2004年8月11日〜13日 |
真夏の源流 |
(俺・ナオキ・マッサー) |
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やっとのことで3人揃っての泊り掛け釣行が実現した。今回の目的地は魚影・型ともに期待の持てるS河内。
マッサーにとっては初めての釣場になるし、俺としても以前入渓した時よりも奥地に行くことになっているので楽しみだ。
ただナオキだけは過去2回この川の奥地に行った経験があるので、今回はガイド役をしてもらうことになった。
11日の朝が来た。昨夜のうちに車止めに到着して車内で3人で寝たのだが、ちょっと暑くて寝苦しかった。
少し明るくなってきてから、パムを食らって出発の準備を整える。
天気は快晴のようだが、俺達の心はやや曇り気味だ。それは昨夜、この車止めのちょっと手前に1台の四駆が停めてあるのを見てしま ったからだ。
・・いつから来ているのか?何人パーティーなのか?単なる登山者じゃあないよなぁ・・?
先を越されていないことを願いながら、俺達は車から出発した。
土砂崩れで埋もれた林道を歩き出すと間もなく、山肌を削り落としたようなガレ場に来た。
ここは俺達兄弟が初めてこの川に来た時に危険を感じて引き返したポイントだ。
ガレ場の向こうを見ると、ブッシュの中に林道の続きらしい踏み後が見えるが、そこまでの60m(?)程の区間がナイスな角度で、 通過に手間取りそうだ。
まずナオキが慎重に渡り、無事に通過したのを見届けてから俺が渡り出す。急角度とはいえ、踏み後が出来ていて思ったよりは渡り易 い。
しかしガレ場の中央部に差し掛かったところで下を見ると、かなり下の方まで直滑降が続いていて、滑落したら死 ぬかもしれないと思った。
そして俺も無事に渡り終えて、順番が来てしまったマッサーがそろりそろりと動き出す。俺達の渡ってきたルートと動きを目の当たり にしたマッサーも、ぎこちない動きだったが何とか無事通過。
俺:「生きてて良かったな。(笑)」
マ:「もう二度と渡りたくねぇ。(笑)」
その後小規模なガレ場をもう一つクリアして廃道化した林道を歩き、出発から30分後にS河内の本流に降り立った。
水量は少し多いようだ。俺とマッサーの足元にはヒルが数匹貼りついていたが、被害に遭う前に無事払いのけた。
ここから暫くは河原歩きだ。
だんだん陽が高くなってきた9:20。某支流の出合が近づいてきた頃、上流から煙の匂いが漂ってきた。
この先に人が居るとしたら、あの四駆のパーティーに違いない。
俺達の目的地はもっと上流にあるので、この辺で火を熾しているとしたら先は越されていないということになる。
俺達はトキメキを隠せないまま、更に歩を進ませると・・。居た!某支流の200m程奥に、焚き火と3人のおっさん達が見える。
よしよし、ここから先は俺達の貸切だな!心の中の雲が晴れた俺達は、そのまま本流を歩きだす。
そして20分後、ゴルジュに到達した。俺はここの2番目の滝以遠は行ったことがない。どんなものか。
ガイド役のナオキが先頭を歩き、次々と現れる滝を巻きながら進む。
両岸は殆どが高い岩壁になってはいるものの、まだ川幅はそれほど狭くはない。
日陰になっているので涼しさを感じながら先に進むが、滝や淵の数々が良いポイントを形成しており、ついつい竿を出したくなってし まう。
しかし今日は歩きに徹しなければならないので、我慢だ。
ゴルジュを抜けて、11:43。やっと目的の山小屋に到着した。
初めて来たこの小屋は8畳間位の広さで、出入り口は一つ。コの字型の座敷には薄汚いビニールシートが敷いてあり、奥の方にはダニが 織り込まれていそうな布団がヒモでぶら下げてあった。おまけに隅の方は、かなりゴミが溜まっている。
とりあえず備え付けのボロいほうきで軽く掃除して、バルサン発動。
小屋を閉め切っている間に河原の周辺で2泊分の薪を集める。
さすがに3人いると薪集めも早い。軽く昼飯を食らい、晩飯の準備まで済ませたところで、お待ちかねの釣りTIMEだ。
バルサンの待ち時間もあるので、夕方まで竿を出すことに。
小屋の前から上流に向かって俺とマッサーが釣り上り、ナオキはテンカラで釣り下る。俺はマッサーに先を譲って様子を見ながら竿を 出す。
餌は今回に限って市販の蜂の子を持参してきた。川虫は時期的に当てにならないと思ったからだ。
しかし・・釣り始めて1時間経過しても、2人共釣れない。魚影はあるはずなのだが、どうしたことか?
そのうち釣れないのと疲労が重なってマッサーがダウン。
凸凹した河原に器用に身をフィットさせて、エンディングモードに入ってしまった。
しかしこれで俺も集中して自分の釣りが出来る。陸生昆虫(蛾)を捕まえて針に刺し、2、3回振り込んだ時・・!
水面を流れていた餌に“ボコッ”と、水中から何かが襲いかかった!待望の本日初HITだ。
なかなかの引きを楽しませてくれたのは、意外にも8寸級の岩魚。もう一回り大きいかと思わせるほど元気が良いが、この魚も白点が
混じったニッコウ系の岩魚だ。
とりあえず晩飯用にキープする。
そしてその後、7寸と9寸クラスを追加して小屋に戻った。
ナオキは坊主だったようだ。
まぁ今日歩いてきたばかりのところで竿を出しても、期待出来ないのはわかっていたが・・上流を譲ってくれたことに感謝しながら 晩飯&晩酌を始めた。
そして素晴らしい星空の下、河原で明日の釣りを語ってから小屋に戻って眠りについた。
一夜明けて12日AM6時前。俺とマッサーが揃って寝坊して河原に降りていくと、既にナオキが火を熾して朝飯の支度をしてくれて いた。
俺達は基本的に血圧が低いので、朝は動きが鈍い。河原で手抜きカップ麺を食らい、釣りの準備を整える。
今日も雲一つない快晴のようだ。そして丸一日源流の釣りを楽しむため、7:20に小屋の前から出発した。
上流へ向かって歩くと、間もなくゴルジュに到達した。ここもまた両側が高い岩壁になっているが、川幅がかなり狭い為、昨日のゴル ジュよりも迫力がある。
しかも狭くなっているだけに、流れが集中して遡上し辛い。ナメ状でつるつるした川底の端をへつるように、慎重に進んでいく。
マジックソールが威力を発揮する。
ゴルジュ内部はかなり暗く、湿った風が出ていて撮影もなかなかうまくいかない。
程無くしてなんとかゴルジュの奥部に行くと、2m位の高さの滝に行く手を阻まれた。
一見しただけでは直接登る術はちょっと見当がつかないが、その脇にはナオキが前回置き去りにしてきたロープが残っていたので、そ
いつにお世話になって無事に滝をクリアした。
ナオキの奴、よくこの滝を一人で登ったな・・。
難関を乗り越えた後、俺達の前には素晴らしい渓相が現れた。
ここから今日の釣りがスタートだ。各自釣り竿を出して、早速始める。
俺とマッサーは餌釣りで、ナオキはテンカラでのスタートだ。
3人で1本の川を攻めるのは初めてだが、ここからは河原が少し広くなっているので、難なく交互にポイントを譲り合って釣りができる。
しかしどうしたことか、釣り始めて暫くの間は3人共アタリがない。こんなところがスレているものだろうか・・?
そして40分経過した頃、ようやくナオキのテンカラに本日1匹目がHITした。
8寸程のハイブリットだが、型は良いようだ。やっと魚が出てきて俺達の士気も高まってきた。
そのうちマッサーにもS河内初岩魚が出た。
8寸程の、やはりハイブリットだが、そんなことはもうどうでも良い。なんとか釣らせてあげられて一安心だ。
俺も8寸級をボチボチ釣りながら、更に先に釣り上る。
蜂の子ではやはり食いが渋いので、陽気の良い河原を舞う蝶やバッタを捕らえては餌にしていく。
特に日向の草原にはいろいろな陸生昆虫がいるので、餌不足にはならない。
水面を割って魚が餌を捕食するのを見ると興奮するが、その餌に自分の仕掛けが仕込まれているのだから、その快感も一入(ひとしお) だ。
11時前頃からだんだん魚影が濃くなってきたのを感じてきた。
ビデオ撮影をしていると、ファインダー越しにマッサーが竿を弓なりにして奮戦しているのが見えた。そのまま撮影していると、なんとか魚を手元まで寄せて無事ランディング。
マッサーの驚いたような顔が魚体の素晴らしさを物語っているようだ。タモの中を見ると、なかなかのメスの岩魚が入っている。
そして計測の結果、31cm・・!マッサー生涯初の尺岩魚をGET!!
その後も昼食を挟んで各自連続HIT。俺にも今回初の尺岩魚(33cm)が来て、直後にナオキもテンカラで尺岩魚をGET!
13:40になって、またゴルジュに到達した。入り口の滝壷が好ポイントを作っているので、ここでも竿を出す。
そしてナオキのテンカラを撮影していると、なんと振り込んだ毛針に一発で岩魚が飛びついてきた!有無を言わさずに引っこ抜くナオ キ。
サイズは8寸程だが、腹がオレンジ色に染まったきれいなハイブリットだ。素晴らしい映像が撮れてちょっと満足。
恐るべし、テンカラ。
そのまま魚影が濃いゴルジュをコンスタントに釣り上っていく。
型モノもいくつか釣れたが、いちいち計っていられなくなったので記録はない。
そのうち家ほどの大きさの石がたくさん現れて遡行し辛くなってきた。
15時になって、遡上止めらしい滝を釣ったら、少々早いが本日の釣りは終了とする。
竿を仕舞い、川通しで下って1時間でテン場に到着した。
火を熾して米を研ぎ、魚を捌く。暗くなる頃には晩飯を食べ終わって、魚を焼きながら軽い晩酌だ。
昨晩同様の満天の星を見ながら、今日の釣りを振り返って呑んだ。
今夜もこの小屋に泊まり、明日はゆっくり下って帰る予定。
13日の朝が来た。俺は今朝もちょっと寝坊してAM5:40に起きてしまった。
今日も快晴の様でなによりだ。時間があるので、今日の朝飯は米を炊いていただいた。
8:20。全ての身支度を整えて、2日間お世話になったこの山小屋を出発した。荷も心も軽く、足取りは快調だ。
最終日の行程では竿は出さずに、無理をせずに歩きに徹する事にした。
そしてゆっくり下ってきて14:30、ようやくマイカーの元に到着。
長いようで短く感じた2泊3日は、3人とも尺岩魚をGETして、怪我も無く、晴天に恵まれて満足だった。
それにマッサーの「また行こう」発言が何よりも嬉しかった。ガイド役を買ってくれたナオキには、何かと世話になった。ありがとう 。