第37回

37. <減衰力グラフの見方>

減衰力グラフの力-変位、力-速度グラフの見方を説明しておきます。

力-変位グラフ
たまご形グラフですがたまごの形は減衰力特性により変化します、もし減衰力特性がリニアで速度に対しまっすぐな特性だったらたまごの形はまん丸になります。もし極端なダイグレッシブで低速がすごい勢いで立ち上がってその後がまっ平な特性だったらたまごは四角くなります。たまごの形で大体の減衰力特性が分ります。
まずはたまご形状がきれいに出ているかです、キャビテーションしたり減衰力の遅れが大きいとたまご形状が洋ナシみたいにゆがんだりします。
このグラフで注目するのは変位が上死点、下死点あたり(右端、左端あたり)ですバンプからリバウンド、リバウンドからバンプに切り替わるときに段差が出来ていないか、スパイクが出ていないかとかきれいに減衰力が切り替わっているかをチェックします。 あとたまご形状が歪んでないか左右対称か、上死点、下死点で減衰力がゼロになっているかなどもチェックします。
力-速度グラフ
このグラフは主にヒステリシスの大きさを評価します、つまりはナメクジの太さを評価するということです。
ヒステリシス(減衰力の発生遅れ)が全くなければナメクジの胴体は一本の線になりますが現実にはそんなことは起きないのである太さを持ちます。
胴体の太さは減衰力の発生遅れと比例するので出来るだけ細いナメクジが好ましいのです。

なぜヒステリシスは小さいほうがいいのか?
一番大きな理由は減衰力の逆転が起きてしまうからです、力-速度グラフのXYの線で仕切られた左上と右下のエリアを見てください(第2 と第4象限というと学がありそうに聞こえますが間違うと恥をかきます、右上から左回りですからね)。
右下の部分ですが速度はバンプですが減衰力はまだ切り替われてなくてゼロより下(リバウンドの減衰力)です、つまりダンパーはもう縮み始めているのにまだダンパーはまだリバウンドの減衰力を発生しているのです。どういうことかというとダンパーが縮んでいるときに減衰力はさらに縮ませようとする力を発生しているのです、リバウンド力は伸びるのに抵抗する力ですから縮ませようとする力です。
これではダンパーじゃありません、振動増幅装置です。そうなのです減衰力は第2、第4象限に入ってはいけないのです。 現実的には全く入らないのは不可能なので出来るだけ小さくしたいのです、だからヒステリシスは小さいほど良いのです。 ヒステリシスが小さいと収まりのいい締まった乗り心地になります、逆に悪路の乗り心地は悪くなります、ラリーのグラベル仕様などではある程度ヒステリシスがあったほうがいいかもしれません、実際そうしたほうが評価はよかったようです。

ちょっと難しくなってしまいますが、ヒステリシスは周波数依存性がありますから図のヒステリシスを持つダンパーを同じ速度でもストロークを半分、回転数(周波数)を2倍にして測ったらもっとヒステリシスは大きくなります。操安(操縦安定性)の周波数は低く、乗り心地の周波数は高いですからうまいことヒステリシスを設定すれば操安と乗り心地が両立できるでしょう。
ヒステリシスは本来ナメクジの胴体の太さではなく減衰力の速度に対する位相遅れで表したほうが正解だと思います。でも減衰力は非線形なので速度によっても位相遅れも変わるしそれをどう表現するか難しいところです。

ヒステリシスは表現方法の決まりがないし、その発生原因が分ってない人がたくさんいるので「ヒスは...」と難しい言葉を並べてるけど何言ってるかさっぱり分らないなんて場面に遭遇しがちです、そんな時は聞き流すようにしましょう。

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