第88回

88. <周波数特性、1自由度、ダンパー付き>

周波数特性は続きます。 今回は前回に加えてダンパーが付きました。

前にも書きましたがダンパーは動きをゆっくりにして抑えるものですから共振周波数の大きい激しい動きを抑えるには効果大です。

図を見てください、山の頂点の高さ、つまり共振周波数でのマスの動きが減衰力を強くしていくと小さくなっています。 大きな動きは速い動きでもあるのでダンパーも大きな力で抵抗して車体の動きを止めにかかります、減衰力が強いほどそのピークの振幅を抑える効果も大きくなっています。 おかげで車体(マス)は共振でどこかへ飛んで行ってしまうことはなくなりました。

では高い周波数はどうでしょう? 図を見ると減衰力が高くなるとかえって振動が大きくなって悪くなってしまっています。 もともと車体は路面からの高い周波数の入力に反応できなくてあまり動いていませんでした、縦軸の値が1より小さいですから入力(路面の動き)より小さいです、だから何もしなくていいのですがここでダンパーが悪さをしているのです。
ダンパーも車体と路面の間を繋いでいますから車体と路面の相対変位の分だけダンパーも作動します、高周波では車体はあまり動いてないけれど路面は動いている、つまりダンパーもストロークしていて減衰力を発生します。 この時の減衰力が悪い方向に作用するのです、ダンパーは路面の動きに抵抗するように力を発生します、でもその反力は車体に伝わり減衰力そのものが車体を押したり引っ張ったりして車体の動きを大きくしてしまうのです。

ダンパーは車体の共振を止めるために取り付けたいので本当は空中の絶対的に動かない点と繋ぎたかったんです、これがスカイフック理論です。 でもそれは不可能なので車体と路面の間に取り付けたので弊害が出てしまうのです、車体が動いている時はいいですが車体は動かないで路面が動く時は余計なことをしちゃうのです。

こういうことですよ、車体が大きく動いているときにダンパーの減衰力は効果的、しかし車体が動いてなくて路面が動く時にはダンパーは邪魔。 そうなんですよ、ダンパーはいつもあった方がいいわけじゃないんですよ、車体が動く時はあった方がいいけど路面が動く時はない方がいいんです。
たとえば大きな路面のうねりとか駐車場の入口にあるスピードバンプとかを乗り越えた後(“後”っていうのがポイントね)の車体の収まりには減衰力があった方がいいですよね、すっと収まりますから、でもそのスピードバンプとか道路工事の跡の段差を乗り越すその時(“その時”っていうのがポイントね)の衝撃って減衰力があると「ビシッ」って車は跳ね上げられるし腰にきちゃいます。

ダンパーって例えてみれば集会の仲介役で誰かが大声を出し始めたら「まーまー」ってなだめて落ち着かせるんだけど、誰かが小声で反対意見を言ってるのを黙ってりゃいいのにわざわざ取り上げたりする人、てなとこでしょうか。

周波数特性グラフでそういうことが分かるという話でした。

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