2006年3月19日〜21日 |
‘06初泊り掛け釣行 |
(俺・ナオキ) |
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下界はだいぶ暖かくなり、俺達もやっと泊り掛け釣行に行く機会がきた。
今回の目的地はちょうど2年ぶりとなるS川だ。前回の初釣行では凄まじいアマゴラッシュを味わい、この解禁前には是非2泊コース で行っておきたいと、ナオキと日取りを調整していたのだ。
しかし出発予定日の天気予報は生憎の雨と報じられており、しかも長時間降るような内容だった。そのため目的地周辺での災害がやや 心配になった俺達は、いつものように前日夜から車止で待機する方法を諦めて、釣行日の朝に自宅を出発するという形をとる事にした。
19日朝に自宅を出発して車止に到着したのはAM10時過ぎだった。周辺には昨夜の雨の痕跡が少々残っていたものの、空は既に快 晴となっていて他の車も来ていない。
こんな時間なのに先行者が来ていないので、これは幸いだと、そそくさと支度を済ませて車を出発した。
2年前と同じ踏み跡を辿って森を行く。相変わらず不明瞭な道で、周辺の落葉樹の落ち葉がかなり溜まっていて滑りやすい。
ウェーダーを装備したまま山の斜面を歩くには、落ち葉は意外と危険な要素なのだ。
踏み跡を進んでいく途中で数箇所に、かなりの角度のガレ場が見えなくなるほど下方に伸びているところがある。川のせせらぎは遠く に聞こえるが、一歩足を踏み外したら案外近くなるだろう。
久しぶりの山歩きを慎重に味わい、S川に降り立ったのは昼頃だった。
相変わらずの素晴らしい渓相に再会して嬉しかったが、昨夜の雨の影響でやや増水しているのが気になる。
すぐにでも竿を出したいという衝動を必死で抑えながら、とりあえずはテンバに到着することを優先する。
ここからは川通しで遡り、前回と同じテンバに15時頃到着出来る目処がつくまでは釣りは我慢しなければならないのだ。
絶好な大場所の数々を素通りしながら、俺達的な釣りたい欲求は爆発寸前である。
もうこれ以上好ポイントを捨てたくない。しかし早く先に進んで釣る時間を引き寄せたい。
そんな心で進む俺達にとっては少々の増水など全く足止めにはならなかった。
そして気がつけば何時の間にかテンバも近くなり、とうとう竿を出し始めてもOKなポイントに来た。
二泊分の重荷を河原に落として、タモと餌箱だけを持ってザブザブと川に入る俺達。そして浅瀬の石をどかして川虫獲りに没頭する。
時期が時期だけに今年もオニチョロが大漁である。難無く餌をGETして、ようやくお待ちかねの釣りを始める事になった。
いつものようにビデオ撮影しながら、本日の最初のポイントをナオキに釣らせてみる。今年もいきなり爆釣だろうか。
・・しかし意外なことに、最初の数投ではアタリが無い。せっかくの大場所なので淵尻から慎重に攻めていたナオキだが、逸る気持ち から徐々に前に出て行く。
そしてある程度水深のあるところに仕掛けを振り込んでから、やっと目印が動いた。
アワセとほぼ同時に水面に出たのは7寸アマゴだ。今年もこんなサイズからのスタートだが、2年ぶりのS川アマゴとの再会に自然と 笑みがこぼれる。
とりあえず無事魚影を確認出来たので、俺も釣り始める。
気温はそれほど寒くはないが、なかなか食いが渋いようだ。俺も数投目で本日1匹目のアマゴを釣ることが出来た。
しかしサイズは6寸程度のサビ付きだ。2年前とそれほどサイズが変わらない・・って言うか、小くなってるじゃないか!
久しぶりに来たので前回の魚影を思うと、平均サイズが大きくなっていることを期待したが、実際はそんな甘くないようだ。
というより、考え方が間違っているな・・。
じっくり釣り上っていくと、最初の大場所の滝壺を攻めていたナオキの竿が曲がった。
本日最長寸の気配が漂う中、無事ランディングされたのは8寸クラスの真っ黒なアマゴだ。
なかなか深みのある滝壺からよくぞ釣ったもんだ・・と、ナオキの仕掛けを見ると、いつの間にか仕掛けが変わっていた。
俺:「何?この仕掛け・・。」
ナ:「堰堤スペシャル。ついに大場所で釣ったぞ〜。」
目印の位置が異様に上に引き上げられており、更に大きな錘がつけられていて、終いにはハリスにあたる部分もだいぶ長くとられてい る。
過去、いくつもの大場所を攻めた俺達だが、決定的な釣果なんて出したことがなかった。今回の大場所での釣果は、今までの悔しさか
ら得られた産物ともいうべきものなのだろう。
ナオキは喜びを露わにして、本日初キープを得た。
釣りに集中しながら上って行き、テンバに到達したのは16時近くだった。
前回と全く同じ場所にテントを張り、薪拾いや飯の支度を整える。しかし日が傾き始めた頃、にわかに風が強くなってきた。
焚き火がしっかり点くか心配になったが、一通りの準備を終えたので夕マヅメを釣りに再び川に出ることにした。
俺がテンバより上流側を、ナオキはテンバから少し下流側から釣り始める。
しかし俺もナオキも思い通りには釣れず、18時前には釣りを諦めて晩飯の準備に取り掛かった。
晩飯用のキープは8寸アマゴ2匹だけだが、今年初のご馳走としては充分である。
かなり風が強い中での焚き火はやや苦戦を強いられたが、20時頃には風も止んで、落ち着いて晩飯を食らうことができた。
そういえば前回来た時も風が強かったような記憶がある。今回は一際寒く感じたが、風さえ止んでしまえば平気だ。
アマゴを焼きながら焚き火を眺めたり夜空を見上げたりして焼酎を呷る。今回も雲一つない満天の星空だ。
俺が初めて泊り掛け釣行に来た時、同様な星空を見て「手で掴めそうな・・。」と言った事を思い出した。下界で見るのとは訳が違う。
我ながらよく言ったものだ。
21時を過ぎた頃に就寝。
20の朝が来た。
ちょっぴり寝坊してテントから出ると、かなり寒い。よく見るとカマドの近くに置いた紙コップの水が凍りついている。
ペットボトルの中身も同様だ。
釣りの為の一日である今日も良く晴れている。焚き火で体を温めながらパムとコーヒーで朝食を済ませて、釣りの準備をする。
・・と言っても、竿は昨日から伸ばしたまま河原に出しっ放しなので、俺達は着替えてウェーダーを装備するだけで釣りが出来る状況 なのだ。
釣りの準備に手間取らないのも泊り掛けのいいところだ。
昼飯とトイレ紙と予備竿を入れた小型のリュックサックを背負ってテンバを出発した。
テンバの前からいきなり好ポイントの連続だ。空も快晴で他の釣り人も皆無なので気分も良い。
前回ほどの入れ食いとまではいかないものの、6〜8寸クラスのアマゴが釣れてくる。
釣れてくるサイズも平均すれば7寸程度だが、前回のようにほぼ全てが7寸ではなく、6寸と8寸クラスが半々の割合といった感じだ 。
どの魚もまだサビが残り、ぱっと見ると型も悪くないように見えるが、よく見ると頭がデカく見えたりもする。
この川特有の体色もサビの奥に埋もれ、今年もこの魚たちの本来の姿をまだ見ることは出来ない。
暫く釣り上っていくと、前回来たときに切り上げたポイントに到達した。
特徴的な形の3m程の滝はポイントこそ少ないが、なんとか2匹釣り上げた。
3m滝を巻いてから先はもう、俺達的に未知の領域だ。ここからが本番である。
初めて踏み込んだS川源流域は落差が出始めてきて、2〜5mの滝が連続して現れるようになった。滝と滝の間の間隔は非常に短いが 、遡行は問題ない。
一つひとつの滝壺が大場所を形成していて、俺達も順番に探りながらの遡行になる。
ガイドブックによると魚止はそろそろ近いと載っているが、暫く遡ってもまだアマゴは釣れてくる。
・・というより、下流部に比べて魚影が濃くなってきているような気がする。
いくつもの滝を越えてようやく落差が落ち着いた頃、今度は両岸は狭まってきた。
ややゴルジュっぽい雰囲気にはなってきたが、渓はだいぶ荒れ始め、所々ガレている。
ここまで来るとさすがに魚影も薄くなってきたが、もはやガイドブックに載っていた魚止の位置は通り過ぎているようだ。
いったいどこまで魚がいるのか、非常に気になりながら釣り続けていると、源流部にしては比較的大きめの淵で良型と思わせるアタリ が来た。
今回初とも思える奮闘の末、無事にラディングされたのは28.5cmの真っ黒なアマゴだった。
これは前回の釣行も含めた俺達的なS川史上で最長寸更新サイズである。
近くでこの一部始終を見ていたナオキも、思わず「でけぇ!」と言った程の、こんな源流部からは想像もしていなかった釣果に喜びが 込上げた。
その後も更に釣り上ってみるが、ぽつりぽつりといった感じだがまだ釣れてくる。
しかし時間も15時半を過ぎたので、魚止を突き止めることは出来ないまま引き返すことにした。
川通しで下りながら各ポイントで活けキープを回収して行き、テンバに戻った頃には8〜9寸のアマゴを数匹キープ出来た。
今日も晩飯にアマゴの塩焼きを食える。そして更に1匹はアルミホイルで包んでバター焼に初挑戦だ。
幸い今日はほぼ無風なので焚き火もバーナーも問題なく使える。
焚き火の傍で体を温めながら、じっくり晩飯を作る。
そして暫く経った頃に出来上がった晩飯は今宵も最高の出来となり、初のバター焼も上出来に仕上がった。
22時過ぎにテントに入って就寝。
21日。最終日の朝が来た。
やはり今朝も冷え込み、昨日と同じように外の紙コップの中身が凍っていた。低血圧ながら頑張って焚き火を熾し、体を暖めながら朝 食をとる。
基本的に今日は帰ることに専念するだけだが、やはりテンバ周辺を軽く釣ってから帰還することにした。
食事を済ませてから全ての身支度を整え、竿だけ持って河原に出る。
しかし2時間程度の釣りではあまり釣ることができず、8寸クラスを4匹キープして今回の釣りに幕を閉じた。
そして山道を歩くこと3時間半で無事に車止めに到着した。
今年初の泊り掛け釣行はまだまだ冷え込んだものの、なんとか釣果を出すことが出来て良かった。
いつかは盛期にこの川に入ってみたい。