第45回

45. <ヒステリシス、遅れ>

ヒステリシスの遅れについて補足です。

ヒステリシスがあると減衰力は遅れてやってくるだけで大きさは遅れがない場合と変わりません。
左の図を見てください、減衰力試験機で測定したときの変位、速度、減衰力の時間波形です。減衰力は速度に比例ですから遅れがなければ減衰力の山谷は速度と同じ位置関係です(位相が同じというとカッコよろしい、英語で位相はPhase ね)
遅れるというのは波形がそっくり遅れる方向へずれることで大きさは変わりません、サイン波形が遅れることを位相遅れといいます、英語でPhase lag です。

では右の図のようにシャフトが一定の速度で大きく動く時はどうでしょう? 速度は図のように伸び、縮み共に同じ速度です、こういう階段のような入力をステップ入力といいます、その時の減衰力の出方をステップ応答と呼びます。 減衰力は突然シャフトが動き出しても応答できずに遅れをもって発生します、正規の減衰力に追いついたら後は一定です。突然シャフトの方向が変わったり、止まったりしたときも同様です。

一つ付け加えると、ステップ応答での遅れ時間は一定なので周波数が高くなると一周期に対する遅れ時間の比率が大きくなっていく、つまり周波数の上昇に伴ってヒステリシスは大きくなる、速度-力グラフのナメクジは太くなっていくのです。ナメクジの頭と尻尾の先は変わりません。
ヒステリシスは一定でなく周波数が高くなると大きくなるのです(周波数依存性があるとかいうとえらそうです)。

さらに付け加えるとヒステリシスは減衰力の変化の大きいときに大きくなります、減衰力の変化、つまり圧力の変化がダンパーの中のゴムボールを潰したり膨らましたりするのでヒステリシスが大きくなるのです。
一般に減衰力特性は低速で立ち上がってその後は傾斜のゆるい形になることが多いので低速でヒステリシスが大きく高速で小さくなります、それでナメクジみたいな形になるというわけです。

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