2005年5月13日〜15日 |
俺達的GW釣行 |
(俺・ナオキ) |
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今年になって初めての泊り掛け釣行の日程が決まり、俺達は前日夜のうちに目的地の車止に到着。5月とは思えないほどの冷え込みの 中、車内で数時間の仮眠をとった。
13日の朝が来た。寒さに耐えながら今年初のウェーディングシューズを履き、久々に重いリュックサックを背負う。目指すはS河内 源流だ。車内に行動予定を記した紙切れを残し、俺達は2泊3日の旅へと出発した。
暫くの河原歩きを経て、だんだんと川幅が狭まってきた。半年前に比べて幾つかの淵は深みを増し、ポイントが変わっているのを目の 当たりにしながら先を急ぐ。雪解けの影響なのか、水量は少々多い。
一応天気は晴れているが、無数に繰り返される渡渉で俺達の体は結構冷え込んできた。そろそろゴルジュが近づいてきたが、水量の多 さがちょっと気になる。普段は腹くらいまで水に浸かるポイントなんかは、どーなっているのだろうか?
そして間もなくゴルジュに到達した。俺達の前に最初の難関が立ちはだかる。高巻き不能な滝壷は案の定増水によって大型化していた 。深くなった滝壷周辺は泡で底が見えないので怖い。右の岩壁にへばりつく為、慎重に一歩ずつ前進する。
しかし予想以上に深い・・!今日初めて腰まで水に浸かってしまったが、まだまだ岩壁まで距離がある。前に進めばもっと深くなるし 、流れも強くなる。ここはとりあえずナオキに先を譲って、俺はその様子を見ながら、どうやってこの滝をクリアするべきか考える事にした。
もしかすると早くもここで遡行不能という結論になるかもしれない・・。そんな緊張感と、目の前の滝の重低音が響く中で、ナオキが 慎重に一歩づつ滝壷左岸側に前進していく。
身長180cmのナオキの体がみるみるうちに水に浸かっていく。やや増水した深さと流れで、かなり厳しそうだ。
そしてなんとか岩壁にへばりついた時は、すでに胸元まで水に浸かっていた。しかしまだ終わらない。
そのままその岩壁をへつって滝の横まで移動し、やっと岩壁を登って滝をクリアすることになるのだが、実はその岩壁がオーバーハン グになっているので楽には進めない。
暫くの間岩壁の手掛かりと足場を選びながら慎重にへつり、ようやく滝上に立ったナオキは寒さに震えながらも満足気な表情を浮かべ た。
そして俺も同じようなルートで前に進む事にした。一歩進む毎に本日の浸水記録を更新するのを肌で感じ取りながらも強引に前に出る 。予想通りかなりの水深と流れがあるが、更に寒さが体の動きを妨げることに気が付いた。
なんとか岩壁にへばりついた時は、俺も胸元まで浸水してしまった。しかし本当に大変なのはここからのへつりだった。
胸元まで流れに浸かった状態で岩壁にしがみついたままだが、足は川底には届かない。とりあえずなんとか水中の岩壁に足を引っ掛け
たまま、流れと寒さに耐えながら前に進む為の手掛かりを探す。
だが、2、3歩前進したところで手掛かりがなかなか見つけられずに膠着状態に陥ってしまった。両手とも指先の第一関節分の岩の窪みで
体を支えている状態なので長くは持たない。そして・・。
俺:「アヒッ・・!」
なんと水中で体を支えていた足が流れに負け、その勢いで両手共に壁から離してしまった!自分の体が流れに飲まれていくのをスロー
モーションで感じた。
しかしその一瞬で目に入った岩の窪みになんとか手が届き、即座に再び岩壁にしがみつくことができた。気が付くと首まで水に浸かり、め
ちゃめちゃ冷たい。
そして僅かに残った体力で強引に手掛かりを見つけ出し、ようやく俺も滝を巻く事が出来た。
しかし大きなリュックサックが浮力として働いたおかげで完全には体が沈まなかったものの、ベストの胸ポケットに入れた煙草は水死し、
衣類もずぶ濡れである。リュックサックも半分ほど水没したようで、暫くの間水が滴り落ちていた。
あぁ、今まで一度もコケたり滑落したことがなかったのに、ついに水没デビューしてしまった・・。
その後雨が降り始めたが、いくつもの滝を越えて昼頃にようやく目的地の山小屋に到着した。
久しぶりに訪れた山小屋は最近誰かが利用したらしく、キレイに整理整頓されていた。とりあえずいつものようにバルサンを発動し、 薪を集める。
2泊分の薪と晩飯の準備が整った15時頃、ようやく待望の釣りタイムである。今回は小屋の前を境に上流側をナオキが攻め、下流側
を俺が釣る。
小屋の前で適度に川虫を捕り、二手に分かれて釣り始めた。
しかしさすがに今日歩いてきたばかりの下流側はアタリがない。俺は早々に下流側のポイントを諦め、上流を攻めているナオキの様子 を見に行った。
するとナオキは既に4匹の岩魚をキープしていた。そのうちの3匹は尺岩魚で、残る1匹も9寸サイズだ。早くも満足気なナオキは、 残るポイントを俺に譲ってビデオ撮影を交代してくれた。
そして俺が釣り始めて間もなく本日1匹目の8寸岩魚が釣れて、次の1投で尺岩魚をGET。小屋から程近い場所で、俺達は早くも晩 飯のオカズを入手した。
予想通りの釣り応えに満足した俺達は早めに竿を仕舞って小屋に戻り、飯を食らって就寝した。
14日。少々寝坊して6時に起きた俺達は、軽い朝飯を済ませて河原に出た。今日は上流部を丸一日かけて釣りまくるという、釣りの
為の一日だ。
竿と昼飯とトイレ紙だけ入った小型のリュックサックを背負い、小屋を出発する。
幸い空は雲一つ無い晴天のようだ。俺達は歩き始めて30分程のポイントから釣り始めた。
川幅自体は広くはないが、ブッシュもそれほど気にならない。6.1mの竿を気兼ね無く振っていると、8寸クラスの本日初岩魚が釣 れた。少々離れたところにいるナオキの方を見ると、奴も竿を曲げている。幸先いいスタートのようだ。
ポイントだらけの渓を交互に釣り上っていくと、尺上混じりで次々と岩魚がHITする。
残念ながらどの魚も細かな白点が混じっているが、ある意味完全な天然魚なので気分は良い。
釣れるたびに笑みを交わし、キャッチ&リリースでゆっくりと釣り上っていく。
そのうち右岸側から某支流が出会うと、周辺のポイントの魚影がMAXに達したようだ。
一つのポイントから尺岩魚が連続してHITするところもあり、餌の供給が間に合わない。
さんざん釣っているうちに気付くと時計の針が16時近くを回っていた。爆釣モードは続くが、充分満足出来た俺達はこの辺で竿を仕 舞い、小屋に戻った。
今日は腹くらいまでしか浸水していないので特に寒くはない。ゆっくり晩飯を作り、カレーと塩焼きを食らってブランデーでKOされ て寝袋に収まった。
15日の朝がきた。最終日の今日は荷をまとめた後、軽く釣ってから撤退の予定だが、空はどんよりと怪しい色をしている。
珍しくナオキが寝坊したが、焚き火と食事をしてから荷物を片付ける。
しかし出発の準備を整えてから釣り始めようとした時、ついに雨が降り始めてしまった。
このまま降り続けて増水したらマズイ・・。しかし僅かに躊躇した後に出た結論は、“土産を釣ってから帰る”であった。
小屋の前から大きなポイントだけを選んでは、サクサクと釣り上る。
だが昨日通過した影響か、数・型共にあまり釣れてこない。結局9寸の岩魚をキープした時点で、増水を恐れて帰る事になった。
そして降ったり止んだりの空の下、数時間後になんとか無事に車に辿りついた。
今回は今年初の泊り掛け釣行となったが、一番おいしいシーズンにこのS河内に来れてよかった。お尋ね者にもならず、無事に下界に 戻って来れて満足のいく釣行となった。