2008年5月3日〜5月5日 |
俺達的GW釣行‘08 |
(俺・ナオキ) |
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今回は約2年ぶりとなるS河内源流で2泊3日の釣行だ。
前日夜に某車止めに入ると、既に1台のワンボックスが停まっていて宴会が始まっていた。しかし話を聞くと翌日は日帰り釣行という
事で、俺達の先行を快く認めてくれた。
しかしあの様子で彼等は翌朝ちゃんと起きられるのだろうか・・?
3日の朝になって俺達は軽く食事を済ませ、身支度を整えて車から出発。時刻はAM5:30で、周辺は既に明るくなっている。
曇り空の下、久しぶりの踏み跡を辿っていくと数箇所の土砂崩れでルートの変更を余儀なくされた。
仕方がないので予定よりも早い段階で川底に降りて、長い河原歩きからスタートした。
川を歩き始めるとS河内本流の水がいつもより多い事に気がついた。
雪解けの影響は毎度の事だが、先日降った雨も一役買っている感じか。色も若干笹濁りで、上流部の遡行が少々心配だ。
そして最初の渡渉から2回、3回と水に浸かると、足が痺れるような感覚になる程に冷え込んできた。
今回はゴルジュをクリアする為、ウェーダーではなく渓流シューズを装備しての釣行だが、さすがに朝の渡渉は体に効く。おまけに水 量の多さから、意外となんでもない渡渉も大変だ。
暫く歩いていくと徐々に両岸が狭まってきて、落ち込みや滝が出てくるようになってきた。
この2年の間に川も変化があったようで、記憶に無い渓相もちらほら見られる。中には土砂崩れによって出来たとみられる大きな淵も あって、早くも竿を出したい衝動に駆られた。
ある程度遡行した9:30頃、渓相の良さにつられてナオキが少しだけテンカラで探りながら進むことになった。
ナオキはまだ今年の初アマゴを釣っていないので、アマゴ目当ての毛鉤を振りながら歩行ペースを落として進む。
河原の石がだんだん大きくなってくるのを感じながらナオキの後をゆっくり着いていくと、毛鉤に反応する魚が見えてきた。
そして間もなくHIT。俺達的に本日初HITは9寸程のハイブリット。というより白点ばかりのニッコウイワナという感じだ。
初HITの獲物を放って更に釣り上るが、そのうち遡行が厳しくなってきたので初アマゴを叩き出す前に竿を仕舞って再び遡行に専念 する事にした。
空は相変わらず曇り勝ちなまま、渡渉やヘツリを繰り返して先に進む。水量はもう充分だから、降らないでくれよ。
ここまで遡行してくると、ただの渡渉もいちいち躊躇してしまう程の水量に感じる。
いつも胸元まで浸かる淵なんかは一体どうなっているのだろうか・・。冷え込んだ体と頭が、間もなく訪れる難関を前に憂鬱になって きた。
そして11時を過ぎた頃、遂にゴルジュに到達した。
まるでここまでの苦労を嘲笑うかのように、目を覆いたくなる程に大型化した淵が爆音を響かせている。
俺:「オイオイジョーダンジャナイヨ。」
ナ:「うーわ・・。」
しかし呆れていても先には進めない。巻き道もあることはあるが、俺達は敢えてこの難関に挑む道を選んだ。
荷物を下ろしてカッパや他の装備品はビニール袋に詰め込んでおき、まずはナオキが軽装でロープを持ってヘツリに挑戦する。
淵尻から岩壁に張り付いて、極力上半身まで浸からない様に慎重に手掛かりを求めてヘツっていく。
俺は残された荷物の傍でビデオ撮影をしながら、今か今かと決定的瞬間を待つ。
しかし絶望的な期待(?)とは裏腹に、なんとかオーバーハングまで突破して無事にクリア。なんとナオキは腹より上を浸水する事無 く滝上に行くことが出来た。
次にナオキが持っていたロープを下流へ投げ、俺が荷物にロープを括り付けて順番に引き上げる。重荷を背負っていてはとてもクリア 出来そうにないから、やはりこうする事が一番だろう。
そして全ての荷を引き上げた後、最後に俺が挑む番が廻ってきた。
憂鬱だった気分を吹き飛ばし、意を決して岩壁に張り付く。水中でスタンスを探っている間に、あっという間に本日の浸水記録を更新 してしまった。
腰まで水に浸かりながら手足で順番に手掛かりを求める。冷たい水流が俺の動きを妨げ、スタミナも削り取っていくようだ。
思えば俺はいつもここで失敗していただけに、今回は成功させたい。慎重に時間を掛け、手足の力を保ちながらじっくりと進む。
そして約5分後、どうにか俺も滝上に降り立つことが出来た。
幸い俺も上半身の浸水は免れ、先に引き上げた装備品を身につけるととてもこのヘツリをこなした後とは思えない程の爽快感を感じた。
その後幾つもの滝を超えて淵をヘツり、巨岩をよじ登ったりしてようやく目的地のテンバへ到着した。
一時的に軽く雨が降ったりはしたものの、荷を下ろしてこれから3日間の生活の準備を始める。
バルサンを発動しながら河原の木を支点にタープを張り、石を積んでカマドやテーブルを設ける。そして薪を集め、大きなものは鋸で 適度に切り分ける。
いつもの事だが、釣り以外にこんな準備をしている時間も結構楽しいものだ。それまでの遡行の疲れも忘れて夢中で作業に勤しむ。
しかし大体の作業が終わった頃、俺は不意に左足の脛が痛い事に気がついた。ナオキも動きが妙に鈍いと思ったら、両足の股関節と膝 が痛むという。
どうやら久しぶりの重荷を背負った遡行で、ダメージが予想以上に蓄積してしまったようだ。一晩寝て治ってくれればいいが、そんな に甘くはないだろうな。
とりあえず一通りの作業が終わったところで、俺達は痛みを押しての晩飯釣りを始めることにした。
テンバの周辺で川虫を漁ると、予想通りオニチョロが大漁だ。難なく餌をGETした俺達は、痛む足を引きずりながら釣りを始めた。
そして俺が今回初めて竿を出して間もなく、落ち込みの下流の淀みで本日初HIT。早速釣れたのは元気の良い9寸ハイブリットだ。 よしよし、良いスタートだ。
続けて俺が釣ったポイントの流れ込みへ餌を流し込んだナオキの竿にもHIT。
こちらは結構スタミナのある獲物のようで、少し泳がせてから無事にランディング。上流へ来てからのナオキの初HITは34cmだ。
今年もこのエリアの魚影は濃いようでなによりだ。
釣れてくるのはハイブリットばかりだが、白点の多いニッコウ系のものやオレンジ色の濃いもの、サビがまだまだ濃いもの等、固体差 がある。
足の痛みもあるが、1つのポイントから何匹も魚が出てくるので釣り上るペースはまるで上がらない。
しかし今日はまだまだ初日。晩飯のキープさえ出来ればいいので、焦らずにゆっくり釣りを楽しむ。日没が迫ってきてからキープを数 匹得れば良いのだ。
爆釣を続けながら徐々に上っていくと、また見慣れない渓相が目に入ってきた。どうやら割と最近右岸側の崖が崩れて、川の流れを分 断したような形跡がある。
期待に胸を膨らませながらも慎重に土砂の山を乗り越えてみると、そこには源流には不釣合いな程広いプールが出来上がっていた。
こりゃあ凄い・・餌釣りやテンカラの仕掛けでは到底探りきれそうにないポイントだ。ルアーロッドでもあれば楽しめるだろうが、さ すがに俺達ではお手上げか・・。
とりあえず暫し2人で感心しながら様子を見ていると、ちらほらと魚影が見える。それもギリギリで仕掛けが届きそうな範囲だ。
こうなったらもうやるしかない。俺達はそれぞれ仕掛けを目一杯遠くへ振り込んで、見えるイワナ釣りに挑戦した。
すると釣れる釣れる、流れも殆ど無い鏡のようなポイントだが、8〜9寸のハイブリットがボコボコ釣れてくる。
全く移動せずにここまで連釣するなんて事は初めてだ。
結局俺達は餌が無くなるまで釣堀状態を楽しみ、最後に9寸クラスを4匹キープしてテンバへ戻った。
テンバへ着くと日が沈み始めていた。
俺達は急いで火を熾したり獲物を捌いたりと、晩飯の支度に取り掛かる。
そして周囲が完全に暗くなった頃、靴を履き替えてズボンを乾かしながらまったりと晩飯が出来上がるのを待つ状況になった。
焚き火の脇で暖めたヤカンは川の水が沸き、インスタントコーヒーで体を中から暖める。
そして晩飯も炊き上がり、定番のレトルトカレーで頂いた。
うーむ、安いのに美味い。しかし今回は米を1人1合の計算で持ってきたが、若干足りない気がする。
次回はもう少し多めに持って来るようにしよう。
イワナを焼きながらコークハイを呷り、空を見上げると何時の間にか雲がなくなっていて満天の星空になっていた。
雨も風も無く、実に快適な夜だ。
明日は快晴が予想されるが、環境と体調を考えたプランを練りながら寝袋に納まった。
4日の朝が来た。空は予想通りの快晴で、俺自身も予想通りの寝坊だ。既にナオキは一足先に起きて火を熾していた。
そしてパムとコーヒーで軽い朝食を食いながらお互いの足の調子を確認する。
俺は左の爪先を上下に動かすと痛い程度だが、ナオキは両足の付け根と膝がかなり痛むようで、満足に足が上がらないようだ。
本来ならば2日目は朝から遡行して難関を突破し、丸一日源流部を釣ってくるところだが、今回はS河内奥部は諦めた方が良さそうだ 。水量も多いし、高巻き出来る自信もない。
という訳で、今回はテンバから無理なく歩ける範囲でゆっくり1日釣りをするというプランになった。
朝食を済ませて着替え、軽装で川へ出る。歩き辛いが立っていられないという程ではない。
頑張って川虫を捕り、テンバの前から釣り始めた。
今日も俺は餌で釣り上り、開始早々にテンバの前で9寸ハイブリットをGET。
ナオキはとりあえずテンカラで始めたものの、なかなか反応が得られずに、早々に餌釣りに乗り換えた。
ポイントを交互に探っていくと、昨日釣った区間でも爆釣が続く。
8寸〜尺程度を釣っては放ち、じっくりと時間を掛けて進んでいく。
日が高く昇った頃、昨日最後に釣った大プールへ到達した。透明度が高いので昨日よりも遠くまで視界が利く。
とりあえずナオキに釣らせながら様子を見ていると、相変わらず型揃いのイワナ達がたくさん見える。
そしてそのポイントに仕掛けを振り込んだナオキが1投目からHIT。
驚くべきことにそこのイワナ達は、すぐ横にいた仲間が釣られても全く動じずに遊弋している。
おまけにリリースした魚が戻っていっても全然散る様子が無い。うーむ・・なんて凄い状況だ。
今日も暫く釣堀を楽しんだが、このままここで粘っていても芸がないし時間もある。
俺達は大プールの脇をそっと移動して、その上流の流れを釣りに進んだ。
好ポイントの連続する渓相へ出て本来の渓流釣りを再開すると、やはりこちらも入れ食いみたいな状況だ。
そして何匹か釣った淵の流芯から、俺的に今回最長寸の35cmのハイブリットが飛び出して、コイツはキープ。
粘っていると1つのポイントから3〜5匹程出てくるので、実に釣り応えがある。
ナオキの方は1つの淵で34cmを頭に尺イワナ3連荘だ。餌の補給が間に合わなくなりそうな勢いはとどまるところを知らず、俺達 は頻繁に川虫を漁るハメになった。
そのうちナオキの餌用の竿が不慮の事故で折れてしまったが、折れた竿でも何匹か釣る事が出来た。
そしてテンカラに乗り換えた後、さすがに釣れる率が落ちたものの数匹のイワナを釣って、一度テンバに戻る事にした。
相変わらず俺達の足は痛んだままだが、今日の釣りでどうやら俺は右手の手首の上部をも痛めてしまったようだ。
一日中6mの竿を支えっぱなしなんて事は当たり前で、今までこんなことは無かったのだが・・手首を上下に動かすと結構痛い。厄介 な事になってきた。
とりあえずテンバに戻って晩飯や焚き火の準備をしながら一休みする。何時の間にか空には雲が広がり、周辺は薄暗くなってきた。
今日あたりそろそろ夕立が来るだろうか?しかし暗闇になるまで若干時間があるので、マヅメの釣りに出る事にした。
俺的には充分釣ったので釣りは程々に、ナオキのテンカラの様子を撮影する。
しかし今回三度訪れた大プールでは何故か毛鉤に反応する魚は少なく、殆ど釣らないまま日没を迎えて終了となった。
テンバへ戻って火を熾し、晩飯も火にかける。今日は膝上程度までしか濡れていないので寒さも感じないが、周囲の空気がやや湿っぽ く感じる。
万一雨が降ってくると面倒なので、今宵の焼魚は尺イワナを1匹ずつ串を打つ。そして足元を焚き火で乾かしながら、今日も懲りずに レトルトカレーを喰らう。
晩飯を食いながらお互いの怪我の様子を確認すると、ナオキの両膝の痛みは昨日と変わらず相当痛むようだ。歩くのに足を上げるだけ で辛いようだ。
俺も左足の爪先を動かすのが結構キツイが、昨日より悪化はしていないので歩けないほどではない。しかし右手は力を込めるとかなり 痛む。
とりあえず明日は竿を出すのを止めて帰るだけの予定に決めたが、どうやら俺達の怪我は一晩では回復しそうに無いので無事に帰れる か心配だ。
お互い少しでも痛みが和らぐ事を祈って寝袋に入った。
5日の朝、AM6時頃起きてみると空はどんより曇っている。いよいよ降りそうな雰囲気だ。案の定手足の痛みに変化は無いが、とり あえず火を熾して朝飯の支度をする。
間もなくナオキも起きてきたが、回復はしていないようだ。
こうなっては仕方が無い。痛みを押して時間を掛けてでも強引に帰還を果たすしかない。
炊き上がった米にまたまたカレーをかけて喰らい、体力を養う。そして着替えや片付けを済ませ、9時頃にテンバを後にした。
痛む足を強引に引き上げては歩を進め、時間を掛けて高巻きやヘツリをこなしていく。
いつもなら何て事のない渡渉でさえ、今の俺達の前では難関になっていた。
膝上位の水深となるともうギリギリで、何度となく足の踏ん張りが利かなくなって危険な思いをした。
これから無数に繰り返す渡渉を考えると早くも憂鬱になってくる。
そして昼近くなった頃、あのゴルジュまで到達。今回も来る時と同様の作戦で岩壁をヘツリ、手足の限界値の狭間を彷徨った末、なん とか2人共転覆せずに下流へ降り立つことが出来た。
しかし丁度その頃から雨が降り始め、次第にその勢いは強くなってきた。
困った事に俺達の歩行ペースは過去に無い程に遅く、車止めまでの道程を考えると到着時刻は想像がつかない。
このまま雨が更に強まってくると、増水→足止め→遭難状態のコンボになり兼ねない。イカン・・頑張れ俺達。
俺達は気持ちこそ焦りながらも目の前に現れる難関を地道にゆっくりクリアして進み、とにかく転覆や滑落をしないように心掛けた。
長らく降り続ける雨のおかげで浸水を免れたはずの上半身もびしょ濡れとなり、川も少しずつ濁りが入ってきた。
追い討ちを掛けるように雲の向こうで沈み始める太陽・・。
そして雨が止まないまま18時を過ぎた頃、ほうほうの体でようやく車に辿り着いた。
ハァ・・長かった・・。結局テンバから9時間も掛かってしまったが、どうにか帰ってくる事が出来た。
即座に車のロックを解いてドアを開けた時には、いつも以上に安心感に包まれた感じがした。
手足の痛みも忘れて着替えを済ませ、3日ぶりに文明の利器を運転しながら今回の釣行を振り返る。
この怪我は下界での運動不足な生活が原因なんだろう。もっと源流へ来て体を鍛えるべきだという渓からの警告なのかもしれない。
いいように考えながら山から遠ざかっていく俺達だったが、さすがに今回の釣行はトラウマになってしまいそうだった。
この後直面した事態も含めて・・。