第67回

67. <温度上昇による影響、オイル膨張、ガス圧変化>

今回は温度上昇による影響を見てみましょう。

ダンパーの温度が上がると何が起きるでしょう? まず思いつくのはガスの圧力が上がることでしょう。 その通りです、でもそれだけじゃありません、オイルは結構膨張しやすい液体です。

話はそれますがオイルは水に比べて熱による体積変化も圧力による体積変化も大きいしあまりいいとこがありません、オイルの利点は潤滑性と防錆なので水にそれがあればいろいろと楽なのにと思います。

では温度上昇により圧力、体積はどう変わるか調べていきます。

ダンパーの温度は何度くらいまで上がるでしょうか? レーシングカーの場合ダンパーの温度は自分の発熱より周りの熱による加熱により温度が上昇します。ギヤボックスの上にダンパーが載っていたりラジエターのすぐ後ろにダンパーがあったりです、ひどいときはターボのタービンがそばにあったりします。この場合100度以上に上がってしまうかもしれません。 回りに熱源がなくて風通しがよければ40度くらいなもんでしょう。

オフロードの場合は自分の発熱で最高温度が決まってきます、ダカールラリーなどでは160度くらいにはなったと思います。1輪当たり2本も3本もダンパーをつけるのは1本あたりの減衰力を下げてなおかつオイル量を増やして温度上昇を防ぐためです。

ダンパーが140度を超えるとシャフトの表面のオイルがが煙として蒸発していきます、なので高温が続くとオイルは漏れてないのにオイル量が減ってしまいます。粘度指数の高いオイルはしゃぶしゃぶのオイルに粘度指数向上剤がたっぷりなのでしゃぶしゃぶのベースオイルが蒸発していきます。性能がいいということはデメリットもあるのを理解して使わないといけません。

例に使った数値は図の通りです、例によってありそうな数字を使いました。 オイルの膨張は(膨張係数) x (体積) x (温度変化) で計算します。 (1) 図に計算式を示しました、この例では250cm3のオイルが80度の温度上昇で15cm3膨張しました。

オイルの膨張はガスを圧縮します、ガスは温度上昇で圧力が上がり、更にオイルに圧縮されて圧力が上がるのです。

この計算には高校で習ったボイル、シャルルの法則を使います。 図に式を示しました、見たことありますよね。 式の左側にはじめの状態、右側に温度の上がった状態の数値を入れていきます。温度の上がった状態の圧力 P2 が不明ですね。

P2を求めると32.4barです。 (3) もとが20barですからその差12.4barとかなり上がりましたね。内訳は5.5barがオイルに圧縮された分、6.9barが温度上昇分 オイルによる圧力上昇分が半分近いですから温度によるガス圧の変化にオイル膨張を考慮しないとてんであってないこともありえますから注意が必要ですね。

次回は圧力が上がってどうなるのか調べます。

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