして日帰りコースのようだが、背負っているリュックサックには昨年の年券がついている。
声を掛けてみると釣り人は初老のオッサンだったが、俺の胸元を見るなり気まずそうな顔色だ。
俺:「日帰りですか?」
オ:「もうすぐ帰るから。」
俺:「遊漁券は持ってないんですか?後ろに付けてあるのは去年のですが。」
オ:「遊漁券は・・買ってない。」
俺:「何故買わないんですか?」
オ:「何故って・・。」
俺:「・・じゃあ先行かせてもらいますんで。」
オ:「」
さすがにその場で渡渉まではしないが、これで難無く一人脱落である。残すは2人(2組)。
更に歩を進めると、好ポイントも増えてきた。普段なら休憩も兼ねて淵を凝視しながら魚影を探すところだが、今日はそれほど 余裕が無い。
まだ先を行く釣り人の動向か、俺の目的地の状況を確認しなければ安心出来ないのだ。
そしてろくに休憩もしないまま目的地の近くまで進んだところで2人目の釣り人(?)を発見。
しかし近付きながら様子を見ていると、渓相の写真撮影に熱中している。
話を聞いてみるとこの人もまた初老のオッサンで、日帰りコースで川を見に来たとの事だが・・珍しいタイプだな。
幸い目的が済んで帰るところだというので、これで先行者の2組目もクリア。残り1組はどこへ進んでいるのか。
とりあえずは目的地に到着して、遅めの昼飯としてパムを喰らいながら辺りを物色してみる。
水位は8月のそれよりは多いものの渓相に大きな変化はなく、真新しい足跡も見つけられない。
もしかすると今日より前から更なる奥地へ入っているか、それともただの登山者だったのかもしれない。
どちらにしても俺的な目的地のテンバは無人なので予定通りの行動が出来る。
先行者のプレッシャーから脱して気が楽になった俺は、3時間余りの遡行の疲れを押して早速本流を釣り上ってみる。
餌は車止めでバッタを得られなかったので川虫に頼るしかないのだが、遡行しながらタモを使って少しだけ川虫を得られたので それを使う。
以前尺イワナを釣ったエリアから探っていくと間もなく、今年初となる渓流魚がHIT。
元気の良さから思わずタモを使って取り込んだ獲物は、23Cm程の♀ハイブリットだった。
よしよし、今年も会えたな。
今回は土産を持ち帰る予定だが骨酒サイズは不要なので、この個体は撮影の後リリースとした。
ゴルジュ状になった薄暗い渓相を進むと、好ポイントが連発するところで2匹目がHIT。
この獲物もまたよく引いて楽しませてくれたが、手元に寄せてみると婚姻色が浮き上がり始めた25Cm程のアマゴだった。
久々に見たカラーである。サイズも8寸クラスという事なので、早速キープとしよう。
釣り終えたポイントで餌を漁ってから次のポイントを攻めるという、とても牛歩な釣り方でマイペースに楽しむ。
川虫はやはりなかなか捕れないが、いつもの8月の様子と比べると若干マシかな・・という感じで、どうにか釣りが成立する程度は 確保出来ている。
更にその後もある程度の規模のポイントからは大凡1匹ずつHITし、型の良い9寸アマゴと何故か痩せ気味の尺イワナをキープに 追加する事が出来た。
そして14時近くなり、まだまだポイントは続くもののテンバまで一旦戻る事にした。
明るいうちにやる事を片付けておかねばならない。
テンバに戻るなりテントの組み立てから薪集めと晩飯の支度までを急いで進め、夜を迎える準備が出来たのは16:20頃だった。
日没まではまだ少し間があるようだ。
出来ればもう缶ビールでも開けてゆっくりしたい気持ちもあるが・・。
せっかくの夕マヅメなので視界の限界まで釣っておこうか。ビールもまだ完全には冷えていないだろう。
実は先程の獲物達と一緒に、持参した缶ビール2本をキープ網に入れて流れで冷やしているのだ。
再び竿を持った俺は先程釣った本流ではなく、支流の方へと向かった。
本流出会いからポイントが点在するのですぐに釣り始めると、早々にHIT。
8寸クラスのアマゴが暴れ回っているのが見えたが、何故か同型のアマゴがもう1匹、それに付き添うかのように一緒に泳ぎ回って いる。
海でも同様な事態は何度か見た事があるが、とりあえずもう1匹居る事はわかった。
さすがに取り込むところまでは付いてこなかったものの、針掛かりしていた方の8寸クラスのアマゴをキープに追加。
しかし再び同じポイントに仕掛けを投入してみたが、やはり警戒してしまったのだろう。そこで2匹目が掛かる事はなかった。
刻々と周囲が暗くなっていく中、更に釣り上ってゴルジュへ入ってみると、もう視界が厳しい。
そんな中現れた淵に最後の期待を込めて仕掛けを振り込むと、見辛い目印を追っていた目にチラッと銀白色のものが映った。
聞きアワセ気味に竿をそっと起こすと一気に竿先を絞り込む力強いHIT。
よし、本日最後にふさわしい。絶対に確保してやろう。
迫る日没に圧迫されていた神経を開放して、慎重なやり取りに専念する。
そして落ち込みを一つ下ったところで無事にランディングしてみると、獲物の正体はなかなかのサイズの♂アマゴだった。
コレは尺いったか?・・と思ったが、測定してみると29Cm。
しかし体高が高くて厚みのある、立派な型に満足だ。明日の土産とする為に活かしてテンバまで持ち帰った。
テンバに戻って竿や釣りの装備を降ろし、冷えた缶ビールを飲みながら焚火に点火して晩飯作りに掛かる。
焚火を安定させ、キープした獲物達の中から晩飯用に8寸アマゴを捌き、串を打つ。
まあメニューは相変わらずレトルトカレーと焼き魚の質素なものなので手間は掛からない。
程なくして米が炊けて、焚火の前でカレーライスを喰らう。
暗くなった9月の渓は思いの外涼しく、空は星が見えない程曇っているようだ。
しかし雨が降りそうな気配でも無いのでゆっくりと晩飯を楽しもう。
そういえば9月の泊まり掛け釣行なんて随分久しぶりだろう。台風が来ていなくて良かった。
黒糖焼酎に切り替えて呑みながら、じっくりと焼き上げたアマゴも程良くなってきた。
そしていよいよ喰らいついてみると、焼き加減と塩が絶妙で至福の味を堪能する事が出来た。
この釣行を計画した時から全てはこの瞬間の為に来ているのだ。
アマゴを丁寧に喰った後は焚火を見ながら暫し呑んでいたものの、19時半頃には疲れと満足感でテントへ入った。
翌朝、目覚ましも掛けずに起きてみたらAM6:10だった。疲れていたとはいえよく寝たものだ。
昨夜は寝袋に入っていたにも拘らず若干涼しくて何度か目が覚めた記憶がある。やはり8月とは違うな。
肌寒い環境ながらテントから出てみると空はまだ曇っていた。
とりあえず焚火を熾してお湯を沸かさねば。朝飯は恒例のカップ麺だ。
焚火が安定したところでヤカンをセットしてテンバの撤収と着替えも済ませ、片付けを極力進めておく。
そしてのんびり朝飯を済ませたら荷物をまとめて最後の釣りへ繰り出す。
軽装で本流へと進み、昨日探ったエリアの続きを攻める事にしよう。
低血圧の体も調子が戻り、寒さも感じない快適な環境を遡行する。
朝から薄暗い渓相ながら、ポイントは多いので期待は高まるばかりだ。
程なくして昨日撤収したポイントに到着して釣り始めてみる。
すると間も無く7寸強の♀ハイブリットが釣れて本日1発目をGET。撮影してリリースする。
しかしその後はアタリが続かず、入念に探りながら大淵まで到達した。
急に反応が無くなったような気がして不安に駆られたが、時間的にもここが最後だろうからなんとか一発釣っておきたい。
今までの経験を生かしてここでも仕掛けを改め、餌箱の中から一番大きなオニチョロを選択して勝負に臨んだ。
広いポイントを隅から順に探っていくが、やはり反応が無い。
これほど大きな場所で魚が居ないなんて考え難い。魚を警戒させる何かがあったんじゃないだろうか・・。
そして深場に仕掛けを送り込むようになった頃、遂に待望の生命反応を得た。
竿先をビンビンと叩くような激しいアタリをアワせると、なかなかの抵抗感だ。
場を荒らさないような気遣いなど捨てて、とにかく捕る為に入念に泳がせて消耗させる。
すると程なくして幅広で銀白色の魚影が寄ってきた。アマゴのようだ。
無事にタモで確保してみると、意外な事にサイズは25Cm程度で特に大きくはなかった。
久しぶりに感じたアタリだったせいか、深場で掛かったせいかはわからないが、その引き応えと型の良さに満足だ。
時間は10:30を回り、少々早いが竿を納めて帰還することにした。
今回は日没前に地元に帰らなければならないのだ。
テンバまで戻り、キープを捌いてパッキングまで済ませたら荷を背負って早々にテンバを後にする。
こんなに明るい時間帯を急いで帰還していくのは少々惜しいが、今から急がなければ予定が台無しになりかねない。
そして一度も休憩する事無く歩き続け、2時間程で車まで戻る事が出来た。
今まで時間を気にして歩く事など無かったので、今回の帰還はこのコースで俺的に最短記録となっただろう。
下半身の疲労度が半端無い中、どうにか着替えて車に乗り、夕方には無事に地元へ戻る事が出来た。
今回は久々に9月の渓流釣りを満喫したが、釣りとしては川虫の餌でも充分釣りになったと思う。
キープした獲物達は8寸以上なのでどれも卵や白子を抱えていて罪悪感にも駆られたが、そこは何月に釣って卵を持っていても いなくても同じ一匹の命なので割り切っておくしかない。
これで今年の渓流釣りは釣り納めになるが、来年は盛期から山へ行きたいと思う。