第57回

57. < ウィリー、トラクション限界どっち? >

前回、例に使ったバイクの数値ではトラクション限界の方が高かったです、いつもそうなんでしょうか? もうちょっと詳しく見てみましょう。

前々回からウィリー限界の加速度awを持ってきました、そして前回からトラクション限界の加速度atです、(1)と(2)です。
この二つを比べてみましょう
ウィリー限界がトラクション限界より先に来るとしましょう、ということはウィリー限界の加速度awがトラクション限界加速度atより低いということですね、(3)のようになります。
ここに(1)と(2)を代入して整理すると(4)になります、おー今回は簡単な式になりました、分かりやすいですね。
(4)を見るとμと重心高さ、重心から後輪までの水平距離の3つによる関数なのがわかります。

μの違う2つの場合で見てみましょう、前回も使ったドライ路面のμ=1とμ=0.5で比べてみましょう 0.5はウェットにしても低いと思いますが切りがいいので。

μが1の時 Lr<h (5) でウィリーが先に起きます。
絵で見てみましょう、Lrを重心高さとして赤●を置いてみました、写真の場合もそうですが大概のバイクでLrは重心高さhより短いですよね。
つまりは大概のバイクでウィリーの方が先に起こるということです。
SSバイクで晴れた舗装路で全開にしたらホイールスピンする心配よりウィリーでひっくり返る心配をしろっていうことです。
ドラッグレーサーみたいな低くて長いバイクでもウィリーバーが必要ですからグリップがよければスピンするより先にウィリーしちゃうんですね。

では次にμ=0.5 の時はどうでしょう、2xLr<h (6) でウィリーが先です、同じように2Lr の長さで青●を置きました、これは明らかにhより高いところに来ます。
重心高さがそんな高いバイクはまあないでしょうからほとんどのバイクでスピンが先に起きるでしょう。
雨の日に信号ダッシュしたら歩道の白線でホイールスピンでころりんみたいな感じですね。

リヤリフトもウィリーもタイヤのロックやスピンよりも先に起こるというのはとても意味のあることです、どんなにタイヤのグリップを上げてもリヤリフト限界やウィリー限界を上げることはできないということですから。
これは4輪にはないことでホイールベースが短くて重心の高い2輪ならではです。
どんなにタイヤが進化して60°も傾けてコーナーを速く回れるようになっても直線ブレーキングと加速は何も変わらないんですから。



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