2005年3月27日 |
魚止の向こう側 |
(俺・ナオキ・トライワさん) |
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唐突なお誘いを受けて3月27日、今シーズン2回目の渓流に行く事になった。
今回はナオキと、ナオキの職場の上司のトライワさんが一泊コースでN川へ行くということで、俺も急遽参加させてもらう事にしたのだ。
目的地はN川で、通常なら日帰りコースだが、今回は予てから注目していた魚止の更に上流を探ってみるという、実に魅惑的なプランだ。
これは一緒に参加させてもらうしかないだろう。
俺達は前日の夜にトライワさんの車に乗り込み、いつもの車止で朝を待った。
27日。AM4:30の目覚ましで起きた俺達は、車内で朝飯を食らいながら今日の細かいプランを練る。どうも翌日の天気が雨の確
率大のようだ。N川は増水の量次第では帰って来れなくなる危険性が高いので、一泊は諦めて日帰り強行ということになった。
予め準備してきた一泊用の装備を分解して、小型のリュックサックに最低限の荷を移す。
明るくなり始めた5:50。俺達は3人共ウェーダーを履き、軽装のまま車を後にした。空は晴れているが、体感温度は解禁日と同等 の寒さを感じる。
今日は一泊の予定を日帰りに変えた為、上流部の某ポイントまでは一気に歩いて時間を省略しなければならない。渓相の良さに惑わさ れる事無く、俺達はひたすら遡上に専念しなければならない。
1時間程歩き、一服するために腰を下ろす。ここはまだN川の中流部だが、解禁日に比べると雪は少し減っているようだ。そのかわり に川沿いの岩壁からは無数のツララが生えて(?)いて、渓の環境の厳しさを感じる。
各自一服ついでに、下界では見慣れないツララを撮影してから再び歩き出す。
歩き始めて約2時間が経過し、ある程度上流部に位置する4m程の滝に到達した。俺達的には、この時間帯にこのポイントに来ている ことが初めてだ。いつもなら昼頃にここで釣っている頃だろう。
ここからなら魚止はそれほど遠くはないので、ようやく竿を出しながら進むことになった。
まずは各自餌の調達をする。今シーズン渓流初釣りとなるトライワさんはミミズを持参してきたようだが、一応川虫も捕っている。解 禁日に比べて比較的大きいオニチョロがボチボチ捕れるようだ。
川から抜き上げたタモも凍ることはなく、前回よりもコンディションは良さそうだ。それぞれが適量の餌を確保したところで、ようや く釣り始める。
4m滝の滝壷は浅く広いポイントを形成しているが、毎度必ず釣れる必勝ポイントだ。俺とナオキはまだ竿を出さずに、トライワさん の初釣りを見守る事にした。
トライワさんが釣りを始めて間もなく本日初HIT。なかなか手応えのある感じで釣れたのは28cmのハイブリット。越冬してるの に型の良い岩魚だ。
シーズン1発目からの良型にトライワさんも嬉しそうだ。その後も更に8寸クラスを追加して、滝を巻く。
滝を巻いたところで、俺とナオキも竿を出す。相変わらず雪は残っているが、体感温度はそれほど寒くはない。
9時を回ったところで、俺的に本日1匹目が来た。こちらも28cmだが、まだ錆が残るハイブリットのメスだ。とりあえずリリースして
先を行く。
10:25になって、トライワさんが良型を釣ったようだ。タモを片手にこちらへ来て、満足気な表情をしている。タモの中を覗くと 尺はありそうな良型が入っていた。すぐに測定してみると、丸々とした31cm!
俺達的にN川史上最長寸を記録したこの魚は、まだ3月なのにこの型の良さは素晴らしい。
ハイブリットのオスだが顎はしゃくれ気味で、実に精悍な顔つきだ。トライワさん的にも絶好調な感じだ。
写真撮影の後、河原の端に石で囲いを作って活けキープして先を行く。
俺もナオキも8寸クラスを中心にボチボチ釣れてはいるが、さすがに尺は出ないまま魚止まで到達した。
暫くの間ナオキが魚止周辺を探っている間に、俺は改めてその周辺を眺めてみる。
下流側から見る範囲では魚止周辺はゴルジュ状になっていてとても登れそうもない感じだが、少し下の方から左岸側を大高巻きすれば 簡単に魚止上流に降りられそうな予感がする。
11:40。一通り探り終わったナオキが戻ってきて、竿を収納して一服。ここからが本日のメインだ。
3人で左岸の河原を上がって、山肌の道無き道を進む。最初は緩やかだった傾斜もすぐに急になり、登るのが大変になってきた。ここ は本当に人が来ないのだろう。踏み跡や獣道らしいものはまるで見当たらない。
30分程登った頃だろうか。それまでの急な傾斜が突然消えて、小高い尾根の稜線に出たようだ。ホッとしてその向こう側を覗き込む。
しかし覗き込んだところは見事な崖で、俺は思わず息を呑んだ。川は結構遠くに見えるが、とても降りられそうにない。周囲を見回し てもこの稜線伝いに激しい崖が行く手を阻んでいる。
とりあえずトライワさんを先頭に稜線沿いに更に登っていく。なんとか崖が無くなっているところまで歩けば、降りられるだろう。
しかしなかなか崖の終わりが見えない。仕方が無いので一度強引に崖を降り始めたが、途中で行き詰まってしまった。角度が急な上、 途中から岩盤が剥き出しの垂直な崖になっているので、ここは諦めるしかないようだ。
なんとか稜線まで這い上がり、今度は稜線伝いに下ってみる。少しずつ川のせせらぎが近くなってくるが、本当に川に降りられるか疑 わしく思えてきた。
13時になり、一度は諦めた大高巻きに希望が見えてきた。稜線伝いに下ってきた先の崖に、それまでの角度に比べて若干緩やかな所
を見つけたのだ。
木を伝って慎重に降りていくと、川がすぐ近くに見えてきた。これがN川の魚止上流部だ。しかし河原に降りるにはこの崖の最後の6〜7m
をなんとか降りなければならない。ここも垂直に近い岩壁だが、木も生えていないのでそのまま降りるのは厳しい。
再び行き詰まったと思われたが、トライワさんがロープを出してくれてなんとか無事に川底に降りることが出来た。
ついに俺達的に初となるN川の魚止上流部に到達した。時間は13:15。天気は快晴で、辺りはまだ 新雪が深く残っている。ハッキリ言って、人間の侵入をずっと拒んできたような雰囲気を肌で感じた気がした。ここに来ただけで既に感慨 無量である。
だが本当に知りたい事を今から探ろう。水量は魚止の下流に比べても特に変わらない程あり、渓相も落ち込みや小滝が連続していて申
し分無い。俺達はそれぞれ竿を出して未知なる世界を探りだした。
果たして魚止の向こう側に魚はいるのか、いないのか。
そして13:22。釣り始めて間もなく俺の仕掛けの目印が不審な動きをして・・ついにHIT!興奮を抑えながらランディングして
獲物を見ると、8寸ほどの真っ黒な岩魚だった。大和岩魚なのか?しかしよくよく見ると、うっすらと白点が混じっている。
うーん・・残念ながら昔放流された日光岩魚の血が混じっているようだ・・。ここまできてハイブリットとは・・。迷惑だけど、放流しに
来た人もたいしたものだ。
しかしその後すぐにトライワさんにもHITして、同様なハイブリットをGETしたようだ。そしてナオキにも9寸クラスが来て、間
髪入れずにトライワさんも連続ヒット。
ナオキの9寸は白点がちょっと目立つ変わった岩魚だったが、直後にトライワさんが釣ったのは全体的に黄色っぽい9寸。一瞬大和岩魚か
と思われたが、これも微かに白点が混じっていた。しかしどの魚も型が良い。
そしてちょうど一時間ほど釣り上ったところで、撤退の時間を迎えることとなった。川幅は少々狭くなってきたがまだまだ魚が釣れて いたので、本当の魚止を見る事は出来なかった。まぁ、今回はこれで充分だろう。
俺達は竿を片付けて、来たルートを戻る。ついでに活けキープしてあった魚を数匹回収して行く。帰り際にサルの群れに遭遇したりし てゆっくり下り、17時頃に無事車に到着した。
その後、車で某支流の河原まで移動。今日の快挙を祝いながらN川の恵みを食し、車内で眠りについた。
ナオキとトライワさんに感謝。