2005年3月1日

俺達的解禁‘05

(俺・ナオキ)



 今年もやっとこの日が来た。今年の渓流初釣りは昨年同様にN川だ。先日の下見で状況を把握しているので不安はないが、目的地一番 乗りを身上としている俺達としては、他の釣り人とのバッティングだけは避けたい。少々焦りながらも俺達は解禁前日の夜のうちに車止め に着き、車内で解禁日を迎える事になった。

 

 待ち遠しかった3月1日の朝が来た。
  AM5:45。俺達は異常な寒さの中でウェーダーを装備し、月明かりを頼りに歩き出した。幸い車止めに他の釣り人の車は来ていなかっ たが油断は出来ない。先行者がいてもかまわず後から入渓して追い上げてくる輩もいるかもしれない。
  俺達はピッチを上げながら目的地を目指して歩いた。

半年ぶりの渓流

 暫く歩き、ようやく目的地に着いた。1年ぶりのN川。過去の釣果は実に素晴らしい実績をあげているだけに期待は高まる。

 しかしN川は今年も去年と同じくらいの積雪で迎えてくれた。暫く歩いて体が熱くなっているはずだが、それを感じさせないほど気温 は低いようだ。

 銀世界と化した河原にはウサギや鹿の足跡が残っているが人間の足跡はなく、俺達が今シーズン一番乗りである事は間違いない。手足 の先が冷たくなってきたが、喜びと期待を体力に変換して更にに歩き続ける。

 そしてようやく一つ目の通ラズまで来た。ここはいつも滝壷の左側の岩壁をヘツるのだが、予想通り岩壁が凍りついていて危険極まり ない状況だ。

 そのままヘツるのは自殺行為なので、ナオキが石で氷を落としながら慎重に先に進む。

 決定的瞬間が訪れることなく無事に通ラズをクリアした俺達は、今シーズン初の餌捕りにTRYした。しかし、久々に触れたN川の水 は非常に冷たい。嫌な予感が過る。

 餌となる川虫がなかなか捕れないのは予想通りだったが、困った事に川から抜き上げたタモが数秒で凍りついてしまう。

 予感的中である。ここまで寒い時は魚も動かないのだ。去年の解禁2日目もこんな感じだったから実証済みだ。

俺的に半年ぶりのイワナ

 なんとか釣りが出来る程度に川虫を集めて、ようやく竿を出した。周りは雪だらけで結構寒いが、他の人間の気配がないので釣りやす い。

 半年ぶりの渓流釣りの雰囲気を楽しむが、先に釣り始めていたナオキの竿にはなかなか反応が出ないようだ。

 一つのポイントごとに入念に探っていると、俺の仕掛けに微妙な変化がでた。そして道糸と竿を伝わって、竿を持つ手に細かなアタリ が感じられる。

 逃がさないように針を飲ませるくらい長く待ってからアワせると、しっかり針掛かりしたようだ。
  たいしたサイズではないが充分泳がせて、久しぶりの渓流魚の引きを楽しむ。

 しかしいざ取り込もうとすると、仕掛けの強度が心配で引っこ抜くのが怖くなった。

 魚は7寸程度のようだが、1発目なのでタモを使ってでも確実にランディングするべきか。それとも男らしく引っこ抜くか。

 しかし迷っている間に魚は落ち込みを次々と下り、そのうちにラインが石に引っかかって結局バラしてしまった。
  初物をバラすとは・・情けない。

 それから暫く粘っていると再びHIT。今度はしっかりタモを使い、8寸のハイブリットをGET。半年ぶりに見たイワナは少し痩せ ていて、越冬の証のサビで真っ黒だった。

雪の中を釣り上る

 そこから少し釣り上ると、ナオキにも今シーズン初HIT。何度かバラした後だったので嬉しそうだ。

 9時を回ってからN川にも陽が差し込んできた。ここまでの釣果は本当に少ない。しかも食いが渋く、アタリが出てからかなり食い込 ませないと途中で針外れしてしまう。

 そのうちナオキが根掛かりの際に竿を折ってしまった。今日は予備の竿を持っていない為、ナオキは折れた竿をそのまま使って釣りを 続ける。

 ここまで思い通りに釣りが出来ていないので、俺達はより良いポイントを求めてサクサク釣り上る事にした。このN川は上流に行けば 行くほど魚影が濃くなる傾向にある。

 昼近くなって少々気温が温まっただろうか。かなり上流部まで釣り上ってきたが、釣果の方は期待していたほど釣れてはいない状態だ。

 周りの雪も一層深くなり、遡行が大変になってきた。

 昼頃、俺は根掛かりで仕掛けを失った際に休憩しながらナオキの釣りを眺めていた。

 しかしたまたま周りを見回した時、川から少し離れたところの山肌に人工的な何かが見えた気がした。

 落葉樹の雑木林はこの時期になると奥の方までよく見える。

ナオキの今シーズン初イワナ

 俺は竿と荷物を川原に置き、釣りをやっているナオキにも何も言わずに山肌を登りだした。

 俺達の知識では、このN川周辺に人工的な物は存在しない事になっている。さっき見えたものは何なのか。期待と不安が交錯する。

 それから程無くして、雪の雑木林の中にひっそりと建つ山小屋を発見した。外から見る範囲では10畳位ありそうな、割としっかりし ていそうな小屋だ。一体いつから在ったんだろう?

 小屋に近づいて周囲を見てみるが、周りに深く積もった雪には人の足跡は見当たらない。俺はビデオ撮影をしながら、入り口の引き戸をそ っと開けてみた。

 未知なる山小屋の中は荒れ果てていた。10畳程の広さで出入り口は一つ。コの字型に広がる座敷と真中にカマドの跡があり、形とし てはS河内の山小屋と同じスタイルである。

 しかし埃の積もった室内は一升瓶や缶詰、古いペットボトル等が散乱していて、壁の数ヶ所が破損して雪が雪崩れ込んでいる。

 最後に人が来て利用したのはいつなのか・・。座敷に転がるペットボトルを手にとってみる。
  現在では見なくなった懐かしいパッケージの商品だ。賞味期限を見ると“1998年4月”と表示されている。・・7年前・・か。

 せっかく発見した山小屋だが、ハッキリ言って利用価値はかなり低い感じだ。雨宿り程度しか出来ないだろうし、泊ったとしても壁の 穴から何が侵入してくるかわかったもんじゃない。

 ただ、このN川のかなり上流部に建っているので、夏場に使おうと思えば使えない事は無いかな・・。まぁ新しい発見が出来た。

 その後ナオキに報告して一緒に山小屋を物色した後魚止めまで釣り上ったが、魚止め周辺は陽が差し込まない地形の為凍りついていた 。

 結局魚止めの滝壷には竿が届かず、一つ手前の小滝まで釣って終了。

 今回は6〜8寸のハイブリットを俺が5匹でナオキは約10匹と、俺達的にN川史上初の貧果となってしまった。原因はやはり寒さだ ろう。

 魚影は何度も確認したが、魚の目の前に餌を流しても殆ど反応しないこともあったので、もう少し冷え込みが緩くなってから来たいと 思う。

 

解禁日キープ分
 


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