第42回

42. <フリクション>

ダンパーの大敵フリクションについてです。

図は私が昔々レース用ピギーバックダンパーのフリクションの内訳を調査した時の結果です。もうずいぶん昔のデータですがおおよその参考くらいにはなると思います。

フリクションの内訳で1番はピストンリングです、ちょっと大きすぎな気もしますが。
ピストンリングからのオイルのリークは減衰力の不安定化に直結するのでリークゼロにしたいところです、そうするとリングの合い口なし、寸法もピチピチになりフリクションも高くなってしまいます、ピストンは径も大きいから摺動長さが長いのも一因です。 合い口ありでそこからのリークを下げるべく形状をステップにしたりOリングでバックアップしたりしたピストンリングなら図の結果よりフリクションが低いかもしれません。 量産ダンパーではリークゼロでフリクションを下げるようにリップ形状のピストンリングも実用化されていますがレース界ではまだです。

2番目はシールです。オイルを漏らさないためにどうしてもフリクションは高くなります。
シャフトは細いほどフリクションは低くなるのでストラットのように太いシャフトは絶対的に不利です。 リップ形状のゴムシールはガス圧力に比例してフリクションが上がりますが、レース用ダンパーで使われるステップシールはフリクションに対する圧力の影響がかなり小さいです、つまり圧力を上げていってもあまりフリクションが変化しません、ですからガス圧力の高いダンパーはステップシールの使用が有利です。 逆に圧力なしでのステップシールのフリクションは高いので加圧もしないのにステップシールを使ってもお金の無駄です。

3番のダストシールはレース用に割り切って取ってしまえばその分低減できます、その代わりまめにメンテナンスが必要です。

5番のフリーピストンのフリクションはちょっと面白いです。
小さいシャフト径とそれに比べて大きいフリーピストンの径の比率からフリーピストンはちょっとしか動きません。そこでフリーピストンに太いOリングを緩めの溝にはめて使うとダンパーの小ストローク時はフリーピストンが振動する程度しか動かないのでOリングが溝の中で転がるだけで滑るまでいかずこの部分でフリクションが下がるのです。サスペンションの小入力時のフリクションは乗り心地にとても大事なのでここでフリクションが下がると乗り心地がよくなります。

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