2012年8月3日〜4日 |
快晴渓谷 |
(俺) |
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前回の釣行から1ヶ月余り経ち、ようやく泊まり掛け釣行の予定が決まった。
世間の大型連休に先立つ釣行でもあるので、好ポイントが溢れる渓を十二分に満喫してきたい。
仕事明けのまま直行で某車止めに辿り着いた時には既に陽が昇り、先行者のものと思われる普通車が1台停車していた。
まぁ今回の目的地は有力な支流も幾つかあるし、久しぶりの1泊コースなので焦らずゆっくり行こう。
支度を整えていると、周辺にバッタが沢山居たので餌として確保しておく。
そしてAM7:55。準備が整い、快晴の車止めから歩き出す。まずは蛭が居るかもしれない山歩きからだ。
相変わらずの急勾配を進んでいくと、以前よりも崩壊が進んだ場所が目立つようになってきた。そのうちこのコースも落ちて
新たな踏み跡が出来るのだろうか・・。
蛭が降ってくるかもしれないのでこの辺だけは急いで抜けなくては。
暫し歩いて河原に降り立ってみると、思いの外水量が豊かなようだ。この時期はどこも渇水と聞くが、上の方はどんなものか。
強烈な日差しの中、重荷を背負って歩くと汗だくになりそうだが、谷間を吹き抜ける風と渡渉のおかげでだいぶ快適だ。
河原歩きも時間の経過と共に風景が変わっていき、徐々に川幅が狭まってくる。
そして川の蛇行もピッチが上がり、カーブの度にポイントが現れるようになってきた。
今回は出発が遅かったから一番乗りは出来なかったが、まさか俺よりも後から追って来る人は居ないだろう。
しかし先行者が日帰りで釣っていた場合、あまり早く追いついてしまっては気の毒だ。
・・ちょっと休憩がてらに竿を出してみるか。
普段はまず釣らない様な序盤で荷を下ろし、カーブの淵で早速釣ってみる。餌は車止めのバッタだ。
すると2投目でアタり、引っこ抜かれたのは見慣れない銀白色の小魚・・。
よく見るとなんとウグイだ!
うおぉ・・信じられない。本流ならともかく支流のS河内で外道を釣ったのは初めてだ。
ここで釣れたという事は、この先も遡上止めまでは溯っている可能性も否めない。嫌な予感がしてきた。
その後7寸程のハイブリットを釣って本命は得られたが、目的地まで行けばもっと釣れるはずなのでリリース。
15分程遊んでから再び歩き始めた。
渓がますます狭まってくる中、有力な支流も1つ、2つと過ぎていくが先行者には追いつかない。日差しも強いので形跡も見つ けられないままひたすら遡行を進める。
そして12:30近くなってようやく俺的な目的地に到達。ここも支流が出合うポイントだが、今まで竿を出した事が無いエリ アなので今回はこの辺にテントを張って周辺を釣ってみる。
とりあえずは荷を下ろし、昼飯のパムを喰らいながら辺りを物色する。
幸い河原から3m程の高さに平地があるので、テンバとしては良さそうだ。目の前の水場も朝マズメには釣れそうだし、埋もれ た流木の塊が釜戸として使えそうな形を形成している。
ついに会う事が無かった先行者だが、この奥の支流の入り口にしても本流にしても新しい足跡が見当たらなかったから、もしか したら既に泊まり掛けで更なる奥地に入っているのかもしれない。
まぁとにかくこれでこの周辺は俺の渓状態になったという事で一安心だ。
やる事は山積だが、昼飯を食い終わったらテンバの周辺でちょっとだけ釣ってみると8寸クラスのハイブリットに紛れてここで も15Cm前後のウグイが釣れてしまった。こいつはちょっと由々しき事態だな。
テンバ周辺を軽く釣ったら竿を仕舞い、テントの設営や薪拾い、晩飯の準備等を明るい間に極力済ませるべく動く。
そして15時を回る頃になって無事にテントも組みあがり、充分な量の薪も揃った。今回は忘れ物も無く、順調である。
さてここからは夕マヅメまでじっくりと釣りが出来る。今宵の晩飯も釣らねばならない。
まずはS河内本流を釣ってみよう。先行者の影響等で釣れなかったら支流へ入れば良い。
本流と支流の出合ポイントから再び竿を出し、数匹のウグイを放ってから本流を釣り上ってみる。
今までは通過してばかりの所だが、実際は渓相も良くて釣り応えがありそうだ。
カーブと落ち込みが続く中、丁寧に仕掛けを流して釣っていくうちにぽつりぽつりと8寸クラスのハイブリットが釣れてくる。
どうやら先行者の影響等は杞憂だったようだ。
しかし浮かれる余りにキープする基準が曖昧となり、ついついここまで全ての獲物をリリースしてしまった。
晩飯用の獲物の事を思い出したのは9寸クラスを釣り上げてからだ。
ようやく1匹のイワナをキープするとアタリが遠のいてしまったようで、刻々と谷間は薄暗くなってきた。晩酌用にあと1匹は 欲しいかな。
あと1匹・・と思い始めるとなかなか釣れなくなってしまうのはいつもの事である。
しかもそろそろバッタの在庫も薄くなってきたので、川虫を漁りながらの遡行だ。
時期的にオニチョロはとても見つけ難いのだが、明日の分も考えると少しでも多くキープしておかなければ。
1〜2つのポイントを釣る毎に、釣り終わった川底の石をひっくり返して川虫を探す。
なんだか釣りに来たのか川虫を獲りに来たのかわからないくらいの状況にもなってしまったが、奮闘の末に無事、明日の分まで 餌を確保する事が出来た。
そしてゆっくりと釣り上っていくと、低い落ち込みから広がる狭い淵でようやく目印が動いた。
アワセを喰らわせた時の質感で驚いた。コイツは大きいぞ。
狭いポイントで竿を大きく曲げて、強くて重い相手との引っ張り合いを展開する。
ここまで強い引き応えは随分久しぶりだが、幸いポイントが狭いおかげでなんとか獲物をタモに取り込む事が出来た。
明るい場所で獲物を確認してみると、獲物の正体は上顎までしゃくれた雄の尺イワナだった。
測定してみると36Cmと、案外大した事はなかったが時期的に型も良くて満足の1匹だ。
さて目的も果たした事だし、テンバへ戻って火を熾そう。
テンバに戻ると獲物を水場にキープし、焚火を点火する。周囲はまだ若干明るいが、空気は既に日没らしい気温になってきた。
結局晩酌用には9寸のイワナを1匹使い、尺イワナは明日まで活かしておいて下界に持ち帰る事に。
焚火が安定した頃、川の水を沸かしてコーヒーを飲む。
そしてバーナーとコッフェルで米も炊き、俺達的な定番のレトルトカレーで晩飯を頂くと今回も絶好調な出来だ。
空を見上げてみると背の高い木々で見辛いが、晴れた夜空に下界よりハッキリと見える星。
久しぶりの渓流の夜である。
イワナの焼き具合を調整しながら持参した黒糖焼酎を呑む。暗闇の渓のせせらぎに癒される思いだ。
じっくりと焼きあげたイワナに喰らいつくとこれもまた絶品。やはり焚火で焼いてこそ美味しいのだ。
しかしその美味しさとは裏腹に、今回はろくに酒が進まずにテントへ入る事に。
仕事明けのまま来た影響か、今回は随分疲労感がある。もう少し渓流の夜を楽しみたい気持ちもあったが、20:30頃に就寝 した。
翌朝、目が覚めるとAM4:45で外は完全に明るくなっていた。よく寝たものだ。
とりあえず水場を使う前に朝マズメを釣るべく、昨日から出しっ放しの竿と餌箱を持って河原に降りてみる。
すると予想通り、テンバの前のポイントから7〜8寸のハイブリットが釣れてきた。
しかし30分程釣ってみたが、思いの外魚影が薄いようだ。
テンバに戻って火を熾し、カップ麺で軽い朝食を済ませる。谷間に漂う煙が、その匂いと共に人間の存在をアピールしている。
今日もよく晴れていて快適だ。
そして荷物をまとめて最後のコーヒーを飲み干したら、軽装で釣りに向かう。
未知なる支流へ入ってみると、まだ陽が昇り切っていないせいか薄暗いものの、渓相自体はとても良いカンジだ。
川虫を餌に早速釣り上っていくと、8寸クラスのハイブリットが要所要所で釣れてくる。
爆釣とはいかないが、その分各個体が餌を沢山食べているようでどれも型が良く、引き応えを楽しめる。
支流に注ぐ枝沢も探ってみるとイワナが溯っていたが、この辺りからはさすがにウグイの姿は見られなくなっていた。
そういえば昨日からウグイとイワナばかりで、アマゴの姿が見られないな。
じっくりと丁寧に探っていくと、5m程の滝が現れた。滝壺周辺は大きく、期待出来そうなポイントだ。
滝壺からの流れが渦になって巡っているので、あまり近付くと下流側を向いている魚に感付かれる恐れもある。
大場所に備えて一旦仕掛けを作り直し、餌も一番大きなオニチョロを刺してアピール度をMAXにして仕掛けを振り込んだ。
そして流れに合わせて仕掛けを流していると、目印の動きに違和感を感じてHIT。
一瞬根掛かりかと思う程の手応えだったが、竿先を見直すとグイグイと滝壺に引き込まれていく。コレもなかなかの獲物らしい。
しかし昨日の場合と違って今回は大場所のせいか、手応えが凄い。
暫くの間は引き応えに耐える事でいっぱいいっぱいで、全然上がってくる気配が無い。
そして5分程だろうか?獲物を泳がせ続けた末に、ようやく取り込む事が出来た。
獲物の正体は昨日の個体とそっくりな、精悍な顔つきをした尺イワナだった。
随分と場を荒らしてしまったが、昨日の今日でまた良い獲物を得られて満足だ。コイツも土産にキープする。
仕掛けを作り直しておいて本当に良かった。
その後、散々尺イワナが泳ぎ回ったポイントながら9寸クラスのハイブリットと、今回初となるアマゴも連釣した。
時計を見ると10時を過ぎていて、その場で竿を仕舞って撤収する事に。
テンバに戻ってキープを捌いてみると、先程釣れた尺イワナは昨日の獲物よりも若干小さく34.5Cmだった。
しかしどの魚も小型の甲虫や何かの幼虫等、陸生昆虫を胃袋いっぱいに貯め込んでいた。
そしてポケットクーラーと共に獲物をパッキングしたら、帰路に就く。
炎天下の河原を下りながらも、好ポイントには気を使って極力離れて渡渉しよう。
それにしても久しぶりの宿泊釣行は満足のいく獲物に恵まれたが、ウグイの進出に驚かされたりアマゴが少なかったり、踏み跡の 崩壊等、新しい変化を幾つか感じた。
この変化が今後の大井川のスタンダードになるのか単なる偶然かはまだわからないが、こういった変化を今後も出来る限り身近に 感じられるように通い続けたいと思う。