2005年8月8日〜10日 |
魚止はどこだ? |
(俺) |
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今回は仲間と休みの都合がつかなかったので、1人で渓流に行くことにした。そして目的地は、まだ一度も行ったことのないO俣にト
ライすることにしてみた。
調べによるとO俣には山小屋がなく、日帰りコースでは魚止まで探りきれそうに無い。俺は久々にテントを引っ張り出して、初めての単独
泊り込み釣行のパッキングをして車止めに向かった。
8日。AM5:20に車止めから歩き出した。久々にフル装備を担ぐと結構重く感じるが、初めての単独泊り込み釣行に少々興奮気味
だったので、それほど苦にならない。
天気は少々雲が見えるが、殆ど晴れのようだ。俺の標準装備であるカッパを脱ぎ、リュックサックを覆うように固定する。そしてやや角度
のある渓相を軽快に進んでいく。
大きめの石ばかりの河原を暫く行くと、変わった形の堰堤が現れた。いいポイントがあるのかな?・・と、近づいてみたが貯水もなく
釣りをするような場所でもなかった。
水の色自体は悪くはなさそうだが、ここまではまだ魚影を確認出来ないままだ。
だんだん陽が高くなってきた。ガイドブックのコピーを見ながら遡行と休憩を繰り返しているうちに、だいぶ暑くなってくる。渡渉に 苦労するところはまだ特にないが、あまり意味の無い渡渉をすることによって涼しさを得たりして行く。
だいぶ目的地まで近くなった頃、少しずつ魚影が見えるようになってきた。
基本的に初めての川へ行く時はまずテンバに辿り着くことが最優先なので、今回もこのO俣の上流部の某支流出合までは歩きに徹しな
ければならない。だからちょっと魚影が見えたくらいでは、簡単には竿を出す訳にはいかないのだ。
今回も岩魚っぽい魚影を横目に先を行くが、とりあえず魚が確実にいることを知って一安心だ。
そして9:50頃になってようやく目的のテンバ予定地に到着した。ガイドブックに載っているとおり、某有力支流も釣りになりそう である。
とりあえず支流出合の上流側の一段高い場所を軽く整地して、早速テントを設営する。久しぶりにテントを組んだが、すんなり完成さ せる事が出来た。
そして2泊分の薪も拾い集め、晩飯の下準備まで済ませておく。時間はまだまだ昼前だが、ここまでやっておけば夕マヅメまで目一杯 釣りが出来る。軽くパムを喰らってから、いよいよリュックサックから竿を出して釣りの支度をする。
とりあえず今日は支流を攻めてみることにしよう。テンバ付近の草原でバッタを数匹捕らえて、テンバのすぐ裏から竿を出してみた。
本日初の釣りに心をときめかせて探ってみる。この支流もまたなかなか落差があるのでポイントはハッキリしてる。
暫く経ってようやくHIT。本日初・・というか、俺的にO俣初ヒットは6寸クラスのハイブリットだ。小さいうえに微かな白点・・ 。ちょっと凹んだが、リリースして仕掛けを振り込む。
そしてまた少し経ってから、今度は7寸程のハイブリットがHIT。うーん・・この川も日光の血が混じっているのか・・。再びリリ ースして先へ進んでみる。
思いのほか魚影が薄く感じられる。いくつか滝を越えて釣り上ってみたが、あまり数が出ない。そのうえサイズも7寸以下ばかりで、 キープも出来ない。
今夜の肴が心配になった俺は15時頃になって支流の釣りを諦め、テンバ付近の本流でキープを狙うことにした。
テンバまで戻り、目の前の本流で竿を出す。こちらはまだ角度が甘く、滝ではなく落ち込み程度の好ポイントが連続している。
バッタを針に刺して放り込む。
数投目でなかなか元気がいいアタリがきた。そして釣れたのはオレンジ色が目立つ8寸のハイブリットだ。ようやく1匹キープ出来た 。
やはり本流のほうが数・型共に良いようだ。その後も7〜8寸の岩魚が連続して釣れて、ついに餌が無くなってしまった。
まだ明るいので、仕掛けを替えてみることにしよう。実は出発する前にナオキが毛鉤セットを貸してくれたのだ。シーズン的に使える はずだから試してみよう。
餌釣りの仕掛けの針だけを毛鉤に交換して仕掛けを振り込んでみる。小さなオモリがついているのでナチュラルドリフトを続けるのが 難しいが、数投目にしてついにHIT。
俺的に初めての毛鉤で釣れたのは6寸のチビハイブリットだ。当然リリースだが、まさかこんな毛鉤で釣れるとは思わなかったので嬉 しい。
18時頃になり、竿を仕舞って晩飯の準備を始めた。テンバの前の釣りでだいぶ時間を費やしたが、結局キープは1匹のみ。今日釣れ
たのは6〜7寸が約10匹と8寸程度が2、3匹だ。なかなか貧果である。
米を炊き、お湯を沸かしながら唯一のキープを遠火でじっくり焼きあげる。
今回も晩飯はレトルトカレーをかけて頂く。陽が山の向こうへ沈んでいくのを見ながら、涼しい河原で暖かい晩飯を食う。言うまでも ない美味さだ。
そしてカレーの後は星を見ながら焼酎とイワナを頂く。今回のお供は紫蘇風味の焼酎である。初めて味わったが、なかなか良かった。 半分は明日の為に残しておかなければ。
話し相手のいない俺は自然に溶け込むように黙々と呑んでいたが、20時半頃にはテントに入って明日に備えた。
9日の朝がきた。AM5:00に起きたが、テントの外は小雨がパラついているので再び寝袋に潜り込んだ。しかし昨夜早くに眠りに ついた分二度寝は出来ず、6時には諦めてテントの外に出た。
幸い小雨はすぐに止み、空は晴れ間が戻ってきた。パムで軽い朝飯を済ませて釣りの支度をする。今日は丸一日かけて釣りが出来るの で、軽装で魚止を目指す。
7時過ぎにテンバを出発。昨日釣った区間を飛ばしつつ餌を捕りながら本流を釣り上る。
餌はバッタの他にコガネムシのような小型の甲虫と、蛾のような虫だ。日中はすばしっこいバッタも、朝の涼しい時間帯は動きが鈍い
ようだ。
意外と簡単に餌をキープすることが出来た。
少し釣り上ったところでバッタに本日初HITがきた。なかなかの手応えであがってきたのは8寸クラスのイワナだ。
昨日の釣果に慣れてしまったせいか、8寸がちょっと大きく見えてしまうのが情けない。
しかしよく見ると、白点が無い。
久々に・・今シーズン初の大和岩魚が釣れた。
こいつはキープしてもいいかな。
河原の水溜りを石で囲って、活かしておく。
更に釣り上ると川の落差が増してきた。
3〜5mの滝が連続して現れ、そのたびに滝壺が好ポイントを形成していてそそられる。
暫く釣り上って10時近くなった頃、とある滝壺で小型の甲虫の餌に良型がHITした。
しかし水中で一瞬魚体が翻ったと思ったら、竿は急に跳ね上がって軽くなった。痛恨の針外れである。
白っぽい魚だった。サイズもこの川に来て初めての大きさだろう。ここから魚の姿は見えないが、魚が逃げてしまうほどのバラシ方じ ゃあなかったはずだ。
すぐに同じ餌を針に刺し、同じラインを流してみる。
すると間髪入れずにHIT!絶対同じ魚だと感じさせる重い引きだ。
お世辞にも広いとは言えない滝壺の中で未知の相手をコントロールしながら泳がせる。もし滝壺から下流に走られたら、その下の3m 程の滝に流れてバラシかねない。
なんとか慎重に泳がせて相手のスタミナをロスさせて、ようやくランディングに成功。なかなか大きいイワナだ。
そして測定の結果、36cm。白点は全く無く、パーマークも消え失せた白っぽい魚体。顎は鉤状に曲 がっている。
今までこの川で8寸以下の魚ばかり相手にしてきた俺にはあまりにも大きな釣果である。一人ではしゃいでしまった。とりあえずキー プ用の網を出して厳重に活けキープにしておく。
先ほどの尺オーバーの余韻も冷めないまま、更に釣り上る。陽は高く昇り、空は快晴である。
尺イワナが釣れてからは再び8寸程度までサイズが落ちたが、ぼちぼち釣れてくる。ここまで釣り上ってくると完全に大和岩魚だけが 釣れるようになってきた。
昼近くなってだいぶ源流域まで来た。ガイドブックのコピーを見る限りでは魚止とされる滝が近くなっているようだが、何か様子がお かしい。とりあえず釣り上るが、もはや魚影が殆ど確認できない程の細流になってきた。
更に先に進むと右岸側から立て続けに2本枝沢が入ってきているところまで来た。ここまで来るとかなり角度があって、振り返ると今 まで上ってきた渓相が下の方に伸びていてゾッとする。
しかし・・困ったことにガイドブックのマップと実際の渓相が違うことに気がついた。
ガイドブックのコピーには右岸側に本流が記されているのに対して、実際はどう見ても左岸側に反れていく流れの方が本流に見える・ ・というより、右岸側に見える2本の枝沢はガイドブックには載っていないうえに水が枯れているのだ。
魚止まで確認して釣ることを今回の目的にしている俺としては、非常に困った事態である。右岸側の2本の枝沢のうちどちらかが本流 だとしても、ここから見える範囲では完全に水が無いが・・もっと遡行すれば水が復活して魚止が現れるのだろうか?しかしものすごい角 度のゴーロになっていて気が進まない。
そして実際に水が流れている左岸の方はちょっと先の方に滝が見える。うーむ・・魚止はどっちなんだ・・?
暫し考えた結果、実際に水の流れている左岸側を釣り上ることにした。過去のガイドブックよりも、今見ている現実を信じるしかない だろう。
しかし細流と化した流れには既に魚影は無く、8m程の滝の壺を探ろうにもポイントと呼べるスペースは殆どなかった。
・・もうここが魚止でいいよなぁ・・?
信じていたガイドブックに裏切られて魚影の無い急勾配を釣り上ってきた俺は、もはや自分で魚止を決めこむしかなかった。
撮影をしながら滝上からO俣を見下ろしてみる。実に恐ろしい角度である。俺は高所恐怖症ではないが、スリルさえ感じられる。
(Go君ならチビるな・・。)
一服して景色を目に焼き付けてから川を下った。
その後無事にテンバに着いてから晩飯の支度をしたりまったりしながら時が流れたのだが、晩飯が出来上がる頃に夕立がきてしまった 。慌ててテントの中へ避難し、テント内で食事をする。
晩飯の後もなかなか降り止まないので、テントの中から真っ暗な外を見ながら晩酌だ。今宵も紫蘇風味の焼酎で川のせせらぎを肴にし
て呑む。
本当の魚止を探れたのかどうか定かではないのであまりしっくりとこない感じだが、尺2寸近い大和岩魚を釣ったことを思い出すともはや
どうでもいいかな・・。
焼酎が無くなった21時過ぎに就寝。
10日。AM5:00の携帯目覚ましが鳴る直前に、テントを叩く雨の音で目が覚めた。
なんてこった、いきなり降っているとは。
今日は身支度を整えて帰るだけの予定である。急ぐことも無いので再び寝袋に潜り込んで二度寝した。
再び起きたのは6:30頃だ。幸い雨は小雨になっている。急いでテントから出てお湯を沸かし、速攻でカップ麺の朝飯を食らう。
そしてテントを回収して全ての身支度を済ませ、再び雨脚の強くなる中を2時間半かけて下山した。
今回俺は初めての川で生涯初の単独泊りがけ釣行を実行したわけだが、やはり1人で行くのはもったいない気がした。この感動を仲間
と共に味わってこそ、本当に楽しい釣行になるんだと思う。
でもまぁ、良い経験にはなった。次は仲間と一緒に行こう。