2010年6月25日〜26日

衝撃の外道

(俺・ナオキ)



 夕マヅメの頃、前回に引き続き再び某堤防へやってきた。今回はナオキと2人での釣行だ。

 今日は朝からの曇り空だったが、気温も海面も穏やかそのものだ。ほぼ無風な環境の中で俺は根魚狙いの支度をして釣り始め、ナオキは大型底モノの釣座を構えて準備に 取り掛かった。
  曇と港の明かりで日没の時刻を迎えた事に気付かなかったが、今宵は裸眼でもだいぶ視界が良い。

 釣り始めて程なくして今宵もリリースサイズのカサゴから釣れ始めたが、前回に比べると若干アタリが少ないような感じか。

 リリースを繰り返しながら探り歩き、そのうちナオキの釣座に到達した。

 軽い休憩ついでにナオキの様子を見ていると、頻繁にウツボを釣り上げている。どうやら本命を釣るまでの間の掃除といったところのようだ。大物が掛かってくれれば良 いが。

 その後も俺はひたすら根魚を求めて歩き、22時を過ぎた頃にようやく前回と同様の27cmのカサゴをGET。しかしやはり今回はキープサイズが少なく、22cm以 上のカサゴは4匹しか得られなかった。

 ナオキの方も結局25時半までの間、この付近のウツボを無数に処理しただけで本命にはめぐり合えないまま諦める事となってしまった。
  そして今回は朝マヅメまでの間睡眠を取るという事で、俺達は堤防上で雑魚寝を決め込んだ。

 

 翌朝、AM4:00にセットした携帯の目覚ましで起きると、夜露による湿気が鬱陶しい。しかし行動開始には丁度良い時間だったようで、俺達は軽く朝飯を喰らってか ら各自の釣りを始めた。

 今回俺は、前回釣り逃がした獲物を獲る事をメインとして来ていて、この朝マヅメがそのチャンスだ。滅多に使わない2号の磯竿を引っ張り出してきてウキ釣りの仕掛け を組み、極細のハリスに餌をつけて釣り始めてみる。

 少し離れた場所ではナオキがごっつい仕掛けの石モノ狙いの竿を準備してから、別の竿で落とし込みをやり始めたようだ。

 徐々に周囲が明るくなっていくが、昨日からの曇り空が続いていて思いのほか薄暗い時間が長い。
  ようやく海面の様子が目視出来るようになってはきたが、俺の釣座付近では前回居た筈のあの魚達の姿がない・・。イカン、奴等はどこへ?
  ナオキの方へ目をやると早くも竿を曲げている。

 暫くの間、見失ってしまった本命を願いながら俺はウキ玉を凝視し続けていると、10分程経った頃にウキに変化が現れた。

 本日初のアタリに浮かれつつも、繊細な仕掛けをチギられないように慎重にやり取りをした結果、釣り上げたのは20cm程の豆アジだった。ぐはっ、本命じゃない。
  一人苦笑いを浮かべながらナオキの方角を振り返ってみると、いつの間にか遠くへ移動してまたも竿を曲げている。

 どうやらナオキの方はいつも通り好調のようでなによりだ。それに比べてこっちの状況ときたら最初の豆アジ以降もムツやイサキ、キンギョの稚魚達が入れ掛りで外道カ ーニバルだ。俺の本命達はどこかへ旅立ってしまったのかもしれない。

 そんな状況にやや放心状態になっていると携帯電話が鳴った。ナオキの方を見ると竿を曲げたまま固まっている。

ナ:「クソデケー石鯛掛かった・・。」

 珍しくナオキから電話でランディングの要請だった。

 これは楽しみだということで俺はタモを片手に釣座を離れ、急いでナオキの所へ向かった。

 そして間近でその奮闘振りを聞いてみると、なんとこれが朝1発目の獲物だという。俺が外道カーニバルの間にチラチラ目撃していたのはずっとこの1匹とのやり取りだ ったとは。

 しかし俺が駆けつけてからもなかなか獲物が浮いてくる気配が無く、ナオキも仕掛けが細いから無理にラインを巻けないという。
  強烈に曲がったナオキの竿先から伸びるラインはやや沖に向かって海面に入っているが、一定のペースでぐんぐんラインを引き出す様は過去に見た事がないような底力を感じ させる。

 それから暫くの間その奮戦を応援していると、どうにか獲物がヘバってきたようだ。徐々にナオキが走らされる場面も減っていき、ポンピングで少しずつ寄せていく。

 そしてやや濁り気味の海中に大きな横縞模様が翻った時、その大きさに思わず衝撃を受けた。コイツは絶対にバラす訳にはイカン。

 姿が見えてからも更に数分を要してから遂にタモ入れを敢行。しかし45cmのタモ枠では尾まで入り切らず、最後まで緊張させられたが・・。







衝撃の1発





ナ:「よっし・・!!」
俺:「おめでとう、すげえなあ〜!」

 タモ枠からはみ出す巨体を遂に堤防上へ引き上げる事に成功。デカい・・!これは俺が今までに見た石鯛の中でもベスト3に入る大きさだ。
  ナオキも細い仕掛けで緊張しっ放しの状況から抜け出し、そして自身初となるサイズの石鯛を前に、力の込もったガッツポーズだ。

62cm 4.0kg

 間近で見るとその縞々ボディーはどこを見ても迫力に溢れ、特に黒くなった口元などは凶悪な程の歯をしていた。俺達は暫し時の経過も忘れ、魚体の観察や撮影に夢中に なってしまった。

 ストリンガーに掛けるのはさすがに恐怖感を覚えたが、フックを2つ利用する事でとりあえずは無事にキープする事が出来た。

 それにしてもナオキがこの後の釣りに身が入らなくなってしまったのは皮肉と言うべきだろうか。
  本来ならば伊豆仕様の石モノ竿の準備をしてあったのに、それを出す前にハリス3号で62cmを釣ってしまったのだから。

 しかし雑魚ばかり相手にしていた俺はコレに触発されてしまったので、磯竿は放置のまま前回同様の落とし込み風味の仕掛けを作ってすぐに釣り始めた。
  ナオキも一応は落とし込みを継続しているようだが、半ば放心状態の惰性で竿を持っている感じで気合が感じられない。

 俺も黒鯛でそれなりの引き味を楽しむ為、今日もイワガニで仕掛けを沈ませていく。
  すると数分後、沈み行くラインが静かに引き込まれて何かがHIT。なかなかの引き応えで楽しませてくれた獲物は45cmの黒鯛だった。

 ようやく今回初めてスカリを投入して鯛をキープしたが満足出来ず、その後も暫し探り続けて黒鯛の37cmと石鯛の泣き尺サイズをGET。俺の石鯛はまだまだ小型だ が、基本的に普段釣り慣れていない獲物なので今回はキープさせてもらおう。

 そしてその小型石鯛を最後に俺の欲望も満たされて今回の釣りを終了とした。帰り際に雨が降り始めたので丁度良い引き際だったようだ。

 今回もそれなりの釣果を出したはずだが、さすがにナオキの1発の前では全てが霞んでしまう。恒例の釣果の撮影の際にも、うっかり昨夜のカサゴ達を入れ忘れてしまっ た辺りにその心境がよく現れている感じだ。

 

 それにしてもこれでまた俺達の歴史に新たなる記録の1ページが追加されて俺も満足である。後の計測で4kgを記録した今回の目玉はナオキにとっても一生モノの記念 となった。
  梅雨はまだまだ続くだろうけど、更なる記録を求めていきたい。



45cmが子供に見える・・



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