第45回

45. < セットアップ変更とアンチスクワット率の変化 >

バイクのアンチスクォートってどれくらいか前回で説明しました、 今回はどこをどういじるとどれくらい変わるかの話です。

バイクのアンチスクワットを変える手段は何種類かあります、アンチスクワット率はスイングアーム角度、チェーン角度、重心高、ホイールベースの関数ですからそれらのどれを変えてもアンチスクワット率は変化します。
でもアンチスクワットのためにホイールベースとか重心高変える人はあまりいないと思います、他の所にも影響が出てしまいますからね。
普通やるのはスイングアーム角を変えるために車高を変える事ではないでしょうか? まあこれをやることで車体全体が上下するので重心位置も変わってくるのですが。
あとはレース用などの一部のバイクにしかついてませんがスイングアームのピボット位置を上下できる機構があります、これなら重心は同じでスイングアーム角度のみ変えられます。
細かいですがコースによってスプロケットを変えてもチェーン角度が変わってきます。

ではこれらでアンチスクワット率がどれくらい変わるか計算してみました。

計算に使ったのはドカティ998です、座標を提供してもらったのが998だったので、写真は1198ですがきれいな998の側面の写真が見つからなかったので。

ベース仕様の各点の座標は図のようになります(右向きで計算したのをひっくり返したのでX軸の+-が逆です)。
座標からチェーンライン、スイングアームの直線を求め、その交点を算出します、そこからアンチスクワット角βを求めます。 重心とホイールベースから角度ωを求めます。 そこから出されたアンチスクワット率が 100.7% でした、やっぱり100%ぐらいですね。
チェーンラインは本来2つの円の接線を求めないといけないのですがチェーン角も小さいので各スプロケットセンターの真上で接することとしました。
計算自体は中学の数学でできますから自分のバイクの座標を測ってみて計算してみましょう。

まずベースに対し車高を5mm上げました。
チェーンとスイングアームの両方の角度が上向くので交点は上がりました、しかし重心も上がるのでωも大きくなります、その結果アンチスクワット率は103.0%でした、2.3%増加です。
どうなんでしょうか? 結構変わったのか、あんまり変わってないのか。 3%以下の変化ですからちょこっと変わったくらいかなと思えます。

次はスイングアームピボットで同じく5mm上げました。
チェーン角度が変わらないのにアームだけ上向きになりましたから交点がぐっと後ろ寄りになって結果アンチスクワット率は28.9°と大きくなりました。
重心位置とそれによるωは変化なくそれらによるアンチスクワット率は109.5%でした、8.8%増加です。
これはもう明確に違いますね、重心高さも変わりませんしアンチスクワット率だけを変えるにはとても有効と言えます。
だてにワークスのレース車両についてるわけではないのが分かりました。

次は確認ですがスプロケ変更です、ベースに対しリヤスプロケを2丁大きくしました。 コースによってこれくらいのスプロケ変化はありそうです。
チェーン角度が変わって交点がスイングアームピボットの時と同じで後ろにずれてβは大きくなります、アンチスクワット率の結果は102.4%でした、1.7%増加です。
車高よりさらに変化は小さいです、1丁あたり0.85%ですから普通そんなに大きくスプロケットを変えることはないでしょうからあまり気にしなくていいくらいかと思います。

アンチスクワット率って変えるとどう乗り味が変わるんでしょう? コーナー出口のスロットルを開けていったときの踏ん張り感とかでしょうか?
個人でできるのは車高変えることくらいでしょうが重心高もフロントキャスター角も変わるしどの辺がアンチスクワット率の変化によるものかよく分かりませんよね。
でもワークスバイクにアンチスクワット率だけを変えられるピボット位置可変がついているのをみると有効なツールなんだと思います。
それにピボット高さは大きくアンチスクワット率を変えることができるのもわかりました、自分のバイクについている人は試してみてください。



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