第79回

79. <可変ヒステリシス>

ちょっとへんてこなダンパーデバイスです、あるダンパーメーカーはこれをデカップルドダンパーと呼んでいますがいまいちなネーミングだと思います。
要はヒステリシスを可変にしようというデバイスです。
ヒステリシスとはダンパーのレスポンスみたいなものですからレース用ダンパーでは悪者扱いで「うちのダンパーはヒスが少なくてレスポンスがいい」って言っていたダンパーメーカーたちがヒステリシスを付けてさらに可変にしようっていうんですからへんてこです。

減衰力のレスポンスがいいと乗り心地は悪くなります、実際ラリー(グラベル)などはヒステリシスが大きいほうが好まれると思います、でもだからって外部から調整できるようにしなくてもいいともいます。 組み立ての時に内部で調整ができるようにしておいてレース用とラリー用で使い分けるとかはありだと思います。

ヒステリシス調整の原理はいたって簡単で減衰力の圧力で体積の変わる物をダンパーの中に入れておけばいいのです。ヒステリシスの説明でもオイルの圧縮性をゴムまりに例えましたがそれと同じです。 ゴムまりの大きさや硬さを変えればヒステリシスが変わります、別の例では空気室を使ってその容積を変えて硬さを変えるというやり方もありますね。


今から30年以上も前にこの原理を使って乗用車に採用していたダンパーがあります、ショーワがアコードの一部に製造していた三次元ダンパーというものです。 ダンパーの底に真鍮のベローズがありこれが圧力で伸び縮みしてバンプのヒステリシスを大きくして乗り心地をよくするというものです。 減衰力が速度に加えて周波数に依存することになるので減衰力特性が3次元になる、だから3次元ダンパー、こっちのネーミングのほうが日本人には全然カッコ良いです。

そうそうヒステリシスが変わるので減衰力の周波数依存性が変わります、高周波の減衰力が出にくくなるのが高ヒステリシスです。 だから難しい周波数依存ダンパーを作るよりヒステリシスチューニングのほうが簡単でいいかもしれません。

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