第52回a

第52回b

第52回c

52. < 姿勢変化による荷重変化 >

シート a ブレーキング時に制動Gによる慣性力で荷重移動があることはこれまで説明してきました、今回はそれにプラスして姿勢による荷重の変化について説明します。

ブレーキングからターンインするときにフロントに荷重が掛かっていないと不安ですよね、フロントが滑っちゃいそうで。
ブレーキングでノーズダイブすると前のめりになることでより荷重がフロントに掛かってる気がしますよね、タイヤをぐっと押し付けてるような、フロントフォークのプロダイブジオメトリーはこの前のめりを作り出すためではないかと以前に書きました。
じゃあ前のめりでどれだけフロント荷重は増えるのよ、をチェックしようと思います。

ロガーデータが2つ見つかりました、1つはアドベンチャーバイクでもう一つはスーパーバイクです、前後サスペンションストロークが記録されています、どちらも限界ブレーキングですがアドベンチャーバイクはセミブロックタイヤで減速度が0.94G、スーパーバイクはスリックで1.3Gです、前回あたりをつけた減速度くらいですね。
ストロークはシートaの図にある通りです、フロントはフォークのスライド方向のストローク、リヤはホイールの上下ストロークに換算してあります。
これを使って姿勢変化と重心位置の変化を計算します。

計算の手順はシートaの下の図のようになります、簡単に説明するとサスストロークによる接地点の移動を座標から計算して、そのダイブ時の前後の接地点を結んだ線が地面の線になり、それを回転させて水平にすると車体の姿勢が割り出せます。
実際の計算手順をシートcに示しました、手書きのスキャンですいません清書するのは大変だったので。
本当はストローク後の前後のタイヤ外周円の接線を引かないといけませんがピッチ角が小さいので接地点を移動してその2点を結びました。



シートb
さてその結果です。

アドベンチャーバイクはサスペンションが柔らかいし重心位置も高いので姿勢変化も大きくなるのは当然ですがかなり大きく変化していますね 繰り返しますがこの変化量は姿勢による変化だけで減速Gによる荷重移動は入っていません、前のめりの姿勢にするとどれだけ重心が移動して荷重が変化するかです。
フロント荷重が約 200Nも増えてます、それにキャスター角が 5度も小さくなっています。

興味はやはりスーパーバイクですね。
ハードブレーキング時減速Gによる荷重移動にプラスして89Nがフロントに掛かっています、大きい? 小さい? かなり大きいと思います。
この変化はリヤに比べてフロントフォークのストローク量が大きいこと、フォークのストロークによってホイールが車体に近づいて重心が前寄りになることの影響が大きいです、つまりプロダイブによる効果が大きいということですね。

この計算はほぼ限界ブレーキング時についてですからコーナーに入って行こうっていうときにはブレーキも緩めています、コーナーに入って行くときに減速度が半分として40-50N のフロント荷重が前のめり姿勢のおかげで稼げることになります。
さあ50Nは大きい? 小さい? 50N荷重が違ったらライダーはよくわかると思います。

プロダイブジオメトリーは姿勢変化を大きくして前輪荷重を稼ぐためだとの仮説で説明してきましたがどうなんでしょう、キャスターが立つ、重心高が下がるっていうのも理由のひとつなんでしょうか?
2輪の旋回ついてはまだよく分かっていないのではっきりしたことは言えませんが少なくとも姿勢による荷重の変化ははっきりさせた言うことで。



シートc
ここまでくるとじゃあセットアップでフロントの突き出し変えた、リヤの車高変えた時に重量バランスやキャスターはどう変わるか気になりますよね。
ここでは例としてフロントの車高を5mm下げた時とリヤの車高を5mm上げた時を比べてみました、図がいまいちですいません、数字を見てもらったほうがいいと思います。
なんかフロント下げるのとリヤ上げるのは全然違うんだぞっていう人が結構いそうな気がして比べてみました。
重量配分の変化もキャスター角の変化もほぼ同じです、違うのは重心高ですね、まあ当然ですがフロント下げれば重心は下がるし、リヤ上げれば重心は上がります。バイクの姿勢としては同じですが上下方向の位置が違うということになります。
重心高が5mm違ったらどうなんでしょう? そこそこ違うような気がしますね。 重心高はセットアップのツールなんでしょうか?



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