2012年6月15日 |
宿泊未遂釣行(後編) |
(俺) |
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静岡県の梅雨入りから1週間経って曇りや雨の日が多発する中、幸いこの日だけは日中の晴天が予報されていた。
特に翌日からは1週間毎日欠かさず雨の予報になっていたので、今年は梅雨らしい梅雨というカンジか。
色々な意味でタイミングが大事な今の時期、この週末はN川に行くしかないと決めていた。
AM7:00。某車止めにて支度を整え、このエリアの事情をよく知っている老人に声を掛けてみると、意外な情報を得た。
老:「ソレ(俺の装備)でN川行くの!?・・20日位前にあそこへ入った人が2匹しか釣れなかったって言ってたよ。」
俺:「え、もう今年歩いてそこへ行った人がいるんですか?」
老:「よく来る人なんだけどねえ・・どこも去年の秋の台風で魚が死んじゃったみたいだよ。」
俺:「・・そうですか・・。」
老:「アンタが5匹釣ったら大したもんだ。気をつけてね。」
今シーズンはまだろくに人が入っていないだろうとは期待していたが、まさかの貧果情報。
日帰りとはいえ2匹?台風で魚が死んだ?鵜に怯えて隠れていたんじゃないのか?本当に今日俺が行くN川の事なんだろうか?
様々な考えが過る中、快晴の踏み跡を出発した。
久々にテント等宿泊用の装備を背負って移動に費やすエネルギーは結構なものだが、周辺のマイナスイオンが実に心地良い。
道中で立ち寄った大きな水溜りは今回は綺麗な色になっていた。
暫し寄り道もしてN川出合に到達したのは10時近くだった。まぁ1泊コースだから焦る事は無い。
とりあえず先行者も居ない様なので、少し遡行した河原で荷を下ろしてテンバを確保しておく。
天気予報では日中こそ快晴だが夜は未明から降るらしいから、予想外に早く降り始めた時の為に備えて先にテントや釜戸を
準備しておこう。
そうすれば今日は視界ギリギリまで釣りをしてこれる。
高く昇った太陽が照りつける中、薪を集めたりタープを張ったりしている間に汗が噴き出してくる。
暑いけれど久々の作業に充実の時間でもある。
そしていよいよテントを組もうとしてリュックから引き出してみると、急に何か物足りないという胸騒ぎがした。
アレ・・!?ポールが無い・・??
なんと俺はテントの支柱を忘れてきてしまったようだ。
「ヘイ、ポーーーーール!!」
・・などとアメリカ人風に叫んでみても出てきてはくれない。
ぐああっ、しまった・・。そういえば以前修理から戻ってきたポールを忘れない様に別の目立つ場所に保管していたのだった。
先程までの充実感も一気に吹き飛び、急遽予定を練り直す。
テントが組めないとなると1泊は不可だ。タープはあるが、俺は壁が無い状況で野宿する気は無い。況してや今宵は雨の予 報。
仕方がない・・こんな時間で今更だが、日帰りに変更だ。
既に昼近くなった炎天下で、俺は主な装備をそのまま放置して竿だけ持って急いで釣りに向かった。
いつものように渓相を楽しんでいる余裕は無い。序盤は一気に飛ばして、魚影が期待出来るエリアをピンポイントで釣って から速攻で戻って来なければ。
とはいえ、台風の影響なのかだいぶ荒れた部分も目に入ってくる。確かに魚には厳しそうな渓相だ。
しかしいつもは竿を出さない様な序盤でも、早速走る魚影を何度も確認して、とりあえずは安心だ。テンションも上がって きた。
遡上期は過ぎた頃だろうけれど、そういえば今までこの支流で下流部を釣った事はなかったな。
・・よし、魚が居るようだし時間も少ないから今回は序盤から釣ってみるか。
日当たりの良い浅瀬で餌獲りを敢行し、良いサイズのオニチョロも適度に確保出来た。
しかし釣り始めてみてもなかなか思い通りに魚が出てきてくれない。探り終えて移動する際に足元から逃げ出す獲物は何度 も見る位だから、いつもの狙い方では合わないようだ。
しかしそんな魚影達も7寸程度のものばかりだったから、あまり時間を費やすのも割に合わない。
結局序盤での釣りは40分程で諦め、整ってきた中盤の渓相を一気に歩いて進む事にした。
そして1時間程遡行し、そろそろ良いだろうと思えるエリアで再び釣り始めてみる。
すると釣り始めて数分でアタリが出た。
一度バラしてから再チャレンジで釣れたのは7寸強のハイブリットだ。よしよし、釣れるじゃないか。
この支流特有の紫光が眩しい個体で骨酒には良いサイズだが、今回はリリースして次を探る。
そして次の淵でもアタリが続き、今度はなかなか元気の良い引き応えで楽しませてくれる。
無事に足元へ寄せてみると8寸程のハイブリットだった。錆は消え失せて型も程良くなっている。
よし、久しぶりに池を作って活けキープだ。
その後更に10Cm程の稚魚と7寸サイズを立て続けにリリース。どちらも小型とはいえ、錆は完全に無くなっていた。
落差も大きくなってきたので竿を畳んで巨岩の上に出ると、毎度釣れる鉄板ポイントの滝に到達した。
ここは台風の影響を受け難い所の様で、初めてこの川へ来た時と変わらない渓相が安心感をくれる。
大事にポイントの隅から攻め始めてみると、早速滝壺から離れた浅い所からアタリが出た。
軽くアワセると思いの外重みを感じる。なかなかの引き応えに竿が弓なりとなり、やり取りに興奮する。
滝壺周辺まで走り回られてしまったものの無事にランディングすると、やや痩せ型だが尺近いサイズのイワナだ。
サイズを測ってみると30.0Cm。惜しくも尺には足りなかったが、最近は別に尺あっても無くても大した問題に感じな くなってきた。
10年程前に比べたら確かに魚が減ったと思うけれど、とりあえずはそれなりの魚影は維持されていると思う。
先の老人の話で出てきた人は序盤から竿を出して時間を浪費して終わっただけなんじゃないだろうか。
そんな事を考えながらも更に9寸クラスを連続してHITさせ、釣り応えを満喫したところでそろそろ終了の頃会いだ。
まだまだ魚止めまでは距離があるが、ブッシュがウザくなってきたという事と餌の確保が厳しくなってきたのも惜しい限り だ。
竿を仕舞って急いで戻りながら、途中の活けキープも回収する。
・・と思ったら、しっかり逃げられていた。池の造りが甘かったか・・無念。
結局今回はハイブリットばかりで7匹しか釣れなかったが、短時間でそれなりの型も見られたので良しとしておくか。
今度は充分な時間と完璧な装備で、ガッツリと釣りに来たいものだ。