2003年9月13日〜14日

初心者パック

(俺・マッサー)



 幼馴染みのマッサーと数年ぶりに劇的な(?)再会を果たしてから2ヶ月。2人で渓流へ行くということで話がまとまった。

マッサーはここ暫くの間、海でジギングばかりやっていて渓流は未経験だという。

 今回は俺の竿やリュックを貸してやって1泊コースでK川に行くことになった。
  初釣行でいきなり未知の山奥に泊りがけで挑むとは、さすが俺が見込んだ男だ。

 

 当日AM2:00。マッサーの家に迎えに行き、メールで到着を知らせるが返事がない。

 暫く電話を鳴らすとようやく出てきたが、どうも調子が優れないようだ。
  それでもマッサーと荷物を積み込んで走り出す。話によるとストレスが溜まって眠れず、遅くまで飲んで待っていたらしい。今から山に行 くってのに。

 結局目的地に着くまで3回、車を停めては公害コマセを口から撒いていた。おかげで俺の車はほろ苦い胃 酸臭さが充満した。

小雨のK川

 車止めに到着してもまだマッサーの調子は変わらないが、5:30頃車を出発する際に意識を釣りに集中させてみる。
  天気は生憎の雨模様だが、構わず歩き出す。

 俺は渓流シューズに軍パンとカッパの上着といういつものスタイルだが、マッサーの初渓流スタイルは・・。
  ゴム底のスニーカーと軍パンの上に会社の作業着、更に黄色いカッパの上下と仕上げは黒いウェスタンハットだ。

 どう見てもミスマッチ・アンバランスだが、マッサーがそのウェスタンハットを被ると妙に似合う。

 それに眼鏡に頼るものとして、雨から視界を守れるので意外と良いかもしれない。

 釣り場に着いていつも通りエサ捕りから始める。俺がいつものエサ釣りの支度をしていると、マッサーが取り出したのはルアーロッド だ。

 今日の釣り場はルアーは不向きだってあれほど言ったのに・・。そして雨の中バス用ルアーをキャストし始めた。

 しかしK川の流れに深みはなく流れも速いところばかりなので、ルアーは効果を発揮することなく30分で片付けられた。

 雨が降り続ける中、マッサーは俺の予備のエサ竿で釣り始める。

 暫くは反応がなかったが8時を回る頃、マッサーに待望の初イワナが来た。

 12〜13cmの小さなハイブリットだが、とりあえずなんとか1匹釣らせてやれて良かった。

 ぽつりぽつりと小イワナを釣りながら進むと、前方の淀みの底石の上に尺イワナが泳いでいるのを見つけた。

マッサー的初アマゴ

 マッサーを呼んで釣らせてみる。イワナはこちらに気付いていないようで、隠れる様子もなくチャンスである。

 しかしマッサーがいくら粘っても釣れないようだ。代わって俺も狙ってみるが、川虫を目の前に流しても全く無視で食い気がない。

 暫く粘ったが俺にも釣れず、後ろ髪を引かれる思いでそっとその場を後にした。

 8:30を回ったところでマッサーの竿が軽く曲がった。そして雨の中引っこ抜かれたのは15cm程のマッサー的初アマゴだ。

 朱点がくっきりと出たキレイなアマゴにマッサーも喜ぶ。

 よかった、これでアマゴとイワナの両方釣らせてやれた。あとはサイズだけだな。

 だがその後もサイズは出ないまま時間が経ち、12:00を目処に山小屋を目指して歩きに専念する。

 そのうち雨は止んで晴れ間が広がったが、歩き始めるとマッサーの様子はすこぶる悪そうになってきた。

 休憩しては「もうちょっとだから。」と励まして歩き、13時過ぎになんとか山小屋に到着。

 初めての山小屋を見てマッサーはどう思ったか。とりあえず誰も居ないので小屋の外に荷を下ろし、小屋の真ん中にバルサンをセット する。

 実はこの小屋はカマドウマがいっぱいいるので対策を練ってきたのだ。

 バルサンを発動して小屋の入り口を閉めきり、2時間程近くの水場で竿を出す。

晩飯作成中

 水場では下の方よりもサイズが上がって、俺は7寸程のハイブリットを釣った。リリースサイズだが晩飯用に2匹キープした。

 そして少しだけ釣り下ったマッサーが25cmのハイブリットを釣って即キープ。
  よかった、なんとかサイズが出た。

 バルサンの待ち時間が終わって小屋に戻り、出入り口を全開にして換気を行う。少々薬品臭くなったが、効果は如何なものか。

 とりあえず魚を捌き、米も磨いで早めの食事の準備をする。

 しかし準備をしている間に登山目的の学生らしい2人組が来て、同じ小屋に泊まる事に。

 更に日暮れ前にまた別の登山パーティーの3人組が来て、小屋の前でテントを張りだした。アッという間に賑やかになってしまった。

 18:50、俺達は晩飯を済ませた。米は良く出来たが、マッサーの岩魚は半生に焼いてしまったようだ。
  焼酎をコーラで割って流し込む。

 そうこうしているうちに再び雨が降り出したようだ。適当に眠りにつく。

 

 14日になってAM5:30に起きた。バルサンの効果でカマドウマに悩まされることなく眠れた。

 カップ麺で朝食を済ませて用を足す。

 今日は帰るだけだが、晴れているので適当なポイントで竿を出しながら帰るという予定で8:15に荷をまとめて小屋を出る。

 踏み後が川に近づく度に竿を出そうとするが、釣り上ってくる人達が3組も来ていたので殆ど竿を出さずにだいぶ下ってきた。

慣れてきたマッサー

 AM9:30を回ってやっと人の居ない区間を見つけて竿を出し、ポツポツと小岩魚を釣っていく。

 マッサーも釣り方のスタイルがサマになってきて、身を低くしてポイントにアプローチしている。

 そして釣り下っているうちに昨日の尺イワナが居たポイントまで来た。

今日は3組も釣り人が通っただろうからさすがに居ないだろう、と思ったら驚いた事になんとまだ居るではないか。

 今度こそ釣ってやらねば。昨日と同じように慎重に狙ってみる。しかしマッサーも俺も昨日と同じで釣れなかった。

(エサ食わないのかな・・。)

 諦めてただただ眺めていると、突然そのイワナが浮かび上がってライズした。一応食い気はあるようだ。エサを変えてみよう。

 2人で陸生昆虫を探し、なんとかマッサーが蛍のような虫を捕獲した。

 そして俺がそれを針に刺してイワナの上を流すと、一発で喰らいついてきた。

 充分に泳がせてランディングしたのはパーマークが消え失せた褐色のヤマトイワナ36cmだった。

 その後は特に釣果もなく下ってきて、出合付近の本流でルアーを試したが、見事に玉砕して帰路についた。

 

 こうしてマッサーの渓流初釣行は幕を閉じた。

 今回は約束を守るために不調ながらの釣行を強行してくれたが、ぜひもう一度一緒に行って体調の良い時にもっと大きな魚を釣らせてみたい。

 
尺岩魚



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