第73回

73. <ヒステリシス (再)>

ヒステリシスの説明再挑戦です、ヒステリシスの説明は以前にもしましたがきっと理解してもらえた人は少ないと思います、減衰力の遅れというなじみのないことだし説明も解りにくかったからしょうがないと思うんですが大事なことなのでもう一度トライしてみようと思います。
実際ヒステリシスの理屈まで理解してる人は世の中にあまりいないと思いますから大丈夫です、まあダンパーのヒステリシスについて考えなきゃいけない人の数も知れてると思いますが。

でもそのわりに解っている風の人はたくさんいるので皆さんがそれらの人の言っていることの矛盾を突いてくれるようになってほしいのです。(解っている風の人は本気で解ろうとはしないと思うので)

ヒステリシスの主原因はオイルの圧縮性です。 オイルの圧縮性を置き換えるとダンパーの中のゴムまりあるいはスプリングになります。

この辺を説明します。

ダンパーがオイルをポンプ作用で送り出し、その流れをオリフィスで絞ってオイルの圧力が上がるのが減衰力です。 ピストンがオイルを押してオリフィスを通り抜けさせようとしたときに圧力によりオイルの体積が変化して押した量とオリフィスを通るオイルの量に違いが出てしまう、これがヒステリシスの正体です。

では順を追って説明します、話はダンパーダイノの下死点から始まります。 オイルの圧縮性をスプリングに置き換えます、図のダンパー下部にあるスプリングがそれです、ですのでこの場合に限りオイルは非圧縮性です。 バンプ工程の始め、ピーク速度に達するまでは速度も圧力も上昇していきます、これを加速区間としましょう。 圧力は上がっていきますがその圧力によりスプリングが押されスプリング室にオイルが流れ込みます。 スプリング室に流れ込んだ分オリフィスを流れるオイルの量が減ります、圧力損失は流量の2乗に比例ですから流量が減ればその分圧力も低くなります これが加速区間で起きることです、発生する減衰力がオイル流量減少分低くなります。

ではピーク速度を過ぎて上死点までは速度も圧力も下がっていきます、これを減速区間とします。 圧力は下がっていきます、圧力が下がった分スプリングが戻ってきてオイルも戻ってきます。 スプリング室からオイルが戻ってくる分オリフィスに流れるオイル量は多くなります、流量が増えたので圧力もその分高くなります。 減速区間ではオイル流量増加分減衰力が高くなります。

真ん中の力-速度グラフに加速区間、減速区間の減衰力をプロットしました。点線の正規の減衰力に対し加速区間では低く、減速区間では高くプロットしました。 ほーらヒステリシスのナメクジ形状が出来上がりです。

低めで圧力が上昇して高めで下降する、ループは反時計回りです、前回説明したように反時計回りは位相遅れです。 ヒステリシスは減衰力が遅れて発生しているということです。 速度が上がっているのに減衰力が追いついてこない、速度が下がってるのに減衰力が下がってこない、減衰力が遅れている故です。


どうでしょう?ヒステリシスは了解されたでしょうか?

ちなみに圧力の変化の大きいところではスプリングの動きも大きくなるのでヒステリシスも大きくなります、図のバンプ側(上側)の低速は立ち上がった減衰力特性ですが、ここではヒステリシスも大きくなります。

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