第70回

70. <ニードルの改良>

前回一般的なテーパーのニードルではクリックごとの減衰力の変化が同じではないという事を説明しました、今回はその改良についてです。

ニードルの回転量、あるいはクリック数に対する開口面積が比例ではだめなことは説明しました。どうだめかというと全閉から始めの数クリックの変化が大きすぎで、その後の変化がだんだん小さくなってしまうということでした。 ですから感覚的に始めはクリックごとの開口面積の増え方が小さくてだんだん大きくなっていけばいいのは分かります。

では数字で追っていきましょう。
クリック1の開口面積をAとします、またその時の減衰力をFとします。

1クリックで最初の減衰力の10%づつ減衰力が変わるようにしましょう。 減衰力はオリフィス面積の2乗に反比例ですから 式は
F=K x 1/(A)^2 –(1) (オリフィス以外の変数は一定としてKとします)

次に減衰力が10%下がって90%になったとき、オリフィス面積をBとすると式は
0.9F=K x 1/(B)^2 --(2)

(1)のFを(2)のをFに代入すると
0.9 x (K x 1/(A)^2) =K x 1/(B)^2

両辺に同じKがありますから消して、整理すると
(B/A)^2 = 1/ 0.9

B/A= 1/ sqr(0.9) = 1.05 (sqr はルートの意味)

1クリックのオリフィス面積BはAに対して減衰力(%)のルートの逆数となることが分かります。
これを1クリック10%づつクリック10まで計算すると下のようになります。
前のクリックからの面積の変化Δを見ると始め小さくてだんだん変化分が大きくなっていくのが分かります。

減衰力 B/A
クリック1 100 % 1.00
クリック2 90 % 1.05 Δ=0.05
クリック3 80 % 1.11 Δ=0.11
クリック4 70 % 1.19 Δ=0.19
クリック5 60 % 1.29 Δ=0.29
クリック6 50 % 1.41 Δ=0.41
クリック7 40 % 1.58 Δ=0.58
クリック8 30 % 1.82 Δ=0.82
クリック9 20 % 2.23 Δ=1.23
クリック10 10 % 3.16 Δ=2.16

この面積変化をプロットしたのが真ん中のグラフです、すごく立ち上がった線になっています。

このような開口面積になるようにニードルの角度を変化させていくとニードルはとんがった先端から丸いボールペンみたいな先端の形状になります。 こんなニードルなら1クリックづつ同じように減衰力が変わるはずです。 計算すると右下の図のようになります、この方が使いやすそうでしょ。

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