第39回

39. <実現可能な減衰力特性>

2wayや4wayのアジャスターのたくさん付いたダンパーならどんな減衰力でも出せそうな気がしますが実はそうではありません、実現可能な減衰力特性についてです。

減衰力を作り出しているのはオリフィスと減衰力バルブです、オリフィスはバナナ形状の2乗特性、減衰力バルブは通常プレロードを掛けて使うのでほぼまっすぐです。
この2つを組み合わせて減衰力を出しているので出来ることにはおのずと限界があります。

例えば左の図のようなまっすぐなリヤのリバウンドにありそうなリニア特性が欲しい時にアジャスターをぐるぐる回して一番近いかなーとなるのが青の線のような減衰力でしょう。 低速はバナナ形状ですからまっすぐにはなりません、始まりをあわせると後が高過ぎてしまうし、ちょっと先であわせると始まりが全然低くなってしまいます。 目標より低いとこから始まって高いとこで高速へつなぐようにkneeをもってこないといけません。 高速側のアジャスターは傾きが変わらずまっすぐな線が平行移動するだけですから傾きを合わせることは出来ません、うまいこと交差するようにするのが関の山です。
出来上がるのは直線に対しジグザグに交差する線です。いつも高いか低いかでぴったりなのは交差する点だけです。 ほんとはダンパーを開けて減衰力バルブのばねを固くして傾きを合わせて高速アジャスターでプレロードを全部抜いて低速ジャスターはちょっとだけ開くとまっすぐになるのですがダンパー屋さんに送り返さないといけないので時間もお金も掛かってしまいます、ダンパー屋さんもうまいばねを持っているとは限りませんしやる気がどれだけあるかもわかりません。
右の図のようなフロントのバンプ側に使われそうな低速を立ち上げたダイグレッシブ特性はどうでしょう? 低速を立ち上げたくてもオリフィスは2乗特性で上反りですから下反りにはなりません、高速も傾きが合いません、出来るのは青の線のようでしょう。
結局低速は目標より全然低くしか出来ませんでした。

4wayとはいえ出来るのは“大体あってる“減衰力特性です。そもそも高速の傾きをは合わせられないですから。 よく同じ減衰力なのに今使ってるA社のダンパーよりB社のダンパーの方が良かったなんてことがありますが、これの理由のほとんどは”大体合ってる“の程度が違うからだと思います。まあヒステリシスとかフリクションとかの基本性能の影響もありますが今時そんなに違わないでしょ。それよりA社のダンパーは実際は目標からのずれ、ジグザグ具合、が大きく”大体は合ってるけどイマイチ合ってない“だったからB社の方が良かったみたいなことかもしれません。

イマイチ程度しか合せられなかったけどかえってそれがよかったなんてこともありがちです、もともとの目標減衰力が車に対して正解かどうかもあやしいのが普通でしょうから。

各社、各ダンパーシリーズには出せる減衰力の傾向があります、A社のダンパーは低速の減衰力が出しやすく逆に下げにくい、B社のダンパーは低速が出ないけど高速は高く出来てリニア特性にしやすい、などです。バルブの仕組み、形状だったり、オイルの流路のサイズだったり、ばねの設定だったりが影響してある傾向を生み出しているのです。

だから1社に思い入れしないでA社のダンパーをフロントに、B社のダンパーをリヤに付けるっていうのも一つの考え方でしょう。

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