第43回

43. <圧縮性>

今回はヒステリシスを説明する前段階の回です。

ダンパーは内部の圧力が上がったり下がったりします。 じゃぁどれくらい上がるのかというといろいろです。 ピストン径36mm、シャフト径14mmのモノチューブダンパーで1000N (約100キロ)の減衰力を出そうとしたら1160kPa(約11.6気圧)の圧力が必要です、まあ油圧としてはそんな高い圧力ではありません。
ところがシャフトのポンプ作用で減衰力を発生するダンパー(減衰力バルブがリザーバーやダンパーの底に付いているタイプ)ではシャフト面積が小さいので圧力はぐんと上がり上記の条件では6500kPa(約65気圧)にもなってしまいます。

圧力が上がるといろんな物が膨らんだり縮んだりします。 ちょっと意外かもしれませんがダンパーのパーツで圧力により一番膨らんだり縮んだりするのはオイルです。皆さんオイルは作動油などに使われて非圧縮性の液体と思っているかもしれませんがオイルは結構柔らかいのです。
圧縮性を表すのに体積弾性係数(Bulk modulus)を使います、単位はPaです。これは単位体積変化に必要な圧力変化です、例えば体積を1%変化させるのに1kPa必要だったら1/0.01で100kPaです。 オイルの体積弾性係数は1.5x10^9 (Pa)です、対して水は2.15x10^9 ですからオイルは水の2倍弱柔らかいのです。

温度が上がるとオイルは更に柔らかくなります、実験では20℃から100℃へ上昇すると体積弾性係数が40%減少という結果があります。

膨らんだり縮んだりすると何が起こるのでしょう?
ブレーキでもゴムホースをステンレスメッシュ巻きホースに換えるとかちっとしたフィーリングになります、圧力によるホースのふくらみが抑えられてペダルのストロークが減るからです。
ダンパーではどういうことが起きるでしょうか?という話は次回に。

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